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サプライズヒットが多かった2018年の映画興行。2019年はディズニーがかつてない強さを発揮!?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
2019年、ディズニー作品の勢いをつける『メリー・ポピンズ リターンズ』(写真:Splash/アフロ)

カメラを止めるな!』、『ボヘミアン・ラプソディ』を筆頭に、いくつものサプライズヒットが生まれた2018年の映画興行だが、来たる2019年は、おそらく「予想どおり」のメガヒット作が量産される年になるのではないか。邦画では『君の名は。』の新海誠監督の新作『天気の子』が夏に公開され、大きな話題を集めるだろう。そして洋画に目を向けると、ディズニーの勢いが空前のレベルになりそうである。

ここ数年、洋画のメジャー配給会社ではディズニーが盤石のヒット作品を送り続けてきた。2017年は『美女と野獣』が124億円で年間トップとなり、2016年は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』と『ズートピア』が年間の2位と4位。2015年は『ベイマックス』が2位、2014年は『アナと雪の女王』が254.8億円でダントツの1位……といった具合。そして2018年も『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』が75億円で現在4位だが、『ボヘミアン・ラプソディ』に抜かれて年間5位となりそう。他には、安定的な成績を残すディズニー/ピクサー作品の『リメンバー・ミー』が49億円、『インクレディブル・ファミリー』が48億円と決して悪くない数字を残しているものの、残念な結果に終わった作品も目立った。

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は「スター・ウォーズ」のスピンオフで、人気キャラクターが主人公なのに、20億円で年間24位あたりに落ち着く。前回のスピンオフ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が46.3億円だったので、明らかに物足りない結果だ。11月に公開された『くるみ割り人形と秘密の王国』は大きな話題にならず、作品への評価も芳しくなかった。『ブラックパンサー』、『アントマン&ワスプ』も健闘するも、マーベル作品の日本での難しさを払拭できない結果になっている。公開本数を「当たる」作品に絞るのが、ここ数年のディズニーのポリシーだが、2018年は少なくとも「当たり年」ではなかったと言える。

ヒット作の完結にお祭り騒ぎ。あの続編も!

しかし、その反動というか、2019年のディズニーはメガヒット続出が確実なのである。

マーベル初の女性が主人公となる『キャプテン・マーベル』は2019年の大穴的作品。3月15日公開。(C) Marvel Studios 2018
マーベル初の女性が主人公となる『キャプテン・マーベル』は2019年の大穴的作品。3月15日公開。(C) Marvel Studios 2018

年末公開の『スター・ウォーズ/エピソード9(仮題)』はシリーズ新3部作の完結編で、お祭り的な興行になるのは間違いない。完結という意味では、『アベンジャーズ/エンドゲーム』もGWの目玉になる。前述のとおりマーベルの個別作品はともかく、「アベンジャーズ」は前作も日本で37億円と好成績。マーベル・シネマティック・ユニバースはまだ続くが、「アベンジャーズ」としては一旦の区切りをつける新作なので、盛り上がりも過去最高だろう。さらにディズニー/ピクサー作品で最大のヒットが期待できるシリーズ最新作『トイ・ストーリー4』が夏に控える。2010年の前作が108億円という驚異の数字を叩き出しているので、それを超える可能性も秘めているのだ。そして冬には『アナと雪の女王』の続編も待機しており、ディズニー、興行的に失敗の余地がない!

人気アニメ実写化+ミュージカル=最強伝説

もうひとつ、ディズニー大当たりの作品群が、2019年には並ぶ。ディズニー人気アニメの実写化作品だ。2018年の『プーと大人になった僕』の成績はそこそこ(24億円)だったが、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年/118億円)、『シンデレラ』(2015年/57.3億円)、『美女と野獣』(2017年/124億円)と、大ヒット確実のコンテンツである。それが2019年には『ダンボ』、『アラジン』、『ライオン・キング』と一気に3本も公開されるのだ! 『ダンボ』は『アリス〜』と同じ鬼才ティム・バートンが監督だし、『アラジン』と『ライオン・キング』はアニメの後に舞台ミュージカル化されて人気をキープ。『美女と野獣』と同じ経路をたどっている。ミュージカル/音楽映画が当たりやすいという、近年の日本の傾向もあるので、以上3作は、意外にも年間トップ3あたりを狙えるポテンシャルもあるのだ。

象キャラがどう実写になるか興味津々の『ダンボ』3月29日公開 (C)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
象キャラがどう実写になるか興味津々の『ダンボ』3月29日公開 (C)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

ここに『メリー・ポピンズ リターンズ』を加えてもいいだろう。1964年の前作『メリー・ポピンズ』はアニメではないものの(一部アニメ)、キャラクターがディズニーのテーマパークでも人気で、「ディズニーの遺産の再生」である。しかも王道のミュージカルであり、2月1日公開でディズニー・イヤーの勢いを点火する役割も託されている。『メリー・ポピンズ リターンズ』はゴールデングローブ賞にノミネートされ、アカデミー賞にも候補入りは確実。クオリティも万全で勝負に出る。

こうして書き連ねると、日本の映画人口の最大キャパシティを超えるのではないかと思えるほど、2019年のディズニー作品は充実度が半端でなはい。しかし冒頭に記したとおり、2018年と同じくサプライズヒットが生まれることも十分考えられ、ディズニーの「一強」を突き崩す、他社作品の大化けに期待したくなるのである。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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