Yahoo!ニュース

パワーの源は「瞑想と祈り」!? 『ブラックパンサー』主演チャドウィック・ボーズマン インタビュー

斉藤博昭映画ジャーナリスト
マーベルの新作でブラックパンサー役を演じたチャドウィック・ボーズマン(写真:Shutterstock/アフロ)

マーベル・シネマティック・ユニバースの最新作『ブラックパンサー』の勢いがすさまじい。2月16日に北米公開され、週末3日間のオープニング興収が歴代5位を記録。その上の4作は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』『ジュラシック・ワールド』『アベンジャーズ』なので、ヒットのレベルがわかるだろう。

アメリカの映画レビューサイト、ロッテントマトでは批評家97%、観客78%(2/24現在)と、評判も上々。とはいえ、日本でどこまでヒットするかは未知数な作品ではある。アクション映画として文句ナシに楽しめ、他のマーベル作品とのつながりをそれほど意識しなくてもいい作りなので、ぜひとも多くの人に観てもらいたい……ということで、ブラックパンサー役、チャドウィック・ボーズマンに行ったインタビューをお届けしたい。

すでに2016年公開の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にブラックパンサー役で出演していたチャドウィック。トレードマークのスーツも着慣れたか尋ねると、彼は笑いながら答えた。

「ちょっぴり減量したから、着たり脱いだりする時間は短縮できたと思う。相変わらずピチピチ感はあるし、やっぱり着てると暑くてたまらないよ。でもジェームス・ブラウン役に比べれば、体力的にはラクだったかな」

チャドウィックは、かつて『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』で、あのカリスマミュージシャンになりきった経験がある。それに比べれば、ブラックパンサー役は独自の動きで自由に演じられたようだ。とはいえ、アクションのための準備は完璧に積んだというチャドウィック。そのトレーニング内容を聞くと、信じられない数の項目が口をついて出てきた。

「世界中の格闘技、マーシャルアーツをトレーニングした感じ(笑)。まずフィリピンの武術であるカリ。ブラックパンサーの爪の攻撃は、カリでの短剣の使い方が参考になった。ネコのように地を這う動きには、セネガルのレスリング、空中でのアクションのためには、ブラジルのカポエイラ。そして直立での戦いには、合気道柔道テコンドー、そしてタイのムエタイなんかを訓練したんだ」

これはもう「技のデパート」と呼んでもいい役作り。チャドウィックの熱意には恐れ入る。マスクを被って顔が見えないシーンも、どれくらいアクションしているのかを聞くと……。

「もちろん全部、と言いたいところだけど、高速で走る車にしがみついたりするのは、さすがにスタントマンに任せた。まだ死にたくないからね(笑)。保険会社との契約を守るためにも、いろいろ“やっちゃいけないリスト”があるんだ」

と正直に明かす。

韓国のプサンでロケを行ったカーチェイス。ブラックパンサーの肉体が信じられない動きをみせる (C) Marvel Studios 2017
韓国のプサンでロケを行ったカーチェイス。ブラックパンサーの肉体が信じられない動きをみせる (C) Marvel Studios 2017

ブラックパンサーの素顔は、アフリカの架空の国「ワカンダ」の国王、ティ・チャラである。国王が亡くなると、次の王がブラックパンサーになるという、マーベルヒーローにしては異色の世襲制。王族の血を引くティ・チャラという設定で、「気高さ」を意識して演じたのか聞いてみた。

「王族という意識はあったが、そこにこだわり過ぎないようにした。なぜなら王族も一人の人間なわけで、逆に貧しい地位にいても高貴な魂をもった人間もいるからね。僕にとって国の指導者とは、人々の代弁者となりうる人間のこと。あくまで普通の男が立派な言動をするという点を意識して演じたよ」

なかなか優等生なコメントが返ってくる。では、ブラックパンサーがハートのハーブをエネルギー源とするように、チャドウィックの人生のエネルギー源は何なのだろうか。

「毎朝、目覚めると祈りの言葉を口にして、しばらく瞑想する。僕のエネルギーは神様が授けてくれるからだ。エネルギー源は“モノ”じゃないよ」

幼い頃から教会の合唱団に属するなど、敬虔なクリスチャンであるチャドウィック。その信心深さも、国王ティ・チャラの気高い雰囲気を作った要因かもしれない。こうして今、世界中から注目されるマーベルヒーローの一員となったことは、素直に楽しんでいるというチャドウィック。

「ブラックパンサーを演じてから、街を歩いていてもけっこう気づかれるようになったかな(笑)。友人たちも、僕と一緒にいるとまわりから騒がれるから、喜んでいる感じだね」

最後に、4月に公開される『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』におけるブラックパンサーの役割を聞いてみた。

「あぁ、それだけは絶対に言えない。何か勝手にしゃべったら、プロデューサーのケヴィン・ファイギに殺されちゃうよ(笑)!」

基本はとことん誠実で、要所では茶目っ気たっぷりにインタビューに答える姿勢からは、その人柄の良さが伝わってくる。『ブラックパンサー』でも、チャドウィックのカリスマ性と誠実さが随所に感じられるはずだ。

『ブラックパンサー』

3月1日(木)、全国ロードショー

配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

斉藤博昭の最近の記事