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【2018映画ヒット予想】相変わらずシリーズ作品強し。そこに割り込む新規の注目作は?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『リメンバー・ミー』

『美女と野獣』のトップで終えた2017年、日本国内の映画興行だが、では2018年のランクはどうなるのか。そのラインナップから上位が確実視される作品は、以下のとおりである(各数字は億円未満を省略)。

まず洋画では

スター・ウォーズ/最後のジェダイ

→現在、順調にヒット中。前作が116億円なので90〜100億円あたりか。

ジュラシック・ワールド 炎の王国

→前作が95億円なので80億円あたり。

ミッション:インポッシブル6(仮題)』

→前3作が51億円、53億円、51億円と安定。50億円が目標。

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

→同じスピンオフの『ローグ・ワン』が46億円なので50〜60億円か。

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

→過去2作が36億円、32億円なので、40億円が目標。

そして邦画では

名探偵コナン ゼロの執行人

→前3作が44億円、63億円、68億円と上昇。70億円も射程。

映画ドラえもん のび太の宝島

→こちらも前3作が39億円、41億円、44億円とアップ。45億円あたりか。

と、シリーズ系ばかりが目につく。年末公開の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は2019年の対象になるが、やはり続編。その他にも『パシフィック・リム:アップライジング』。『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー・アゲイン』、『デッドプール2』、『パディントン2』、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、『銀魂パート2(仮題)』など、大ヒット期待作は続編ラッシュ。『オーシャンズ8』のようなシリーズのスピンオフ、『トゥームレイダー ファースト・ミッション』といったリブート作品も含め、今に始まったことではないが、マンネリ感は否めない状況だ。

単純にランク予想すると、

1)スター・ウォーズ/最後のジェダイ

2)ジュラシック・ワールド

3)名探偵コナン

4)ハン・ソロ

5)ミッション:インポッシブル

6)ドラえもん

7)アベンジャーズ

しかし、2016年の『君の名は。』や『シン・ゴジラ』、2014年の『アナと雪の女王』のように、続編やシリーズではなく(ゴジラもシリーズの革命作と考えて)新たな作品として特大ブームを起こす作品に期待したい。

その最先鋒になりそうな作品には、どんなものがあるのか。

『リメンバー・ミー』

(3/16公開)

ディズニー/ピクサーの新作は、このところシリーズもの以外は大ヒットにつながっていない。近年の興収をみると、『カーズ クロスロード』18億円、『ファインディング・ドリー』68億円、『アーロと少年』17億円、『インサイド・ヘッド』40億円、『モンスターズ・ユニバーシティ』89億円、『メリダとおそろしの森』9億円……と、明らかに波がある。シリーズ以外では『インサイド・ヘッド』が健闘しているのみ。

しかしこの『リメンバー・ミー』は久々の大ヒットのポテンシャルを秘めている。舞台はメキシコだが、「死者の国」という日本人でも入り込みやすい設定で、目もくらむような映像美、家族の絆というテーマが完璧に融合しているからだ。監督は『トイ・ストーリー3』のリー・アンクリッチなので演出も巧妙。ラストは、ほぼ全観客が涙するのではないか。名曲もちりばめられ、ミュージカル映画としても楽しめる。そして何よりの強みは、『アナと雪の女王』の新作短編が併映されるところ。同じくアナ雪の短編がついてきた『シンデレラ』も57億円を記録した。大ヒットの予感がする。

予想:60〜70億円

『レディ・プレイヤー1』

(4/20公開)

スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作。とはいえ、スピルバーグ作品だからといって近年はヒットするとは限らない。『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』10億円、『戦火の馬』7億円、『リンカーン』10億円、『ブリッジ・オブ・スカイ』7億円、『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』4億円……と大ヒット作が生まれていないからだ。

しかしこの新作は、日本でも大きな話題を集めそうである。近未来に描くアクションエンタテインメントで、主人公たちがVRで仮想現実の世界を疑似体験するストーリーなのだが、そこに出てくるキャラクターやアイテムがものすごいことになっているのだ。1980年代に流行した映画やゲーム、アニメからの引用で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンや、アイアン・ジャイアントなどなど数えきれないほど。さらに日本ネタも多数で、「AKIRA」の金田バイクや、あのガンダムまでも登場。まだ発表できないが、あのキャラも、あのアイテムも

マニア心をくすぐる世界が広がっており、その盛り上がり次第では日本でも大ヒットにつながるかもしれない。一方で、マニア受けで終わってしまう可能性もあり、2018年の大きな「賭け」となりそうだ。

予想:20〜50億円(幅広い)

『未来のミライ』

(7/20公開)

『君の名は。』のように、日本の観客は大ブームを起こす新作アニメを待ち望んでいる。その期待に今年、応えるのが細田守監督の新作。細田監督の過去の興収は、新しい順に『バケモノの子』58億円、『おおかみこどもの雨と雪』42億円、サマーウォーズ』16億円と、どんどん上昇している。『サマーウォーズ』は公開された後、何年もかけてファンを増やし続けた。この流れを考えると、爆発的ヒットの予感もある。

物語も、4歳の男の子と、未来から来たという妹が主人公ということで、時空を超えた家族愛が描かれそうで、多くの世代を引き込む可能性が大。もろ夏休みを想定した7/20という公開日からも、映画会社の高い期待が感じられ、強力な宣伝が行われるのではないか。

予想:60〜80億円

『劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-(仮題)』

(7/27公開)

2017年は日本の実写映画が不振だった。その鬱憤を晴らすべく、人気ドラマの映画化が勝負に出る。2008年に始まり、2017年の3rd seasonも好評を博しただけあって、満を持しての劇場版だ。山下智久、新垣結衣ら主要キャストも続投するので、期待は高まる。

しかし不安要素も多い。ここ数年、TVの人気ドラマが映画化され、大ヒットにつながったケースが少ないからだ。2015年に『HERO』が46億円を挙げたが、すでに過去に一度、映画になっており、シリーズという印象。人気コミックの映画化もそうだが、あまりにオリジナル版のファンの期待が高いと、映画版の仕上がりに対し、厳しい意見が際立ってしまうのが、近年の印象。レビューサイトやSNSのクチコミでその評判が一気に広がり、ヒットの行方を左右してしまう。完成度の高さが、興収を決めることになりそうだ。

予想:20〜40億円

その他、大化けする可能性があるのは、人気コミックの映画化『BLEACH』や、90年代の名曲がキーとなる篠原涼子主演の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』あたりだが、どちらも物語がオリジナルの新作ではない。映画で初めて出会う物語が、予想外の大ヒットにつながってほしいが、2018年はそんなサプライズが生まれるだろうか。

最後に。期待と冷静な判断を交えたヒットランクの予想を。

1)スター・ウォーズ/最後のジェダイ

2)ジュラシック・ワールド 炎の王国

3)リメンバー・ミー

4)未来のミライ

5)名探偵コナン ゼロの執行人

6)ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

7)ミッション:インポッシブル6

8)ドラえもん のび太の宝島

9)レディ・プレイヤー1

10)アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

『リメンバー・ミー』

(c) 2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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