『小さな恋のメロディ』から46年。マーク・レスター インタビュー「生涯続く仲間との絆にも恵まれた」

1970年代前半、美少年アイドルスターとして日本で人気だったマーク・レスター(写真:Shutterstock/アフロ)

マーク・レスターという名を聞いて胸がときめくのは、ある程度、人生を重ねた世代だろう。ただ、『小さな恋のメロディ』という作品を知っている映画ファンは多いはず。11歳の主人公2人が惹かれ合い、子供たちだけで結婚式を挙げるという、冷静に考えると他愛もないストーリーだが、ビージーズの名曲と、子役たちの愛おしいほどの名演技もあって、現在も語り継がれる名作となった。とりわけ日本での人気が高い、この『メロディ』。主演のマーク・レスターとトレイシー・ハイドは1971年の公開からしばらく、映画誌の表紙を飾るアイドル的存在だった。二人は現在、俳優業から退いており、いまだに『メロディ』の姿でファンの記憶に刻み込まれている。

『小さな恋のメロディ』公開から46年。マーク・レスターが、東京コミコンのために来日した。現在59歳となったマークに、『メロディ』当時の思い出や、その後の人生について話を聞いた。

トレイシーとは今でも電話で話す仲だよ

「『小さな恋のメロディ』を世界で最も愛してくれたのが、日本の人たち。ただ、フィリピンやシンガポール、ベネズエラやアルゼンチンなどラテンアメリカでも人気があり、ファンベース(熱いファン層)が存在したよ。母国のイギリスでイマイチだっただけさ(笑)」

ダニエル役の面影は今も残っているマーク・レスター(撮影:筆者)
ダニエル役の面影は今も残っているマーク・レスター(撮影:筆者)

子役としてキャリアを始めたマークにとって、撮影当時は12歳だった『メロディ』は出演作の一本に過ぎなかった。しかし、今でも記憶にしっかりと残っているという。

「撮影は夏の3ケ月くらい。撮影の初日が、僕が演じるダニエルがボーイスカウトで行進するオープニングのシーンだった。ダニエルと僕は同年代で、演じるのも苦労はなかったね。いちばんの思い出は、同年代のキャストと仲良くなれたこと。トレイシーとの間には本当に良いケミストリーが起こり、僕らは今でも友情関係が続いている。妹みたいな感覚かな」

メロディ役のトレイシー・ハイドと築いた46年前の絆は、今でも残っていた。その話を聞くと『メロディ』のファンは胸が熱くなることだろう。

「トレイシーは今、フランスに住んでいて、じつは東京に来る前に電話で話した。一緒にコミコンに来られないか相談したんだけど、いろいろあってダメだったよ。クラスメートを演じた他のキャストでも、二人くらい今でも付き合いがあるかな。うち一人は、大会社を経営する会計士で、年間100万ポンド(約1.5億円)くらい稼いでいる(笑)。親友だったジャック(・ワイルド)はもうこの世にいないが、彼の奥さんとの交流は続けてるしね」

日本映画に主演、CMにも出演するほど人気に

日本での『小さな恋のメロディ』の爆発的人気によって、日本映画『卒業旅行 Little Adventurer』に主演で呼ばれるという異例の経験もしたマークは「撮影で東京、富士山、北海道も回って日本を満喫できた」となつかしむ。さらに彼は日本のTVにも顔を出していた。

森永ハイクラウンのCMや広告に出て、キャンペーンであちこち行ったね。チョコレートが食べ放題という、すべての子供たちの夢をかなえたよ」

イタリア映画『楡の木陰の愛』で衝撃のヌード姿も披露したマークだが(本人曰く「恥ずかしいから水着を着けていた。全裸じゃないよ!」)、1977年に俳優業を引退。わずか19歳での決断だった。その後、整骨師、鍼灸師としてイギリスのチェルトナムでクリニックを開業。180度違う生活で今に至っている。

「一作一作、楽しんだけれど、俳優業は一生の仕事だとは思えなかったし、幸運は続かないと確信していた。まず父のレストランを手伝い、空手の指導者を続けながら、スポーツ関連の治療に関与したいという気持ちがめばえたんだ。俳優業を実際に引退したら、出演依頼もぱったりなくなったよ(笑)。じつは現在も演技のオファーがあり、いくつかプロジェクトが進んではいるが、実現するかどうかわからない。まぁ本格的な復帰は無理だけど、もう一度、演技を楽しみたいと素直に思うんだ」

日本に来たのは、2007年にマイケル・ジャクソンに同行して以来、10年ぶり(撮影:筆者)
日本に来たのは、2007年にマイケル・ジャクソンに同行して以来、10年ぶり(撮影:筆者)

2009年には、マイケル・ジャクソンの娘パリスの医学上の父親かどうかなどスキャンダル的に世間に注目されたマークだが、前妻との間に4人の子供がおり、平穏な日常生活を送っている。

「子供たちは『小さな恋のメロディ』を観たことがない。『オリバー!』は観てるかな。僕自身、DVDなんか持ってないし、一度も観てない出演作もあるよ」と笑うマーク。今回も娘を伴って来日しており、親子関係は良好のようだ。

楽しみながら人生を送ってこられた

子役でデビューし、さまざまな苦闘や葛藤もあったとは思うが、冷静に人生の選択をとってきたというマーク・レスター。改めて自身のこれまでについて振り返ってもらうと、穏やかな口調で次のように語った。

「僕の人生は特別だけど、本当にラッキーだった。子役時代に築いた人間関係が今も大切に続いている。子役スターが陥る失敗も経験しなかった。親友のジャックは、アルコールに頼ってしまったが……。こうして今、東京にいられるのも、映画に出演したおかげ。そして個人として整骨師、鍼灸師として仕事を確立できた。人生を楽しむことを忘れないように生きてこられたかな」

今でも年に10〜15通くらい日本からファンレターが届く。チェルトナムの僕のクリニックにわざわざ日本から会いにきてくれる人もいた。間もなく50年が経つのに、僕が出演した映画を愛する人がこの世界にいる……。そう考えるだけで幸せだよ」

そこには、59歳の満ち足りた表情があった。しかし目の奥の輝きは、バレエを踊るメロディを教室のドアごしに見つめる、11歳のダニエルとまったく変わっていない。『小さな恋のメロディ』のラストで、トロッコに乗って遠くへ旅立ったダニエルとメロディに、どんな未来が待っていたのか。映画を観た人は想像を巡らせたが、スクリーンから遠ざかったマーク・レスターは、幸福な人生を歩み続けたようだ。

『小さな恋のメロディ』劇場プログラムを手に(撮影:筆者)
『小さな恋のメロディ』劇場プログラムを手に(撮影:筆者)

マーク・レスターは12月3日まで、幕張メッセで開催中の東京コミコン(近代映画社、映画雑誌「スクリーン」のブース)でファンと交流する。