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韓国軍は本当に北朝鮮の巡航ミサイルの発射を正確に探知できているのか? 真向矛盾する南北の発表!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
金正恩総書記の立ち会いの下、北朝鮮の戦略巡航ミサイル発射訓練(労働新聞から)

 今朝の朝鮮中央通信によると、北朝鮮は戦略巡航ミサイルの発射訓練を行ったようだ。

 報道によると、発射訓練は金正恩(キム・ジョンウン)総書記が金明植(キム・ミョンシク)海軍司令官を引き連れ、東海艦隊近衛第2水上艦戦隊を視察した際に行われていた。

 発射訓練は警備艦海兵によるものだが、ミサイルが何発発射されたかは明らかにされていなかった。また、日時も明らかにされていなかったが、公開された写真を見る限り、どうやら昨日夕暮れに実施されたようだ。

 北朝鮮の発表に対して韓国の陸・海・空軍を束ねる合同参謀本部は今朝、「米韓は(巡航ミサイルの発射を)事前に捕捉していた。常時監視していた」として「北朝鮮の発表内容は誇張されており、事実と異なる部分が多い」との談話を発表していた。

 しかし、具体的にどの点が事実と異なるのかの説明はなかった。また、発射された日時や場所、さらにはミサイルの数から高度、飛距離などに関する言及もなかった。探知能力をさらけ出したくないためなのか、実際に探知できなかったからなのかは定かではない。

 北朝鮮の発表は「誇張されている」としている部分は北朝鮮の警備艦が「不意の状況に対処できるように高い機動力と強い打撃力を維持し、常時の戦闘動員態勢を徹底的に整えている」と報道されていることに関してなのか、それとも「発射訓練でたった一寸の誤差もなく迅速に目標を命中、打撃することで艦の経常的な動員態勢と攻撃能力が完璧に評価された」ことについてなのか、これまた不明である。

 それにしても韓国の発表には不可解な点がある。事前に知っていたならば、なぜ、瞬時に発表しなかったのかとの疑問である。

 日本の防衛省は北朝鮮の巡航ミサイルについては国連安保理の制裁決議違反に該当しないことなどから発射されても公にすることはないが、韓国の場合はこれまでに何度か、発射と同時に発表した経緯がある。

 例えば、昨年1月25日に移動式発射台から長距離巡航ミサイルが2発発射されたケースでは韓国軍は当日のブリーフィングで発射地点や飛行距離、高度については明らかにしなかったが、「午前8時から9時の間に発射され、東海(日本海)ではなく内陸で相当部分飛行したようだ」とコメントしていた。

 ところが、北朝鮮は3日後になってまるで韓国の情報能力を嘲笑うかのように「2時間35分17秒を飛行し、1800km先の東海(日本海)上の目標島(卵島)に命中した」と発表していた。

 この年は8月17日にも巡航ミサイルが2発発射されたが、合同参謀本部は即時に「(平安南道)温泉一帯から発射された」と発表していた。しかし、この時も北朝鮮は翌日、金正恩総書記の実妹、金与正(キム・ヨジョン)副部長の談話を通じて「昨日の我々の兵器試射地点は韓国当局が慌てふためき軽々しく発表した温泉一帯ではなく、平安南道安州市の『クムソン橋』であったことを明らかにする」と韓国軍の発表を揶揄していた。温泉と安州は90km離れているからである。

 また、直近では今年3月22日に巡航ミサイルが4発発射された時、合同参謀本部は「北朝鮮が午前10時15分頃咸鏡南道・咸興一帯から巡航ミサイルを数発発射した」と発表していた。

 北朝鮮は24日になって「核弾頭を模擬した試験用先頭部が装着された巡航ミサイル『ファサル―1』2発と『ファサル―2』2発の計4発を発射した事実を公表していた。韓国合同参謀本部は少なくとも発射地点とミサイルの数を当てていたことになる。

 弾道ミサイルに関して大きなズレはないのだが、どういう訳から巡航ミサイルに限っては南北の発表にはかなりの開きがある。北朝鮮は「発射した」と主張しているのに対して韓国は「発射されてない」と否定するからややこしくなる。

 例えば、昨年11月2日に発射された2発について北朝鮮は「午後に発射され、咸鏡北道地域から590.5km射程の蔚山市の前方80km付近の水域に着弾した」と発表したものの韓国は「(発射を)探知しておらず、事実でない」(国防部)と真っ向否定していた。

 「巡航ミサイルの発射はなかった」とする韓国軍はその根拠として▲米韓が空中訓練を行っており、ミサイル挑発に厳戒態勢を敷いている状況下にあり、発射されたならば軍事衛星、空中早期警報器、イージス艦レーダーなど米韓の監視、探知システムによって捕捉されたはずである▲落下したとされる「蔚山市の水域」で操業中の漁船や船舶からの目撃情報もないことなどを列挙し、結論として国内向けに軍事力を誇示する必要性からまた、韓国情報当局の分析を攪乱するため北朝鮮が意図的に虚偽の情報を流したと結論付けていた。

(参考資料:北朝鮮の巡航ミサイルの発射はなかった?それとも韓国が探知できなかった?)

 また、今年も2月23日に北朝鮮が咸鏡北道金策市から戦略巡航ミサイル4発を発射した発表した時も韓国合同参謀本部は「米韓偵察監視資産が把握したものと差がある」として、発射そのものを否定していた。いかに海面から50~100mの低空で飛行したとしても、4基も発射されれば、1基ぐらいは韓国の最新レーダーでキャッチできるはずなのに捕捉できなかったのは「実際に飛ばしていないから」というのが韓国軍の結論だった。

 北朝鮮は翌日の24日になって発射には戦略巡航ミサイル部隊該当火力区分隊が動員され、「4発のミサイルは日本海に設定された2000kmを模擬し、楕円及び8の字型の飛行軌道に沿って1万208秒(2時間50分)~1万224秒(2時間50分)飛行し、標的に命中した」と発表し、これら戦略巡航ミサイルが「ファサル(矢)」と命名されていることを明かしていた。「ファサル」が発射される写真まで公開していたが、韓国軍は決して発射を認めることはなかった。

 また、今年3月12日に潜水艦から戦略巡航ミサイルが2発発射された際には13日早朝の「昨日 東海鏡浦湾(新浦一帯)から『8.24英雄艦から巡航ミサイルを2発発射した』との北朝鮮の発表を受け、合同参謀本部は直ちに「昨日,新浦近くの海上の潜水艦から試験発射されたミサイルを捕捉した」との1報を流していた。

(参考資料:韓国と北朝鮮の発表 どちらが正しいのか? ミサイル発射の謎?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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