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北朝鮮は韓国情報機関の予想どおり11月8日までに核実験に踏み切る?米中間選挙がタイムリミット?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
豊渓里の核実験場(北朝鮮専門サイト「38ノース」から筆者キャプチャー)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は10月25日の施政演説で「(北朝鮮は)7回目の核実験の準備をすでに終えたものと判断される」と述べていたが、尹大統領が言及するまでもなく北朝鮮は核実験の準備はずっと以前に終えている。問題は北朝鮮がいつ、どのタイミングで核ボタンを押すのか、国際社会はその「Xデー」に注目している。

 韓国の情報機関・国家情報院(国情院)は7回目の核実験について尹大統領の発言の翌日(26日)、「米中間選挙日の11月8日までに行われる可能性がある」との見解を明らかにしていた。国情院は確か1か月前の9月28日に非公開で開かれた国会の情報委員会の場で「中国共産党大会の終了後、米国の中間選挙までの間に行う可能性がある」と予測していた。

 中国共産党大会はすでに22日に終了している。国情院の見立てどおりならば、この10日間が要注意だ。しかし、外れれば、情報収集能力を問われ、また北朝鮮からコケにされるであろう。

 北朝鮮が7回目の核実験を示唆したのは、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が昨年1月に開催された第8回労働党大会で核兵器の小型・軽量化を盛り込んだ「国防科学発展及び兵器システム開発5か年計画」を打ち出してからである。今年1月の党中央政治局会議でも「暫定的に中止していた全ての活動を再稼働する問題を迅速に検討するよう」当該部門に指示を下し、トランプ政権下で中断していた核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を予告していた。

 北朝鮮の情報収集に余念のない国情院は早くも3月になると、咸鏡北道吉州郡にある豊渓里の核実験場で2018年5月に爆破した坑道の一部を北朝鮮が修復していることを確認していた。偵察衛星の写真を基に米国の研究機関や北朝鮮専門サイト「ノース38」などによって新たな建物の設置や既存の建物の修理などが確認されていたが、韓国当局が公に認めたのはこの時が初めてだった。

 そして、4月には韓国軍も未使用の第3坑道を使って「北朝鮮が4月中に核実験を再開する」と判断した。「4月説」の根拠は15日に金日成(キム・イルソン)主席生誕110周年、25日に人民革命軍創建90周年を迎えるからである。韓国だけでなく、米国も同様で「バイデン政権も北朝鮮が本格的な核実験の準備に突入したとみている」と、当時米CNN(3月31日)は伝えていた。

 しかし、「4月説」が立ち消えになると、今度は5月10日の尹大統領の就任式、もしくはバイデン大統領の日韓歴訪中(5月20日~24日)が有力視された。これまた外れると、「北朝鮮はこれまで米国の主な祝日を妨害する行動をとってきた」(米戦略国際問題研究所のビクター・チャ副所長)として米国のメモリアルデー(5月30日の戦没将兵追悼記念日)に核実験が強行される可能性が高いと、核実験の時期が軌道修正された。

 結局、5月も「不発」に終わると、時期はさらにズレ、6月25日の朝鮮戦争勃発日、7月4日の米独立記念日、17日の金正恩元帥称号10周年、27日の朝鮮戦争休戦日が危ないと囁かれたが、この期間も何も起きなかった。

 そして、9月も過去に2度核実験が行われていたこと、特に2016年の5回目の核実験が建国記念日の9日に実施されていたことで注目されたが、北朝鮮は動かなかった。今月も10日が労働創建日であることからマークされていたが、これまた見送られた。

 北朝鮮が米中間選挙の日を狙って本当にやるのか、正直なところ金総書記以外は誰にもわからないのが現実である。

(参考資料:刻々と迫る北朝鮮の7回目の核実験  過去6回(2006年~2017年)の核実験を検証する!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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