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韓国次期大統領の「対日アプローチ」を北朝鮮宣伝媒体が早速批判!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
岸田文雄首相と尹錫悦次期大統領(両氏のHPから筆者キャプチャー)

 日韓国交正常化(1965年)以来、史上最悪の関係にある韓国で政権交代が実現し、日本に協調的な保守系大統領が誕生したからという訳ではないが、岸田文雄首相は韓国の尹錫悦(ユン・ソッキョル)次期大統領にお祝いの電話を入れ、今後、両国の関係改善に向けて共に協力することを確認し合った。

 尹次期大統領は選挙期間中に「日本を重視し、岸田首相と意思疎通を図り、日韓の懸案を解決する」と公言していた。岸田首相が外相当時にまとめた「日韓慰安婦合意」を遵守する考えも明らかにしていた。北朝鮮の核の脅威にも日本と共同で対処するとしており、日本にとって尹候補は対日強硬派の与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補よりは間違いなく与し易い相手である。

(参考資料:日本が待望する保守の尹錫悦候補「私が大統領になれば、米国の次に日本と首脳会談を行う」)

 韓国の報道では尹氏は岸田首相に「両国の懸案を合理的に相互の共同利益に合致するよう解決することが重要」と述べたそうだが、尹氏はこじれた日韓関係について「日本という隣人を地球上の別の場所に移すことはできない。良くても悪くても共に生きる知恵が必要だ」と選挙期間中に口にしていたそうだ。

 例えば、元慰安婦問題など「過去」の問題については昨年11月に相星孝一・駐韓日本大使と会談した際に「両国の特殊な関係を考慮し、歴史・領土問題と社会・経済の部分を分けてツートラックでアプローチすべきだ。過去と未来の問題を切り離し、真剣に対話することで、両国が共に同意できる道を見つけていけると思う」との考えを伝えていた。

 また、日本が問題にしている日本企業に支払いを命じた韓国裁判所の徴用工判決については選挙公約の中で「韓日シャトル外交を復元させ、高位級協議チャネルを稼働させ、日本軍慰安婦被害者問題や強制徴用者判決問題、日本の輸出規制措置などの包括的解決を目指す」としていた。

 日韓関係が尹次期大統領の思い通りいくかどうかは予断を許さない。様々な障害があり、韓国内には日本への傾斜に反対する勢力も存在する。日韓がタッグを組むことに反対している北朝鮮も当然口を挟んでくる。

 昨日、北朝鮮メディアが岸田首相との電話会談で尹次期大統領が日韓関係改善と北朝鮮問題での協力を約束したことに早速噛みついていた。

 北朝鮮の対南(韓国)宣伝媒体「統一のメアリ(こだま)」は「至急に清算すべき親日勢力」と題する論評で「南朝鮮(韓国)が、親日勢力が幅を利かす世の中になれば、日本反動らは過去に日本軍性奴隷犯罪に対する謝罪や賠償どころから歴史歪曲策動や独島(竹島)強奪野望など軍国主義の復活策動を一層露骨化させるだろう」と尹次期政権の対日姿勢を問題にしていた。

 特に、尹氏が選挙期間中に行われた候補者テレビ討論会で朝鮮半島有事の際に自衛隊の上陸を暗に認めるような発言をしたことを「暴言」と断じ、韓国国民に尹次期大統領の発言を座視しないよう呼び掛けていた。

 尹氏の発言は革新野党「正義の党」の候補者から「韓米日軍事同盟を考慮しているのか」と聞かれた際のもので尹氏は正確には「韓米日同盟があれば、有事の際に(自衛隊が朝鮮半島に)入って来るかもしれないが、それを前提とする同盟ではない」と答えていたが、李在明候補も、大統領府の朴洙賢(パク・スヒョン)国民疎通首席秘書官も「日本と韓国は軍事同盟ではない。自衛隊の韓国進入は容認しない」と尹氏を批判していた。

 北朝鮮の宣伝媒体は尹政権下で与党となる「国民の力」にも矛先を向け「事あるごとに韓日関係悪化の責任が現政権にあるとして各界各層の反日意識を弱めようと陰に陽に画策していた」と非難していた。

 韓国では文政権の熱烈支持者である正義連(「日本軍性奴隷問題解決のための正義記憶連帯」)元代表の尹美香(ユン・ミヒャン)議員や抗日運動功労者とその子孫、遺族から成る団体である「光復会」の金元雄(キム・ウォンウン)前会長が公金横領の容疑で相次いで起訴されたことについても北朝鮮の宣伝媒体は「親日勢力によって世論操作され、辛辣をなめた」と同情していた。

 「統一のメアリ」は最後に「今の状況は南朝鮮で親日勢力を至急に清算すべき必要性を一層浮かび上がらせている」として、韓国内の反日勢力、親北朝鮮勢力に親日の動きを阻止するよう呼び掛けていた。

 なお、「統一のメアリ」は独立運動記念日の3月1日にも「日帝崩壊から70年過ぎても歴史歪曲」と題した記事を掲載し、「日帝の過去の罪悪は決して覆うことはできない」と日本を辛辣に批判していた。

(参考資料:「反日」から「親日」に転じた進歩派の金大中大統領と「親日」から「反日」に豹変した保守派の朴槿恵大統領)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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