北朝鮮が核実験及び大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射をちらつかせたことで韓国内には動揺が走っているが、韓国大統領選挙のダークホースとして注目を浴びている第2野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)候補が今朝、自身のホームページに金正恩(キム・ジョンウン)総書記宛ての公開書簡を載せ、注目を浴びている。

 安候補は唐突に金総書記にメッセージを発信したことについて「金正恩国務委員長(日米韓では『委員長』の敬称を用いている)が2018年から取っていた信頼措置(核実験とICBMの発射凍結)を全面的に再考するとの朝鮮中央放送の発表に接したからだ」と説明している。

 朝鮮中央放送の報道について安候補は書簡で「私は(全面的な再考が)核実験とICBM発射モラトリアムの解除ではないことを心から望んでいる」と述べ、「核実験もICBM発射も良い方法ではなく、それによって(北朝鮮が)得るものは何もない」と、自制を促していた。

 安候補は「北朝鮮が長きにわたる国連制裁にコロナ19まで加わり、経済的困難をきたしていることはよくわかる。また、文在寅政権の言葉だけを信じ、接してみたものの実際には違っていたばかりか、米朝関係も平行線が続いており、歯がゆい思いをしていることであろう」と、金総書記の心情を察した上で「先が見通せないことから指導力の棄損を危惧し、内部の動揺を防ぎ、結束力を強化するため強力な措置が必要なのであろう」と、強硬措置を再検討せざるを得ない立場にも一定の配慮を示していた。

 北朝鮮が置かれているそうした状況を理解しながらも「それでも核実験とICBMの発射再開は状況をより悪化するだけで、また武力示威や瀬戸際外戦術は韓国にも国際社会にも通じない」と、安候補は指摘していた。

 安候補はさらに「今、金国務委員長の立場では核実験とICBM発射再開による強硬措置で内部を引き締め、米国の関心と注目度を高める新たな局面をつくり、再び交渉したいはずだ。加えて、韓国の大統領候補者らに自分のことを忘れるなとのシグナルを発進したいはずだ。しかし、はっきり言うが、それは決して良い戦略ではない」と断言していた。

 安候補は「北朝鮮が求めている新たな局面は武力挑発では築けない。真の非核化と実践でしか新たな局面をつくりだすことはできない」として「来る2月の光明星節(金正日生誕80周年)と4月の太陽節(金日成主席110周年)に人民に意味のある成果を提示したければ、武力示威や挑発ではなく、核実験とICBMのモラトリアムを遵守し、真の非核化の意志と北朝鮮が取れる計画などを明示すべきである」と促していた。

 安候補は北朝鮮がそうすることで「韓国や米国を含む周辺国が金委員長の望んでいる新局面に応じる余地ができる。従って、金委員長が非核化の意志を明白に明らかにし、対話再開を宣言することを心から望んでいる」と、北朝鮮に軟化するよう求めていた。

 安候補はまた、書簡で「北朝鮮当局が国連安保理決議に違反する軍事的活動を中断し、南北間の協議を通じて朝鮮半島の恒久的平和を構築するための努力を先行すれば、私が大統領に当選した暁には韓国が主導して対北朝鮮制裁緩和に向けて国際社会を説得することを約束し、また真心をもって南北関係が和合と平和の道に向かうよう努力する」との約束も付け加えていた。

 最後に「コロナ19による困難を南北が共に克服することを提案する」として、その理由について「パンデミックは1か国が退治したからといって終わりになるわけではない。政治、軍事的側面を完全に排除し、国際社会と我々の人道主義支援を受け入れれば、南北関係の進展に大きく寄与するものと思う」と、北朝鮮に国際社会が提供するワクチンを受け入れるよう求めていた。

 安候補はこれまでに以下のような対北朝鮮政策を明らかにしていた。

 1.「先非核化、後終戦宣言」を原則とする。

 2.北朝鮮との対話と協力の基調は誠意を持って維持するが、挑発と敵対行為は決して座視せず、大統領として強力な意志を示す。

 3.北朝鮮の挑発には朝鮮半島全域を監視するシステムを作り、米国と国際社会と共に協力して対応する。

 4.非核化が前進すれば、北朝鮮に国際産業特区をつくる。

 北朝鮮は進歩でも保守でもない、中道の安候補に「親米」「反民族分子」の烙印を押し、一昨年2月には対韓宣伝媒体「我が民族同士」を通じて「自分の主題も知らず自分の面汚しも知らず鏡のせいにする」との朝鮮半島の諺を引用して、安候補の言動を痛烈に批判していた。

 昨年11月にも対韓宣伝媒体「メアリ」が与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補と最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソッキョル)と併せて、安候補をも「10年間、あっちこっち政治圏を東奔西走してきたが、あっちの色、こっちの色が混じり合って色(政治色)が特異なものになっている」として、酒に例え「李在明が『熟した酒』ならば、尹錫悦は『半熟の酒』で、安哲秀は『混ぜこぜの酒』と揶揄していた。

「メアリ」は「混ぜこぜの酒」について「ごじゃまぜした中に健康を害する染料まで入っている酒を飲めば、その後遺症は半端ではない。のんべえですら酒がなくなったとしても毒薬と変わりのない『混ぜこぜの酒』を口にすることはないだろう」と皮肉っていた。

(参考資料:韓国大統領選「ダークホース」として急浮上した安哲秀候補の「対日観」 親日?反日?)