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保守の「朝鮮日報」系TVが「日本海」呼称問題で「日本に抗議しない」と文政権を突き上げる

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
国連の地理ポータルサイトに掲載されている地図(国連地理ポータルサイトから)

 日本と韓国は長年、両国に面している海を「日本海」(Sea of Japan)と呼ぶか、「東海」(East Sea)と呼ぶかで争ってきた。

 国際組織の国際水路機構(IHO)はこの約1世紀、「Sea of Japan」と定めてきたが、韓国が1997年のIHOの総会から「東海」への名称変更、もしくは「日本海」との併記を求めたことで国際舞台でも両国は争うこととなった。しかし、昨年11月、IHOはオンライン形式で行われた総会でデジタル版の海図には「日本海」や「東海」のような名称ではなく、数字で表記する方法を導入することを決定したが、公式の海図には継続して日本海を単独表記することを暫定承認していた。

 これでこの海を巡る論争は終結したものと思われていたが、韓国最大部数を誇る保守紙「朝鮮日報」系列の「朝鮮TV」は昨日(6日)の放送で「国連の地理ポータルサイトに『日本海』と単独表記されていることから我が国の外交当局の対応が急がれているとの指摘がある。それなのに我が外交当局の態度は非常にもどかしい面がある」と伝えていた。

 そもそも国連の地理ポータルサイトの「日本海」表記を問題にしたのは韓国の民間外交の団体「バンク」で、先月15日に国連に抗議していた。抗議理由は「1977年に2か国以上が共有する領海の名称は併記するとの方針を発表しているのに国連はそれを守っていない」というものだった。

 「バンク」は抗議の理由について「国連サイトの表記を放置すれば、日本の海外広報活動に利用される恐れがある」と説明していたが、肝心の韓国政府は日本とはこれ以上事を荒立てなくないとして、抗議せずに静観していた。

 「朝鮮TV」は放送前に外交部にこの件を問い質していたようだが、外交部は「単独表記は国連事務局の慣行なので抗議の対象とはならない」とその理由を説明していたようだ。国連は2004年3月に公式文書で「日本海を標準地名として使用する」との政策を確認していた。

 外交部はまた、「朝鮮TV」に対して「日本とは絶えず交渉しているが、具体的な方式に関しては共有することは難しい」と回答していたが、「朝鮮TV」は納得がいかなかったのか、「国連が国際社会に及ぼす影響力を考えると、これ以上放置すれば、『東海』は忘れ去られ、『日本海』だけが残ってしまう」との「問題意識」から報道に踏み切っていた。

 「朝鮮TV」は保守紙「朝鮮日報」系列のTVである。「朝鮮日報」は韓国の進歩層・反日派から「親日売国媒体」と揶揄されているメディアである。その理由は他のどのメディアよりも文在寅政権の対日政策を先鋒鋭く追及、攻撃するメディアであるからだ。実際に朝鮮日報も「朝鮮TV」もこれまで良くも悪くも「文政権は政権浮揚のため、支持率を上げるため反日を政治利用している」との論陣を張ってきた。

 「反日を煽っている」と文政権の反日言動を批判してきた「朝鮮TV」が今回、文政権を突き上げる報道を行ったことについては二つの見方がある。

 一つは、「朝鮮日報」系は決して「親日」ではないこと、主張すべきは主張するメディアであることをアピールすることで「親日」の負のイメージの払拭を図ろうとしているとの見方と、もう一つは、文政権の言動不一致を炙り出すことで進歩層を離反させ、政権与党の弱体化を図っているとの見方である。

 どちらが的を射ているか定かではないが、一つ明白なことは進歩政権と称されていた金大中政権、盧武鉉政権の時も「朝鮮日報」はこれら政権の対日政策についてはやることなすことすべてに手厳しかったことだ。

 例えば、金大中政権が苦労の末に妥結した日韓漁業協定も独島(竹島)の表記がなく、中間水域に含まれたことから辛辣に批判し、また盧武鉉政権が竹島の海底地形の韓国名称申請をめぐり日本と対立した際に妥協し、申請を断念すると、「弱腰外交」、「屈辱外交」と叩いていた。

 気に食わない政権を攻撃するには手段を選ばないのが韓国の保守メディアであり、また進歩メディアである。反日の感情を煽ろうとしているのは時の政権だけでなく、メディアもしかりである。

(参考資料:「日本海」か「東海」か 米国は日本の肩を持った!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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