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追い込まれる文大統領!韓国の与野党は慰安婦問題の国連拷問防止委員会(CAT)付託を支持!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
革新野党「正義党」の沈相奵大統領候補に支援を要請する元慰安婦(「正義党」提供)

 元慰安婦被害者のシンボル的存在である李容洙(イ・ヨンス)さんが10月26日、記者会見を開き「これ以上、待てない。国際司法裁判所(ICJ)への提訴が無理ならば、国連拷問防止委員会(CAT)に慰安婦問題を回付してもらいたい」と要望していたが、これに韓国の与野党が共鳴する動きを見せている。

(参考資料:国際司法裁判所がダメならば、国連拷問防止委員会に付託せよ! 元慰安婦が文大統領を突き上げる!)

 李さんは今年3月には外交部の鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官(外相)や女性家族部の鄭英愛(チョン・ヨンエ)長官らと会い、政府にICJへの付託を求めていた。しかし、政府にその気がないことがわかり、また外交解決も期待できないことから国連次元の問題解決を求め、付託先をCATに切り替えることにしたようだ。

 CATへの付託は国連拷問防止協約21条に従い、CATに加盟している日本が「加盟国としての義務を果たしていない」と韓国政府がCATに通報することで付託手続きを開始することが可能である。

 李さんによれば、韓国政府は「日本政府がICJへの付託に同意しない以上、どうにも対応できない」と説明していたようだ。このため李さんは一転、日本の同意を必要としない、韓国政府が決断すれば韓国単独付託が可能なCATに慰安婦問題を回付することにシフトしたとしている。

 今回、李さんが与野党を訪問し、協力を要請したのは記者会見で文在寅大統領にCATTに付託するよう決断を求めたにもかかわらず反応がなかったこと、また大統領選挙が迫ってきたことから政党を動かして政府に圧力を掛けることに狙いがあったようだ。

 この件で対応を求められた韓国外交部高官2日、記者らに対して「様々な意見が出ているのは承知している。諸般の状況を考慮し、慎重に検討している」と外交部の立場を説明していたが、関係筋によると、現状ではICJ同様にCATにも付託する考えはないようだ。

 李さんは10月29日に革新政党「正義党」の元代表である沈相奵(シン・サンジョン)大統領候補を皮切りに11月1日には最大保守野党の「国民の力No.2.2である金ギヒョン院内代表、そして昨日は与党「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表と党の創設者である安哲秀(アン・チョルス)元代表が大統領選挙への出馬を表明したばかりの中道野党「国民の党」の権垠希(クォン・ウンヒ)院内代表らに会い、協力を求めていた。

 李さんは「共に民主党」の宋代表との会談では「与党から政府に働きかけてもらいたい。また、李在明(イ・ジェミョン)大統領候補の公約にも慰安婦問題の早期解決の意志を盛り込んでもらいたい」と要請し、これに対して宋代表は「政府と相談してみる。意見は政府に伝える」と答えていた。

 一方、与党とは一線を画している「正義党」の沈相奵(シン・サンジョン)大統領候補は国会次元で決議案を推進する考えを表明していた。

 沈候補は李さんに「日本との関係上、政府は消極的にならざるを得ないようだが、外交問題と歴史問題を切り離して推進すべきである」と、国連防止条約を通じた解決に積極的に乗り出すことを約束していた。

 尹錫悦(ユン・ソギョル)前検察総長を大統領候補として担ぎ、政権交代を狙う「国民の力」の金ギヒョン院内代表は「文政権は慰安婦問題では実質的に何一つやったことはない。ICJ提訴やCATへの回付に前向きな措置を取るよう政府に対応を促す」と、これまた李さんに支援を表明していた。

(参考資料:「日本から謝罪を取り付ける」 韓国保守大統領候補(尹錫悦前検察総長)が元慰安婦に約束!)

 さらに「国民の党」の権垠希党院内代表も「党としてCATへの超党派的支持を取り付けるよう努力する。また、安候補の大統領選挙公約に入れるよう努力する」と「正義党」と同様に国会決議の推進を積極的に検討することを確約していた。

 肝心の文大統領は元慰安婦問題や元徴用工問題では日本が対話による解決に乗り出さない限りは積極的に動いても世論の反発を買い、支持率を下げるだけで得るものがないと考えているふしがある。このまま来年3月の大統領選挙までは傍観するのではないかともみられている。

 元徴用工問題も元慰安婦問題も李明博(イ・ミョンバク)ー朴槿恵(パク・クネ)保守政権からの「負の遺産」であると捉えているならば、仮に次期大統領に保守野党の候補が当選した場合は、何もせず放置してその負を引き継がせる考えのようでもある。しかし、仮に次期大統領が後継の与党候補に決まった場合は、逆に「負の遺産」を引き継がせないため泥をかぶってでも本気で解決に乗り出すのではないかとみる向きもある。もはやレイムダックや支持率を気にしないで済むからである。

 大統領選挙は来年3月9日だが、退任は2か月後の5月9日。従って文政権が動くとすれば、大統領選挙の後、それも結果次第となるが、CATへの付託も選択肢として検討されているのかもしれない。

(参考資料:「日韓慰安婦合意」を巡り韓国で外相と元第1次官が国会でバトル)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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