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日本に向けられた? 北朝鮮の新型長距離巡航ミサイル

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮が発射した新型長距離巡航ミサイル(労働新聞から)

 北朝鮮のミサイル発射で朝から大騒ぎだ。どうやら新型長距離巡航ミサイルのようだが、何も今朝発射されたわけではない。北朝鮮は11日と12日に発射していたのである。

 一昨日にはすでに発射されていたのに日米韓はなぜ伏せていたのだろうか?国連決議に反する弾道ミサイルではないことやミサイル発射が数日続く可能性があるとみて、終了するまで待っていたのかもしれないが、もしも捕捉できなかったとしたら大事だ。どちらにせよ北朝鮮が今朝、朝鮮中央通信や労働新聞などで報道したことで明るみに出たことになる。

 発射地点は明らかにされていないが、これまでだと西側から発射され、朝鮮半島を横断し、日本海に着弾するが、今のところ着地点も不明だ。

 北朝鮮が「発射された長距離巡航ミサイルは我が国の領土と領海の上空に設定された楕円及び8の字型の飛行軌道に沿って7580秒(126分)飛行し、1500キロメートル先の標的に命中した」と報道しているのが事実ならば、距離的には韓国の上空を飛び越え、日本列島に十分に届く距離である。

 北朝鮮は2017年6月8日に東海岸の元山から発射管4つ備えたキャタビラの移動式発射台から巡航ミサイルを発射していたが、この時は「KN-35」と称される地対艦巡行ミサイルで、飛距離200km程度の短距離巡航ミサイルであった。

 北朝鮮は今回、「大きな意義をもつ戦略武器である長距離巡航ミサイルの開発事業はこの2年間、科学的で信頼性のある武器体系開発工程に従って推進されてきた」と発表しているが、言わんとするところは、長距離巡航ミサイルの開発の正当化である。即ち、2019年のハノイでの2度目の米朝首脳会談が決裂したため長距離ミサイルの開発に着手せざるを得なかったと言いたいようだ。

 北朝鮮の発表どおり「技術的指標やミサイルの飛行操縦性、複合誘導結合方式による末期誘導命中の正確さなど、設計上の要求をすべて満足させた」ことで試験発射が成功したならば、北朝鮮は日本全土を射程圏内に収めた巡航ミサイルを手にしたことになる。

 北朝鮮にとっては昔も、今も外敵は米国、日本、韓国の3か国である。従って、北朝鮮の軍備増強も軍事演習も、また核とミサイル開発、配備も日米韓との「有事」に備えたものであることは言うまでもない。

 北朝鮮は2017年までは外務省も国営メディアも非難の対象は1番に「宿敵」の米国、2番にその「傀儡」である韓国で、そして3番目が植民地統治の過去を清算しない「100年來の仇敵」日本であった。

 しかし、米朝首脳会談が2度、南北首脳会談が3度行われた2018年以降の北朝鮮の外敵非難は米韓合同軍事演習期間中を除くと、米韓はスルーされ、その矛先は日本に向けられていた。特に今年に入って、北朝鮮の対日バッシングは尋常ではなかった。

 北朝鮮は元慰安婦や徴用工問題、教科書問題、靖国参拝問題、竹島(独島)問題では韓国同様に日本を批判するのが慣例となっているが、韓国と異なるのは全ての批判が「日本は戦争の準備を進めている」との論調に立っていることだ。

 例えば、5月13日の朝鮮中央通信は日本の外交青書に「竹島」が「日本固有の領土」と明記されたことを「大陸侵略の発火点となる」と非難し、また、菅義偉首相が憲法9条への自衛隊明記を含む改憲を目指す立場を明らかにした際には朝鮮中央通信は「戦争をできる国にしようとの足掻き」と非難する論評(5月19日)を配信していた。さらには岸信夫防衛相が北朝鮮を「安全保障上の懸念である」と発言した時も朝鮮中央通信は「先制攻撃能力保有を正当化するものである」(5月26日)と非難していた。

 先月も朝鮮中央通信は25日の論評で日本の菅首相が15日の「終戦の日」に合わせて靖国神社に供物を奉納したことについて「侵略を行った歴史を絶対に認めずにこれまで続けてきた軍事大国化をさらに進めるという宣言である」と断じていた。

 もう一つ、韓国の対応と異なる点は米軍と連動する自衛隊の動きや日本の軍備増強について過敏に反応していることだ。

 例えば、朝鮮中央通信(1月27日付)は2021年の予算案に航空自衛隊の次世代戦闘機開発費用として数百億円が支出され、2隻の新型イージスシステム搭載艦に相手の射程圏外からの攻撃が可能な長距離巡航ミサイルを導入するための検討を正式に開始したとの日本の報道を受け、「日本が武力増強に引き続き拍車をかけている」の見出しの記事を掲載していた。

 そして、先月19日には日本が海上自衛隊の護衛艦「いずも」を改修して「空母化」し、同艦で戦闘機による発着訓練を計画していることについて「空母を保有しようとするのは、防衛の名のもとに周辺国を攻撃するための準備であり、危険な軍事大国化への動きである」と批判したばかりである。

 日本が「敵基地先制攻撃」を論じれば論じるほど、北朝鮮が日本を標的にしたミサイル開発に拍車をかける、またその逆のこの「危険なゲーム」をどこかで終わらせる必要があるが、何のパイプもない、交渉ゼロの日朝の現状下では当面は無理だろう。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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