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韓国が領土と歴史認識でもめているのは日本とだけではない。中国とも論争中!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
領土問題、歴史認識で対立しながらもにこやかに会談する中韓首脳(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 韓国が領土問題と歴史観で対立している相手はなにも日本だけではない。対立が表面化していないだけで中国との間でも領土と歴史認識問題では火種がある。

 領土問題では東シナ海の中韓の中間線に位置している島、離於島(イオド)を巡る対立である。

 韓国は2001年に島の名称を波浪島(パランド)から離於島に変更しているが、中国はこの島を蘇岩礁と呼んでいる。

 島は中国と韓国が共同管理する暫定経済水域内にあることから互いに「自国の排他的経済水域(EEZ)内にある水中暗礁である」と領有権を主張している。

 中国は1970年から韓国の領有権を認めていないが、韓国は1987年に灯台を設置し、1995年から2001年にかけてこの暗礁を基礎に海上へ海洋調査施設を建設。中国は監視用航空機による偵察活動を幾度も行い、韓国に建設を中止するよう抗議したが、韓国は無視して強行した。

 また歴史問題では高句麗の帰属問題がある。

 かつて朝鮮半島北部から満州南部を支配した高句麗が朝鮮半島に属するのか、それとも中国に属するのかという帰属を巡る 論争である。

 古代朝鮮3国の一つである高句麗(紀元前37~668年)は朝鮮半島北部から中国東北部に君臨した国家だっただけに史跡も北朝鮮と中国にまたがっている。

 韓国の研究者らが698年に建国された渤海の支配層が高句麗人であり、その渤海こそが高句麗の継承国であると主張しているのに対して中国側は「高句麗は中国古代の辺境少数民族の政権である」と主張し、中国に帰属しているとの立場である。

 古代史に留まらず、韓国の伝統民族衣装・チマチョゴリからキムチなど韓国を象徴する食文化を巡っても両国は「帰属」問題で争っている。

 中国はキムチについては中国・四川地方の塩蔵漬物「泡菜」が由来であると主張し、また、参鶏湯(サムゲタン)についても中国は最大ポータルサイト「百度」の百科事典に「参鶏湯は高麗人参と若鶏、もち米を入れた中国の伝統的な広東料理である」と記述し、「参鶏湯の源流は中国である」と主張し始めている。

 この他にも1950年に勃発した朝鮮戦争を巡る歴史認識の違いもある。

 韓国は「朝鮮戦争は北朝鮮の南侵によって引き起こされた」ということに同調しない中国に内心不満を抱いているが、中国を北朝鮮から引き離すため、また経済優先の観点から表立った批判を避けている。

 韓国からすれば、釜山まで南進した北朝鮮軍を中朝国境まで押し返し、韓国主導の国土統一が目前だったところ中国が参戦したため戦争が3年も長引き、その間、数百万人が命を落とし、挙句の果てに軍事境界線が引かれ、祖国分断を強いられただけでなく1千万人の離散家族を生む悲劇を招くことになった。しかし、韓国はこの件で中国に対して一度も謝罪も、償いも求めたことはない。

 韓国は国益優先の立場から中国とは領土問題でも歴史認識の問題でも事を荒立てないようにしているようだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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