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こっそり実施された竹島での韓国の「独島防御訓練」 日本は気づかなかったのか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
昨年8月の韓国の「東海(日本海)領土守護訓練」(韓国国防部のHPから)

 竹島(韓国名:独島)周辺海域での「他国の船舶の領海侵犯」を想定した韓国の下半期の「独島防御訓練」が今月4日に非公開で行われていたことがわかった。

 非公開でやったというよりもむしろこっそりやったという感じが否めない。これまではマスコミに公開しないことはあっても、それなりの予告はあった。しかし、今回は3週間も伏せられていた。

 同訓練は1986年から毎年2回、上半期と下半期に分けて実施されており、今年の上半期の訓練は6月2日に行われていた。慣例では下半期の訓練は半年後の12月に行われるわけだから12月に実施されるのは想定外でもなんでもないが、4日にすでに行われていたことが全く洩れなかったのは意外だった。

 事前に洩れれば、日本政府が反発し、中止を求めていただろう。しかし、極秘でやったにせよ日本の領土(竹島)周辺、海域での訓練を日本政府が知らないはずはない。仮に韓国軍の領海侵犯を韓国のメディアが報道するまで知らなかったとするならば、安全保障上問題だ。まして承知していて、抗議しなかったとすれば、外交上の問題だ。

 韓国の「独島防御訓練」という名称と年に2回の実施は李明博政権の2008年からである。

 海軍と空軍、それに海兵隊と海洋警察による合同訓練には駆逐艦(3200トン級)、護衛艦、警備艦などの艦艇、F-15K戦闘機、海上作戦ヘリ、P3C哨戒機などが動員され、2016年12月の訓練では海兵隊員10数人がUH-60ヘリに乗って竹島に上陸する本番さながらの訓練が行われていた。海兵隊の島上陸は2011年末以来の出来事であった。

 昨年は「G20サミット」(6月28日)に出席する文在寅大統領が「元徴用工問題」でこじれた日韓関係修復のため安倍晋三首相(当時)との首脳会談を打診していたこともあって上半期には行われなかった。

 しかし、日本が輸出厳格化措置に続いて8月2日に韓国をホワイト国から除外したことに反発して、2か月遅れの昨年8月に訓練を強行している。この時の訓練は「東海(日本海)領土守護訓練」という名称の下、史上最大規模で実施されていた。

 陸・海・空及び海兵隊まで総動員して、逐艦、護衛艦、警備艦などの艦艇、F-15K戦闘機、海上作戦ヘリ、P3C哨戒機、さらには初めてイージス艦(7600トン級)まで動員されていた。

 昨年下半期(12月)の訓練は8月の大規模訓練から間もないことやGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄問題が11月22日に決着が付き、また韓国がWTO(世界貿易機関)への提訴を撤回し、それに応える形で日本が輸出厳格化問題で12月中旬に東京での交渉に応じることで合意したことから取り止めていた。

 今回の訓練では艦艇7~8隻とF15K戦闘機を含む航空機4~5機が参加したが、2003年から合流していた空軍は参加しなかった。また、上陸部隊の海兵隊は6月の上半期の訓練に続いて今回も参加しなかったようだ。

 日本に対する配慮ではなく、新型コロナウイルス感染への対策上、規模を縮小したようだ。日本に配慮する気があるならば、訓練そのものを中止したはずだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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