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金正恩委員長に最高位の新ポストが用意!国家主席の復活か、大統領か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
労働党政治局拡大会議で拳を振り上げ、熱弁を振るう金正恩委員長

 北朝鮮は昨日、11日開催の最高人民会議を前に労働党本部で政治局拡大会議を開いた。金正恩委員長、金永南最高人民会議常任委員長、崔龍海副委員長、朴奉柱総理ら4人の政治局常務委員を含む政治局員17人それに政治局員候補12人による全体会議である。

 最高人民会議で憲法改正や国家機関人事の選出、重要な政策が採決される場合、その前に党幹部会議を開催するのがほぼ慣例である。最高人民会議で決議される議案はすべて直前に開かれる党会政治局拡大会議で決定されるからだ。

 例えば、金正恩体制下で初めて開催した2012年の時は;

 最高司令官以外は無冠だった金正恩委員長は4月13日の第12期5次会議で新設された国防第一委員長に選出されたが、その2日前に開かれた党代表者会でこれまた新ポストである党第一書記に選出されていた。父の党総書記と国防委員長の肩書を継承せず、金正恩氏は新ポストを設け、そこに座ったわけだ。

 また、2013年にも3月31日に党中央委員全員会議、4月1日に第12期7次会議、2014年も4月8日に党中央委員会政治局会議、9日に第13期1次会議を開いていた。

 異例なのは、2016年である。通常の4月ではなく、6月に最高人民会議が開催されたが、この時はその前月の5月に36年ぶりに労働党大会が開催されたことと無縁ではない。

 北朝鮮はこの党大会で書記局制を廃止した。金正恩氏も党第一書記から労働党委員長に肩書を変更した。続いて6月に開催された第13期4次会議では国防委員会が廃止され、新たに国務委員会が設置され、金委員長は新ポストである国務委員会委員長に選出された。国防委員長から国務委員長に肩書が替わった。

 金委員長は5年に1回行われる最高人民会議代議員選挙に今回立候補しなかった。最高指導者が代議員にならなかったのは北朝鮮憲政史上初めてのことである。

 国務委員長は最高人民会議で選出されるが、前例からすると、金委員長には国務委員長に替わる新たな最高位のポストが用意されているようだ。それが、国家主席制の復活となるのか、それとも韓国や米国のように大統領制を新設するのかは最高人民会議で発表されることになる。

 なお、配信された党拡大会議の写真をみると、金委員長が動議した議案に挙手して賛成の意を示したのは政治局常務委員及び政治局員に限定され、政治局員候補には議決権が与えられてなかった。

 失敗に終わったベトナムでの米朝首脳会談の責任を取らされ、問責されるのではと囁かれていた金英哲・党統一戦線部長も政治局員の一人として出席していたことが確認された。

 金委員長はこの日の会議で昨年4月の労働党第7期第3次会で決定された新たな戦略路線である「経済建設総力集中路線」の継承を呼び掛けていた。こうしたことから過去の「並進路線」(核と経済を並行して進める路線)に回帰することはなさそうだ。

北朝鮮の報道で知る限り、金委員長は核についても言及しておらず、また対米非難も一切なかったようだ。とは言うものの、「自力更生」や「自立経済」を強調していることから経済制裁の解除のため核問題で譲歩する考えもないことも明らかになった。持久戦、長期戦を覚悟しているふしが見られる。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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