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近く、水素爆弾の実験か! 金正恩委員長が核研究所を視察!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
背後の壁の説明図には火星14号の核弾頭(水素爆弾)と書かれている。

 金正恩委員長が昨日、核兵器研究所を視察し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に装着可能なより強力な核兵器をどんどん作るよう指示していたと、今朝の朝鮮中央通信が伝えていた。同通信は金委員長の視察を伝えた際「水素爆弾を開発した」とも報じていた。

 建国記念日の9月9日を前に北朝鮮が6度目の核実験に踏み切るのではと噂されている時だけに金委員長の発言は不気味極まりない。昨年はこの日に核弾頭の爆発規模を試すことを目的に5度目の核実験を行っている。

 「より強力な核兵器」とは現在保有しているプルトニウム型やウラン型の核兵器より「高い段階の核兵器」を指しているようだが、水爆や電磁波爆弾(EMP)を指しているようだ。

 北朝鮮はこれまでに5度核実験を行っている。

 1回目は2006年10月で、長崎に落とされたプルトニウム型の実験。2回目は2009年5月で、広島に落とされたウラン型の実験、そして、3回目が2013年2月の小型化の実験である。

 北朝鮮は核弾頭の小型化にはまだ成功していないとみられているようだが、金委員長は昨年3月に核弾頭の模型とみられる「銀色球体」と長距離弾道ミサイル「KN-08」を前に「核爆弾を軽量化して弾道ロケットに合致するように標準化、規格化を実現した」と豪語していた。北朝鮮の最高指導者が核の小型化について言及したのはこれが初めてであった。

 昨年1月の4度目の核実験は「試験的用水素爆弾の実験を行った」と北朝鮮は発表しているが、米韓軍当局は水爆にしては爆発規模が6~10ktと小さかったことから水爆の前段階であるブースト型分裂弾(強化原爆)の実験とみなしている。ちなみに水爆の威力は100ktである。

 過去に水爆を実験した国は米国、ロシア(旧ソ連)、英国、フランス、中国、インドの6か国だが、米国は原爆から7年後、ロシアは6年後、英国は5年後、フランスは6年後、そして中国も1964年の初の原爆実験から3年後の67年に水爆実験を行っている。北朝鮮は最初の原爆実験からすでに11年目になる。他の原爆実験国ができて北朝鮮だけが例外ということにはならない。開発したならば、当然、実験が行われるだろう。今度の6度目の核実験が再度、水爆の実験ではないかと言われる所以である。

 6回目の核実験には核実験場の2番(西側)と3番(南側)坑道が使われるものとみられている。韓国情報機関「国家情報院」も今月28日に「2と3の坑道で核準備が終わっている」とそのことを確認しているが、これまで3番坑道は一度も使われたことがない。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は地下800メートルの場所で実施された前回(5回目)の爆発力を過去最大の17.8キロトン(1キロトン=TNT爆薬1千トンの威力)と推定したが、今回は地形からして10倍以上の威力を持つ核実験が可能との分析結果を出している。この通りならば、北朝鮮はより強力な核爆弾を手にすることになる。

 また、金委員長は昨年「水爆実験で幕が開けた今年に多階段で起きた核武力強化の奇跡的成果を引き続き拡大せよ」と指示を出していたが、EMP(Electro Magnetic Pulse)爆弾の開発もその一環である。

 EMPは高高度核爆発や雷などによって発生するパルス状の電磁波のことである。スーパーEMP爆弾は爆発した時にそのような超強力EMPが生じるよう特別に考案された武器で、攻撃目標地域のすべての電気、電子装備を延焼させ、電力網や通信・電算網を無力化させてしまう電子爆弾である

 米情報局(CIA)で核兵器専門家として勤務していたピーター・フライ博士が「北朝鮮はスーパーEMP爆弾を開発した可能性がある」と今から4年前に語っていた。また、トランプ大統領当選後の政権引き継ぎ委員会で外交安保担当参謀を務めたことで知られていたトランプ大統領のアドバイザーの一人、元CIA長官のジェームス・ウルジー氏も今年3月、米議会専門誌「ザ・ヒル」への寄稿文(3月29日付)で次のような警告を発していた。

 「(米国の)一部官吏らによって北朝鮮は核兵器で米本土を打撃できる能力をまだ持ってない、北朝鮮は核弾頭の小型化技術や米国を狙った大陸間弾道ミサイル(ICBM)の大気圏再突入技術開発を完成していないとの誤った安堵感や認識を米国人に与えてしまった。米本土は北朝鮮が核兵器技術を完成していない以上、安全だとする神話は間違っている」

 「北朝鮮のような核兵器と長距離弾道ミサイルを開発した国ならば核弾頭小型化や大気圏再突入技術は簡単に克服できる。マスコミや公職者らがこれまでこうした事実を無視、あるいは軽視したのは、おそらくどの歴代政権も在任中に北朝鮮を実在する脅威として認めたくないからである。」

 「米前高官らは2015年に北朝鮮を高高度EMP(電磁波爆弾)に特化した小型核兵器を衛星で飛ばせる国であるとみなすべきであった。米国人の90%が命を落とすかもしれない核電磁パルスを使用する可能性に対応しなければならない」

 金委員長は昨年4度目の核実験に成功した直後の3月、「核攻撃能力を高めるのに必要な実験を続けていかなければならない」と述べたうえで「地上と空中、海上、水中の任意の空間でも敵に核攻撃を加えられるよう準備せよ」と命じていた。

 ICBM発射の次に、今度は核実験!北朝鮮の暴走はいつまで続くのか。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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