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北朝鮮が6度目の核実験を行う4つの根拠

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ネバタでの核実験

 北朝鮮が太平洋に向けて「火星12号」とおぼしき中距離弾道ミサイルを発射したことから次は核実験を行うのではないかと危惧されている。

 北朝鮮が6度目の核実験に踏み切る公算は極めて高い。

 一つは、準備が終わっていることだ

 北朝鮮は昨年9月9日に北東部の咸鏡北道吉州郡豊渓里(プンゲリ)にある核実験場で5回目の核実験を行った直後から6度目の準備を行ってきた。

 今年3月には米CNNテレビが複数の米政府当局者から「北朝鮮が6回目の核実験の準備を終えたことを示す具体的な情報を得た」(24日)と伝えていた。

 金正恩委員長が3月10日に飛行機を使って核実験場を視察していたことも判明していた。韓国国防部は「北朝鮮は金正恩氏の命令が下されれば、数時間内に核実験を実施できる状況」として、「韓米合同で核関連施設を監視している」ことを認めていた。

 北朝鮮も核実験の可能性を否定しなかった。北朝鮮の韓成烈外務次官は4月に米国のメディアとのインタビューで「核実験の準備はできている。最高指導部が必要だと判断すれば実施される」と公言していた。

 今回の核実験には核実験場の2番(西側)と3番(南側)坑道が使われるものとみられている。韓国情報機関「国家情報院」も今月28日に「2と3の坑道で核準備が終わっている」とそのことを確認している。

 これまで3番坑道は一度も使われたことがない。1回目の核実験(2006年)が1番(東側)坑道で行われた以外は、2回(2009年)から5回目(2016年)はいずれも2番坑道(西側)で実施されていた。

 次に、核を完成させる必要があるからだ。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は地下800メートルの場所で実施された前回(5回目)の爆発力を過去最大の17.8キロトン(1キロトン=TNT爆薬1千トンの威力)と推定したが、今回は地形からして10倍以上の威力を持つ核実験が可能との分析結果を発表している。最大で282ktの爆発力にも耐えられるとみている。これが事実ならば、北朝鮮は二つの坑道を利用して、連続的に核爆弾を行う可能性も否定できない。

 北朝鮮が連続して核実験を行うならば、その狙いの一つは、米国を標的にした長距離弾道核ミサイルの完成を急いでいること、もう一つは、「これで核実験は終わった。今後はやらない」と終結宣言をして米国を交渉の場に誘い込むことにあるようだ。 

 北朝鮮外務省傘下の米研究所のリ・ヨンピル局長は5度の核実験直後の昨年10月、米NBCテレビとのインタビューで「我々は6回、7回、8回と核実験をできる」と豪語していた。もしかすると、1998年に5月28日、30日と2日にかけて計6回核実験を行ったパキスタンや同じく1998年に5月11日に3回、1日置いて、13日に2回同時に複数の実験を行ったインドのように連続して行うこともあり得なくもない。

 また、昨年9月の5度目の核実験については北朝鮮は「核弾頭の爆発実験を行った」と発表していた。

 核実験を5回以上行った国は、米国、ロシア、英国、フランス、中国などですべて5回の核実験で核兵器の小型化を成功させている。ちなみに米国は1948年4月30日の5度目の核実験で高濃縮ウランによる小型化(49キロトン)を実現させている。

 三つ目に、水爆がまだ完成していないことにある。

 昨年1月の4度目の核実験について北朝鮮は「水爆実験を行った」と発表している。これに対して米韓軍当局は水爆にしては爆発規模が6キロトンと小さかったことから水爆の前段階であるブースト型分裂弾(強化原爆)の実験とみなしている。

 4度目の核実験は北朝鮮が自ら認めているように「試験的用水素爆弾の実験」であった。試験的ならば、まだ完成しておらず、未完のままである。従って、再度の水爆実験もあり得る。成功すれば、威力は100キロトンとみられる。

 過去に水爆を実験した国は米国、ロシア(旧ソ連)、英国、フランス、中国、インドの6か国だが、米国は原爆から7年後、ロシアは6年後、英国は5年後、フランスは6年後、そして中国も1964年の初の原爆実験から3年後の67年に水爆実験を行っている。北朝鮮は最初の原爆実験からすでに11年目になる。他の原爆実験国ができて北朝鮮だけが例外ということにはならない。

 最後に、金正恩委員長の指示であることだ。

 金委員長が核に並みならぬ執念を燃やしていることは以下の発言から明らかだ。

 「必要な核物質を生産し、核兵器技術をたゆみなく発展させ、より威力的で精密化、小型化した核兵器をもっと多く造れ」(2016年3月9日、核兵器開発に従事している科学者や技術者らに対して行った指示)

 「新たに研究製作した核弾頭の威力を判定するための核爆発実験と、核攻撃能力を高めるのに必要な実験を続けろ」(2016年3月10日、射程500kmの弾道ミサイル発射テストを視察した際の指示)

 「水爆実験で幕が開けた今年に多階段で起きた核武力強化の奇跡的成果を引き続き拡大せよ」(2016年9月5日、ノドンミサイルの発射に立ち会った際の指示)

 北朝鮮は過去に国連安保理が非難、あるいは制裁決議を採択すると、それに反発、対抗して核実験を行ってきた。今回の北朝鮮の太平洋に向けた中距離弾道ミサイル「火星12」の発射で安保理が召集されている。何らかの措置が取られれば、「対抗措置」を取る大義名分はある。

 来月(9月)は9日が建国記念日である。昨年はこの日に5度目の核実験を強行している。また、10月には金正日総書記推戴20周年(8日)、労働党創建日(10日)が控えている。

 トランプ政権がオバマ政権以上に北朝鮮への対決姿勢を鮮明にしていることからよほどのことがない限り、6回目の核実験が見送られる可能性は限りなくゼロに近い。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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