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ハルキウで発見された北朝鮮製KN-23弾道ミサイル(推定)の直径は110cm、イスカンデルMより太い

JSF軍事/生き物ライター
紛争兵器研究所(CAR)の報告よりハルキウで発見された残骸の朝鮮語の文字「ㅈ」

 1月20日、イギリスの紛争兵器研究所(CAR)は、1月2日の攻撃でロシア軍が発射してウクライナのハルキウに着弾して発見された弾道ミサイルの残骸について現地調査を行い、北朝鮮製のKN-23ないしKN-24であると分析した報告を発表しました。

Documenting a North Korean missile in Ukraine

  • Ukraine field dispatch, January 2024
  • Conflict Armament Research (CAR)

 北朝鮮製の短距離弾道ミサイル「KN-23」と「KN-24」は部品構成が一部共通している兄弟機(関連記事)です。

 そして特にKN-23は、ロシア製のイスカンデルMと形状が酷似しています。しかし細かい部分で違いがあり、見分けることが可能です。

KN-23(推定)の直径は110cm

 紛争兵器研究所(CAR)は先ず重要な報告を行いました。ハルキウで回収されたミサイルの残骸の一番太い尾部の直径は110cmであり、イスカンデルMの直径95cmより大きいという点です。

One distinction relates to the tail sections: the North Korean missile’s tail section has a diameter of 110 cm, while the Iskander’s is smaller at around 95 cm.

和訳:違いの一つは尾部に関連する:北朝鮮のミサイルの尾部の直径は110cmだが、イスカンデルはそれより小さく約95cm。

 1月6日にハルキウ地方検察庁のドミトロ・チュベンコ報道官は発見されたミサイルについて「イスカンデルよりも直径10mmだけ大きい」と報道陣にコメントしていましたが(関連記事)、これは間違いで、実際に正確に計測された直径はイスカンデルよりも15cm大きかったことになります。

 この直径110cmという数字は、ドイツの研究者ノルベルト・ブルッヘ(Norbert Brügge)氏がKN-23について事前にGLBM-2として推定していた数字と一致しています。これは「北極星1」潜水艦発射弾道ミサイルの固体燃料ロケットモーターとKN-23のものは直径が同一という分析です。以前からブルッヘ氏はKN-23を直径110cm・全長8.7mと予想しており、直径については見事に当てていたことになります。

発見された朝鮮語の文字

 紛争兵器研究所(CAR)が北朝鮮製のミサイルと判定した材料は直径の他に4項目があります。

  1. 特徴的なジェットベーンのアクチュエータ
  2. 点火装置周りのボルトのパターン(ロケットモーターケースの天板)
  3. ミサイルの気圧計の一つに朝鮮語の文字「ㅈ」
  4. 北朝鮮の「2月11日工場」を指すと思われる数字「112」

 1と2については筆者も1月6日の記事で指摘していた点ですが、3と4はCARが現地調査で発見した新たな事実です。「2月11日工場」は北朝鮮の咸興南道にある龍城機械連合企業所の工場名で、「112」が2月11日工場を指すと考えたのは日付の表示形式が日/月/年の順番になるイギリス的な発想だと思われますが、しかし北朝鮮の日付けの表示形式は年/月/日の順番です。「112」が2月11日工場を指すかどうかはCARも可能性があるという表現に止まっています。

 基本的には直径がイスカンデルMより大きいこと、ジェットベーンの部品の形状の違い、イスカンデル用デコイ弾9B899の放出孔が無いこと、ロケットモーターケースの底板とノズルの構造(ボルトの位置がイスカンデルと全く異なる)、ロケットモーターケースの天板の構造(ボルトの位置および数の20個がKN-23と一致)といった形状的な特徴で、北朝鮮製KN-23であることはほぼ確定したと見做されます。

 なおKN-24はKN-23と操舵翼およびジェットベーンの部品が同一だろうと推定されます。固体燃料ロケットモーターも同系統の直径が同じ物である可能性が高く(ただし長さが異なっている)、着弾によってミサイル外殻が飛散してしまった後では、現在までの情報では残骸の部品からではKN-23とKN-24の見分けが付きません。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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