4月29日、ウクライナのオデーサがロシア軍の弾道ミサイル攻撃を受けて民間人が5人死亡し30人以上が負傷しました（追記：死亡者は6人に増加）。攻撃はイスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾型によるもので、多数の子弾が空中炸裂する様子が監視カメラで捉えられています。

※元動画はウクライナ検事総長室の公式テレグラム投稿より。出典：Офіс Генерального прокурора

　イスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾型に内蔵されている9N730子弾には近接信管9E156「ゾーント」が搭載されており、動画の空中炸裂の様子は特徴が合致しています。これは9N730子弾の炸裂の様子としては公開されている中で2例目の報告で、ウクライナ側からの撮影は初めてです。1例目は2024年3月13日にロシア国防省が公開したもので、この時は戦場での使用例で偵察ドローンからの映像でした。

関連：ロシア軍イスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾頭型の攻撃の様子が初めて動画で確認（2024年3月14日）　※9N730子弾の解説

　ロシアとウクライナはクラスター弾を規制するオスロ条約に参加していないので、野外の戦場での使用は違反行為ではありません。しかし市街地の民間人が多数居る区域でのクラスター弾の使用は広範囲を無差別攻撃したことになるので、ジュネーブ条約など国際人道法への違反行為です。

　ロシア軍は一体なぜ、高価で貴重な弾道ミサイルで戦術的な意味が全く無い都市への無差別攻撃を行ったのでしょうか？　被害は民間人と民間所有物だけに生じていますが、国際人道法に違反する上に、生産が捗らず在庫の余裕が少ないイスカンデルMを1発消耗するに見合った攻撃にはとても思えません。

Замок Ківалова （キヴァロフの城）

Замок Гаррі Поттера （ハリー・ポッターの城）

　オデーサの地元でこう呼ばれている城のような建築物が今回のロシア軍の弾道ミサイル攻撃で燃えています。所有者の元議員キヴァロフ氏も負傷、同氏は以前は親ロシア派として知られていました。2022年のロシア侵攻以後は親ロシア的な活動はしていませんが、彼の城がロシアの攻撃で燃えてしまったのは皮肉なことになっています。