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金正恩が国家宇宙開発局を現地指導、「偵察衛星」による撮影画像を新たに公開。打ち上げが間近か

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮KCNAより「金正恩が国家宇宙開発局を現地視察」

 3月10日、北朝鮮は「敬愛する金正恩同志が国家宇宙開発局を現地指導された」と発表しました。説明文には現地指導の日付けが記されていませんでしたが、同時に公開された写真から2022年2月27日という日付けが書かれているのがうっすらと分かります。

  • 高度600km、距離300km 偵察衛星(2022年2月27日)
  • 高度550km、距離300km 偵察衛星(2022年3月05日)

 北朝鮮は最近2回のミサイル発射を「偵察衛星の開発試験」という名目で行っています。どちらも準中距離級の弾道ミサイルのロフテッド軌道です。(これは衛星軌道には乗りません)

 2月27日の偵察衛星の試験は翌日2月28日に「地球を遠くから記念撮影」した写真が発表されたのみで、偵察衛星の開発試験とは疑わしいものでしたが、実際にはちゃんとした地表の撮影を行っていた試験だったことが新たに判明しました。ただし発表写真はわざとボカシが入っているようで、情報が一部秘匿されています。

北朝鮮KCNAより「金正恩が国家宇宙開発局を現地視察」
北朝鮮KCNAより「金正恩が国家宇宙開発局を現地視察」

北朝鮮KCNAより「金正恩が国家宇宙開発局を現地視察」
北朝鮮KCNAより「金正恩が国家宇宙開発局を現地視察」

 地表の映像が撮影されています。偵察衛星としてはまだまだの解像度ですが、確かに偵察衛星と言える物の開発を行っている様子が伝わってきます。あるいは本当の性能は秘匿されたままで、この発表写真は性能の全てではない可能性もあるでしょう。

 2月27日に行った試験で金正恩の現地指導が行われていたにもかかわらず翌日の発表ではそのことを伝えず、3月10日になって改めて発表するというのは異例です。どのような意図があるのかは現段階では分かりません。あるいは現地指導は2月27日に実施されたわけではなく、別の日に2月27日の試験内容を金正恩に説明していた様子というだけなのかもしれません。

 なお北朝鮮の3月10日の発表文では「5カ年計画期間内に多量の軍事偵察衛星を太陽同期極軌道に多角配備して、衛星による偵察情報収集能力をしっかり構築する」とありました。太陽同期極軌道なので、南方向に偵察衛星を打ち上げる予定という意味です。

 そしてアメリカ軍のインド太平洋軍は3月7日から黄海での偵察活動を強化していると発表しています。日本海ではなく黄海、つまり南方向の発射を警戒している可能性があります。北朝鮮の衛星打ち上げロケット(それは必然的にICBM級以上の大きさとなる)の発射が近いのかもしれません。

インド太平洋軍は7日、黄海での情報・監視・偵察活動の強化と、同地域の米軍弾道ミサイル防衛部隊の「準備強化」を命じたと説明した。

出典:米軍、黄海で偵察活動を強化 北朝鮮のミサイル発射受け | ロイター通信(2022年3月10日)

 なお北朝鮮は2012年12月12日と2016年2月7日に衛星打ち上げを名目に南方向に大型ロケットを発射しています。

WikipediaよりPhoenix7777氏の作成画像「日本上空を通過した北朝鮮のロケット・ミサイルの弾道」より
WikipediaよりPhoenix7777氏の作成画像「日本上空を通過した北朝鮮のロケット・ミサイルの弾道」より

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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