広告デザインの間違い:竹槍ではなく薙刀の訓練、1941年撮影で太平洋戦争の開戦前

岩波新書公式Twitterより「薙刀の訓練(1941年)」

 5月11日に出版社の宝島社が朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞に同時掲載した広告は、日本政府の新型コロナ対策の不備を訴えるものでした。

宝島社より2021年5月11日広告
宝島社より2021年5月11日広告

 広告のデザインは新型コロナウイルスを赤く塗り日の丸に見立てて、背景は女学生が「竹槍訓練」させられているという構図になっています。

今の日本の状況は、太平洋戦争末期、幼い女子まで竹槍訓練を強いられた、非科学的な戦術に重なり合うと感じる人も多いのではないでしょうか。

出典:宝島社:ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戰えというのか。このままじゃ、政治に殺される。

 しかしこのような意図で用いる写真としては間違ったものでした。女学生の写真はそもそも「竹槍訓練」ではないし、「戦争末期」でもなかったのです。

 この写真は岩波新書の「子どもたちの太平洋戦争/山中恒(著)」でも紹介されている有名なものです。そして写真の説明にはこう書かれています。薙刀の訓練(1941年)

 女学生は半袖半ズボン姿ですから気温が暖かい時期で、つまり太平洋戦争の開戦(1941年12月8日)より数カ月前の時期の撮影だと思われます。戦争末期どころか開戦前で、本土決戦など全く考えられていない時期です。戦闘投入を前提とした市民への軍事教練ではなく、戦意高揚目的の可能性があるにせよ、学校の武道の課目の範疇だったことになります。

 なお薙刀(なぎなた)は突くことも行えますが斬る動作が主体であり、竹槍は突きだけなので、教練内容が異なります。

 宝島社の広告の主旨「コロナウイルスに対抗するには、科学の力(ワクチンや治療薬)が必要です」は正しいものでしょう。しかしこの広告の説明では「マスク、手洗い、三密を避ける」といった公衆衛生での効果が確認されている方法を、役に立たない竹槍扱いしているようにも受け取れてしまいます。其処までの意図は込められていないと思いますが、誤解されかねません。

 SNSでは思い切った表現の広告を評価する声も多くありましたが、一方ではこのような写真そのものの選択ミスを指摘する声もあり、賛否は分かれています。