対艦用二重貫通弾頭「シーバスター弾頭」の目的と構造

防衛装備庁陸上装備研究所広報ビデオより著者キャプチャ「シーバスター弾頭」

 日本自衛隊は対艦ミサイル用の「シーバスター弾頭」を開発中です。これは先駆弾頭(成形炸薬)と主弾頭(徹甲榴弾)で構成される二重貫通弾頭で、対地用のバンカーバスターならば既に他国に開発装備事例がありますが、対艦用では他に例が見当たらず、対艦ミサイル用に量産配備された場合は世界初となります。

 二重貫通弾頭は着弾時に先駆弾頭(成形炸薬)が起爆して形成されるメタルジェットで穴を穿ち、その穴に後続の主弾頭(徹甲榴弾)が押し入ることで貫通します。この構成は速度の遅い亜音速の巡航ミサイル/対艦ミサイルや低高度から投下された爆弾にも貫通力を付与できるのが利点ですが、逆に言えば高速の超音速ミサイルには採用する必要があまりありません。

二重貫通弾頭 対艦用と対地用の違い

防衛装備庁動画よりキャプチャ画像 先進対艦弾頭「シーバスター」カット模型
防衛装備庁動画よりキャプチャ画像 先進対艦弾頭「シーバスター」カット模型

※先駆弾頭は自己鍛造弾ではなく、あくまで成形炸薬弾との事。

アメリカ軍資料より滑空爆弾AGM-154C「JSOW」の内部図解
アメリカ軍資料より滑空爆弾AGM-154C「JSOW」の内部図解

※C型JSOWの二重貫通弾頭はBAEシステムズ製の「BROACH」。

 同じ二重貫通弾頭でも対艦用と対地用では構造が大きく違うことが分かります。対艦用のシーバスターは先駆弾頭となる成形炸薬は小さく薄くライナー(薄い金属製のコーン、爆発後にメタルジェットになる)の角度も浅く、主弾頭は太短くなっています。一方で対地用のJSOWは成形炸薬は大きく長いのでライナーの角度は深く、主弾頭は細長くなっています。

 この構造から対艦用のシーバスター弾頭はあまり深く貫通することを狙っていないことが分かります。船体の奥にある機関部や弾薬庫まで到達するのではなく、装甲化された飛行甲板を確実に貫通して直ぐ下の格納庫で起爆するように信管を調整していると考えられます。つまり狙いは空母や揚陸艦の搭載機や揚陸装備を破壊して無力化することであって、撃沈することではありません。

 そもそも船体は数多くの隔壁があり、空間装甲として機能します。成形炸薬が形成するメタルジェットは空間装甲に当たると急速に威力を減少させていくので、複数の隔壁を貫通することが可能な成形炸薬は直径があまりに巨大なものとなります。また逆に貫通させすぎると船体を通り過ぎて海に出てしまい、主弾頭が船体外部で起爆してしまっては意味がありません。その為、成形炸薬を先駆弾頭とした二重貫通弾頭は対艦攻撃用としては本来は相性が悪く対艦ミサイルに採用する国はありませんでした。

 日本が対艦用の二重貫通弾頭を開発するのは「飛行甲板さえ抜けばよい」ので小さな成形炸薬でも十分であり、主弾頭が格納庫まで到達して起爆するだけで構わないという割り切った目的だからなのでしょう。大型の空母は格納庫の上面が装甲化されており、亜音速の対艦ミサイルが低高度からホップアップして上面から突入して来た程度なら耐えてしまう恐れがあります。確実に抜くには若干の補助が必要と試算され、スペースをあまり取らない小さく薄い先駆弾頭が追加されたのだと考えられます。

防衛装備庁陸上装備研究所広報ビデオ令和2年版(8分52秒からシーバスター弾頭の解説CG動画)

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