ロシアのイスカンデル短距離弾道弾をコピーした北朝鮮

参考画像:ロシア軍イスカンデル短距離弾道弾を装填する様子(写真:ロイター/アフロ)

 今年2月8日、北朝鮮では朝鮮人民軍創建日「建軍節」を記念する軍事パレードで新兵器が登場しました。それはロシアの短距離弾道弾「イスカンデル」に酷似した短距離弾道弾で、これまで全く存在が知られておらず試射も確認されておらず、この時に初めて存在が確認されて日米韓の軍事関係者に衝撃を与えています。

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 この北朝鮮の新兵器はロシアのイスカンデル短距離弾道弾のコピーであると考えられる三つの特徴があります。

  1. ミサイルの外観、大きさがイスカンデルとほぼ同じ
  2. 発射車両に2発搭載する方式はイスカンデルと同じ
  3. 2本のリング状のクランプが付いており、イスカンデルと同じ
北朝鮮の新型短距離弾道弾
北朝鮮の新型短距離弾道弾

 イスカンデルと異なるのは発射車両のトラックがおそらく中国製と思われる別の種類に変わっていることくらいで、他はほぼ全て同一の特徴を備えています。特にミサイルに装着されている「2本のリング状のクランプ」は弾道弾では世界的に見てもロシアのイスカンデルにしかない特徴で、北朝鮮はこれを忠実にコピーしています。

 イスカンデルはこの2本のリング状クランプにクレーンの爪を引っ掛けて持ち上げられ、発射機には此処を使って装着されます。そしてリング状クランプが付いたまま発射され、発射直後に爆破ボルトを用いてリング状クランプを吹き飛ばし、ミサイルだけが上昇していきます。これは他に例が無い発射方式です。

 実はイスカンデルは韓国軍もロシアから技術導入して短距離弾道弾「玄武2」を作っています。このことから韓国では一時、玄武2の設計情報が北朝鮮に漏れたのではないかと疑われました。ただし玄武2はリング状クランプを採用せず、箱型発射機に収納してそのまま発射する方式に改められています。この点から北朝鮮は韓国の玄武2の情報をスパイを使って得たのではなく、本家本元のロシアから何らかの手段をもってイスカンデルの情報を得て開発した可能性が高いと考えられます。

 北朝鮮は既にイスカンデルよりも小さく短い射程のロシア製短距離弾道弾「トーチカ」をコピーしたKN-02短距離弾道弾を保有しています。トーチカもイスカンデルも固体燃料を用いており、発射準備に時間が掛からず発射前の撃破が非常に困難となります。どちらも射程は短距離のもので日本まで届く性能ではありませんが、北朝鮮の固体燃料の短距離弾道弾が次々に増えていく事態は韓国軍にとっては非常に頭が痛い問題です。トーチカのコピーが既にあった以上、何時かはイスカンデルのコピーが登場するのは予見されていたことではありますが、実際に登場したことはやはり大きな驚きであり、軍事パレードで新兵器を発表して日米韓を牽制する北朝鮮のやり方は今後とも続くことが予想されます。