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南岸低気圧通過後に「ひな祭り寒気」が南下

饒村曜気象予報士
寒さに凍える家のイメージイラスト(提供:イメージマート)

南岸低気圧の閏日

 2月28日は、前日に北日本から関東に暴風を吹かせた発達した低気圧が日本のはるか東に去り、西~北日本では晴れる所が多くなりました。

 ただ、東シナ海で低気圧が発生するため、九州では次第に雲が広がり、南西諸島は雲の多い天気となっていました。

 閏日である2月29日は、日本の南岸を低気圧が通過するため、北日本の太平洋側で晴れるほかは全国的に雲が多く、西日本では西から次第に雨が降り、雷を伴って激しく降る所もある見込みです(図1)。

図1 予想天気図(左は2月29日9時の予想、右は3月1日9時の予想)
図1 予想天気図(左は2月29日9時の予想、右は3月1日9時の予想)

 このため、東日本は雲が広がり、夜には山沿いや山地では雪、平地では雨や雪が降る見込みです。また、南西諸島は、雲が広がりやすく、所により雨が降るでしょう。

 南岸低気圧というと、関東地方の平野部で雪が降るかどうかが大きな話題となります。

 少しの雪でも積もると交通機関が混乱し、大きな被害は発生するのですが、雨の場合は、いくら冷たくても被害はほとんど発生しないからです。

 しかも、地表面付近の温度と湿度が少し違うだけで、雨になったり雪になったりするので予報が難しく、気象予報士泣かせの事例であるからです。

 今のところ、降り始めから雪となるのは関東北部や甲信地方で、関東南部の平野部は雨の予想となっています(図2)。

図2 雨雪判別予想(3月1日3時の予想)
図2 雨雪判別予想(3月1日3時の予想)

 関東南部は、その後も雨として降る予想ですが、寒気が少し強ければ雪の範囲が広がりますので、最新の予報で確認が必要です。

「ひな祭り寒気」が南下

 南岸低気圧は、発達しながら日本の東へ進むため、東日本では3月1日午前にかけて風が強まる見込みです。

 その後、上空に「ひな祭り寒気」が流れ込むため、日本海側を中心に荒れた天気となる見込みです。

 寒気の強さの目安となる、上空5500メートルの気温を見ると、雪の目安となる氷点下30度以下が関東北部から山陰地方まで南下し、大雪の目安となる氷点下36度が東北北部まで南下する見込みです(図3)。

図3 上空約5500メートルの気温分布予想(3月3日未明)
図3 上空約5500メートルの気温分布予想(3月3日未明)

 さらに、北海道上空では氷点下42度以下という真冬でもめったに出現しない強い寒気です。

 北日本や山陰から北陸では、平地でも積雪による影響が出る可能性がありますので注意が必要です。

今冬の札幌の気象

 今冬の札幌の初雪は、平年(11月1日)より10日遅い、令和5年(2023年)11月11日でした。

 しかし、初雪が降ったあとは、雪があまり降らず、札幌市では、令和6年(2024年)の年始に、「札幌市内だけでは、『さっぽろ雪まつり』に必要な雪の量を確保できない」 という懸念から、比較的積雪が多い美唄市などと雪確保のための調整を進めていました。

 ですが、1月中旬以降の降雪で、4年前のような雪不足の懸念はさり、その後は、雪像作りが順調に進んでいます(図4)。

図4 札幌の平年の積算降雪量と今冬の積算降雪量
図4 札幌の平年の積算降雪量と今冬の積算降雪量

 『さっぽろ雪まつり』初日の2月4日は、弱い冬型の気圧配置となり、風が弱くて気温が上がらないという、雪まつり日和でした。

 その後も、ほぼ雪まつり日和だったのですが、最終日の2月11日は、石狩湾で低気圧が発生し、大雪が降って交通機関に影響がでたものの、雪像が壊れることもなく、無事に雪まつりが終わっています。

 そして、その後の降雪で、累計降雪量は平年並に近づいています。

 札幌の最高気温と最低気温の推移を見ると、12月中旬〜2月上旬は、平年値を挟んで上下していました(図5)。

図5 札幌の最高気温と最低気温の推移(令和5年(2023年)11月1日~令和6年(2024年)3月15日、2月29日以降はウェザーマップの予報)
図5 札幌の最高気温と最低気温の推移(令和5年(2023年)11月1日~令和6年(2024年)3月15日、2月29日以降はウェザーマップの予報)

 しかし、2月19日に最高気温13.9度という2月の札幌としては記録的な暑さを観測するなど、2月中旬以降は気温変化が大きくなっています。

 ひな祭り寒気の南下により、最高気温、最低気温ともに平年値を下回りますが、その後は徐々に高くなる平年値より、さらに高いという日が続く見込みです。

 ひな祭り寒気が、今冬最後の強い寒気となるかもしれません。 

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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