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低気圧通過で春一番 暖気が入って東北と沖縄は5月上旬の気温も、低気圧通過後は寒気南下

饒村曜気象予報士
大きな移動性高気圧の通過時の地上天気図と衛星画像(令和6年2月14日12時)

日本海で前線が顕在化し低気圧が発生

 令和6年(2024年)2月14日~15日は、大きな移動性高気圧が通過し、日本海では前線が顕在化する見込みです。このため、西日本から次第に湿った空気が流れ込みやすくなり、九州では14日午後から所により雨が降り始め、雨域は次第に東へ広がっています(タイトル画像)。

 2月15日は、日本海の前線上で発生した低気圧が発達しながら通過するため、西日本や東海北陸では雨の降る所が多く、雷を伴って激しく降る所もあるでしょう(図1)。

図1 予想天気図(左は2月15日9時、右は16日9時の予想)
図1 予想天気図(左は2月15日9時、右は16日9時の予想)

 北日本では雲が広 がりやすく、雨や雪の降る所がある見込みです。その他の地域は概ね晴れますが、所によりにわか雨がありそうです。西日本から東日本の太平洋側では、落雷や竜巻などの激しい突風、降ひょう、急な強い雨に注意してください。

 立春後にはじめて日本海で低気圧が発達し、強い南風が吹いて気温が上昇することを春一番といいますが、今回の日本海で発生・発達する低気圧は陸地に近づいてから発達するため、8メートル以上の強い南風が吹いて春一番になる可能性があるのは関東地方だけと思われます。

【追記(2月15日11時50分)】

 春一番の可能性があるのは関東地方だけとと思われますとの記事を書きましたが、新潟地方気象台は、2月15日昼前に、北陸地方で春一番が吹いたと発表しました。このあと、関東地方でも南風が強まれば、春一番となる可能性があります。

【追記(2月15日14時00分)】

 気象庁では、2月15日昼過ぎに関東地方で春一番が吹いたと発表しました。

 東京で気温が20度を超え、13時33分に風速が8.1メートルと基準の8メートルを超えたからです。

【追記(2月15日16時00分)】

 高松地方気象台は、2月15日夕方に四国地方で春一番が吹いたと発表しました。

 徳島市で8.3メートル、徳島県阿南市蒲生田で10.7メートルの強い風を観測したためと思われます。

 春一番の基準は地方により異なりますが、立春(今年は2月4日)から春分(今年は3月20日)までの間に日本海で低気圧が発達し、南寄りの風が強く吹いて気温が上昇することは目安です(表)。

表 「春一番」を発表する目安となる定義
表 「春一番」を発表する目安となる定義

 なお、北日本と沖縄は春一番が吹きませんので、発表基準はありません。

 このため、仙台で低気圧に向かって強い風が吹き、暖気が入って気温が上昇しても春一番の発表はありません。

 とはいえ、暖気が入って気温が上昇し、最高気温は全国的に平年より高くなり、大幅に高くなる所もある見込みであることには変わりがありません。

東北と沖縄は5月上旬の気温

 各地の天気予報をみると、関東と沖縄を除いてほぼ全国で傘マーク(雨)です。また、北海道は雪だるまマーク(雪)となっています(図2)。

図2  全国の天気(2月15日の予報)
図2  全国の天気(2月15日の予報)

 札幌の最高気温3度は3月上旬ですが、仙台の19度は5月上旬、東京の20度は4月中旬の気温です。

 さらに、大阪の18度は4月上旬、福岡の21度は4月下旬、那覇の26度(最高気温が25度以上なので夏日)は、5月上旬の気温です。

 初夏の陽気ですが、低気圧通過後に寒気が入って気温が急降下するという現象は、春一番と同じです。一日の気温差が大きくなりますので、15日朝のお出かけの時、遅い帰宅を予定されているかたは、服装に注意してください。

今冬の冬日と真冬日の推移

 令和5年(2023年)12月22日(冬至)の頃に西日本を中心に南下してきた寒波(冬至寒波)では、福岡では最高気温が12月21日に3.7度、22日に4.3度と、平年の最低気温をも下回る厳しい寒さでした。

 12月22日に全国で最高気温が0度を下回った真冬日を観測したのは264地点(気温を観測している全国914地点の約29パーセント)、最低気温が0度を下回った冬日は774地点(約85パーセント)もありました(図3)。

図3 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年12月1日~2024年2月17日、2月15日以降は予想)
図3 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年12月1日~2024年2月17日、2月15日以降は予想)

 1月中旬や、1月下旬にも寒波が南下してきましたが、冬至寒波に比べるとが、冬日や真冬日のピークが小さく、冬至寒波が今冬一番の寒波ということができるでしょう。

 2月に入ると、真冬日を観測地点数が200地点を超える日があり、北日本は厳しい寒さが続いていますが、冬日を観測する地点は600地点を切っており、東日本から西日本の寒さが少し和らいできたことを示しています。

 また、沖縄地方を中心に、最高気温が25度以上の夏日が観測されるようになってきました。

 そして、2月15日は真冬日の観測するのが11地点(約1パーセント)、冬日を観測するのが172地点(約19パーセント)とこれまでとは激減する見込みです。

一方、沖縄と鹿児島の17地点(約2パーセント)で夏日となる見込みです。

 しかし、16日の真冬日は160地点(約18パーセント)、冬日は283地点(約31パーセント)、17日の真冬日は60地点(約7パーセント)、冬日は638地点(約70パーセント)と再び冬に逆戻りです。

 春は一気に暖かくなるのではなく、三歩進んで二歩戻るというように、寒暖を繰り返しながら暖かくなります。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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