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富士山で初冠雪 冬型の気圧配置が緩んでも屋外のスポーツには適さない今年の三連休

饒村曜気象予報士
河口湖の紅葉と富士山(写真:イメージマート)

秋の気温

 令和5年(2023年)は、9月まで記録的な暑さが続き、各地で暑さに関する記録が相次ぎました(表1)。

表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は10月5日まで)
表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は10月5日まで)

 それも、これまでの高温に関する記録を大幅に更新する記録です。

 しかし、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)の頃には最高気温が30度以上の真夏日や、最高気温が25度以上の夏日を観測した地点数は大きく減り、猛暑日もほとんど観測しなくなりました。

 そして、10月に入ると、真夏日や夏日の観測地点数は大きく減り、夏日を観測した地点数は全国の半分以下になっています。

 10月5日に真夏日を観測したのは23地点(気温を観測している全国914地点の約3パーセント)、夏日を観測したのは199地点(約22パーセント)でした(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~10月5日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~10月5日)

 ようやく記録的な暑さも終わり、秋らしい気温となり、冬の便りも聞かれるようになりました。

初冠雪

 10月5日は、日本海で発生した低気圧が発達しながら北海道を通過し、前線が北日本から東日本を通過しました(図2)。

図2 冬型の地上天気図と日本海に出席した筋状の雲(10月5日9時)
図2 冬型の地上天気図と日本海に出席した筋状の雲(10月5日9時)

 低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、北日本を中心に大気の状態が非常に不安定となり、落雷や竜巻などの激しい突風が発生しました。

 また、上空約5500メートルでは氷点下21度以下の寒気が北日本を通過し、高い山では雪が降るところもありました。

 10月4日には旭川地方気象台が大雪山系旭岳の初冠雪を観測しましたが、5日には甲府地方気象台が富士山の初冠雪を観測しました(表2)。

表2 初冠雪の「平年」と「令和5~6年(2023~2024年)寒候年」
表2 初冠雪の「平年」と「令和5~6年(2023~2024年)寒候年」

 ともに、平年より遅い初冠雪の観測です。

 気象観測において、初冠雪、初雪、初霜、初氷と、「初」がつくものは、最低気温が氷点下となる「冬日」とともに、秋真っ盛りから冬の到来を告げるものです。

 山頂が雪で白くなったのが気象台等から初めて見えることを、その山の初冠雪といい、気象庁では、全国の44の山について初冠雪を観測しています。

 現時点で、稚内地方気象台が利尻岳の初冠雪を観測していませんので、平年より遅い初冠雪が3座ということができます。

 その初冠雪が遅いということは冬の訪れが遅いことを意味していますが、記録的に暑さが1か月近く長引き、秋が遅く始まったことを考えると、初冠雪の遅れが4~5日ということは、秋が短かったといえるでしょう。

 現在南下中の寒気によって、富山県の立山や、岩手県の岩手山などで初冠雪を観測した場合は、平年より早くなり、秋が非常に短かったことになります。

初冠雪や初霜などの目視観測

 初冠雪や初霜などの観測は、観測者が目視で行っていますので、測候所が無人化されると観測がなくなります。

 約100カ所の測候所が無人化され、目視観測は約50カ所の気象台等で行っていますので、初冠雪の観測地点数は、昔の約3分の1、山の数で言うと約半分(44の山)になっているのです。

 観測者がいない山の初雪はわかりにくいので、気象台などから遠くの山を観測し、山頂付近が白く見えるようになったときを初冠雪としていますが、山は方向によって積雪の状態が違い、また雲がはれるときの気象も違いますので、観測する場所によって平年日が異なっています。

 例えば、現在の富士山の初冠雪は、甲府地方気象台のみで行っていますが、昔は、河口湖測候所や三島測候所、御殿場基地事務所でも行っていました。

 昭和55年(1980年)頃の平年値でいえば、甲府が10月5日に対し、三島が10月3日、御殿場が9月28日、河口湖が9月27日と差がありました。

 つまり、富士山から一番遠い甲府地方気象台では、雲によって富士山頂が目視できないことが他の観測所より多いことから、冠雪の確認が遅れることを意味します。

 とはいえ、毎年同じ条件で長年の観測ですので、統計的には気候変動の傾向がでてきます。

 令和3年(2021年)、富士山の甲府地方気象台から見た初冠雪は9月26日ですが、甲府地方気象台は9月7日に初冠雪を発表しており、それを取り消しての再発表でした。

 というのは、富士山頂では9月20日が一年で一番気温の高い日(日平均気温が最高の日)となったため、この日以降で最初に冠雪を観測した日が初冠雪となるからです。

 非常に珍しいケースで、富士山以外ではまずない現象です。

 気象庁以外でも、山頂が白くなったことを独自に観測し、発表している所があります。

 例えば、富士山では、山梨県富士吉田市富士山課が、富士山の「初雪化粧」宣言をしており、令和5年(2023年)は気象庁の発表と同じ10月5日でしたが、気象庁の発表と違うことがあります。

寒気の南下と低気圧の発達

 10月5日以降、北日本上空約5500メートルには、氷点下21度以下の寒気が次々に南下しています(図3)。

図3 上空約5500メートルの気温予報(10月7日朝の予想)
図3 上空約5500メートルの気温予報(10月7日朝の予想)

 氷点下21度という寒気は、真冬の寒気に比べれば、強いものではありませんが、まだ夏の暖気が残っているところに、この寒気の南下です。

 このため低気圧は急速に発達し、西高東低の冬型の気圧配置となって等圧線の間隔が狭くなります(図4)。

図4 予想天気図(左は10月6日9時、右は10月7日9時の予想)
図4 予想天気図(左は10月6日9時、右は10月7日9時の予想)

 北日本の10月6日は、非常に強い風が吹き、海上は大しけやしけとなる所がありますので、暴風や高波に警戒してください。

 また、大雨にも警戒してください。

 気象庁は早期注意情報を発表し、5日先までに警報級の現象がおきる可能性を、「高」「中」の2段階で示しています。

 これによると、10月6日朝~夜遅くに大雨警報が発表する可能性は、青森県津軽地方と秋田県で「高」、北日本の日本海側と新潟県で「中」となっています(図5)。

図5 大雨に関する早期注意情報(10月6日朝~夜遅く)
図5 大雨に関する早期注意情報(10月6日朝~夜遅く)

 ただ、冬型の気圧配置は長続きせず、三連休初日の10月7日の土曜日には冬型の気圧配置はゆるんできます。

 このため、北日本の天気は回復してきますが、東シナ海では停滞前線が顕在化してきますので、屋外スポーツに適した三連休にはならない見込みです。

スポーツの日(10月9日)の天気

 10月8日の日曜日には、台風14号が熱帯低気圧に変わり、停滞前線上に低気圧が発生する見込みで、早期注意情報では、鹿児島・宮崎・熊本の各県で「中」となっています(図6)。

図6 大雨に関する早期注意情報(10月8日)
図6 大雨に関する早期注意情報(10月8日)

 ただ、台風14号から変わった熱帯低気圧も持ち込んだ水蒸気や、南海上から北上している暖湿気によって、停滞前線上に発生する低気圧の動向が大きく変わります。

 現時点の週間天気予報では、三連休の最終日、10月9日のスポーツの日は、西日本から東北まで雨となっており、特に、東京と名古屋は、信頼度が一番高いAで雨が降る予報です(図7)。

図7 スポーツの日(10月9日)の天気予報(天気記号の下の数字は降水確率、右の数字は最高気温と最低気温で、信頼度はA~Cの3段階)
図7 スポーツの日(10月9日)の天気予報(天気記号の下の数字は降水確率、右の数字は最高気温と最低気温で、信頼度はA~Cの3段階)

 スポーツの日(10月9日)の雨量については、不確実性が高く、現時点の予報より多くなる可能性もあります。

 最新の気象情報の入手に努めてください。

図1、図3、図5、図6、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページ。

表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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