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暑さも9月末まで 9月2個目として発生した台風14号が先島諸島に接近

饒村曜気象予報士
中心の南東側と東側に雨雲を持つ発生したばかりの台風14号

暑さも彼岸までではなく9月末まで

 暦の上では、秋分の前が白露、後が寒露で、ほとんどの年は秋分の日を過ぎると冬の気配が出てきます。

 「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があります。

 厳しい暑さも彼岸の頃には和らぐという意味ですが、記録的な猛暑となった今年、令和5年(2023年)は、彼岸の入りとなった9月20日でも厳しい暑さが続いていました。

 しかし、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)の頃には真夏日や夏日を観測した地点数は大きく減り、9月22日以降は最高気温が35度以上の猛暑日は観測していません。

 しかし、今年は、「暑さも彼岸の中日まで」とはなりませんでした。

 彼岸明け(9月26日)後に再び厳しい残暑になったからです。

 9月28日には、静岡市などの4地点で、最高気温が35度以上という猛暑日を観測しました。

 9月30日に最高気温が30度以上の真夏日を観測したのは224地点(気温を観測している全国914地点の約25パーセント)、夏日を観測したのは576地点(約63パーセント)もありました(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(6月1日~9月30日は実況、10月1日~3日は予想)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(6月1日~9月30日は実況、10月1日~3日は予想)

 しかし、さすがに10月に入ると事情が変わってきます。

 10月1日は日本列島を前線を伴った低気圧が通過するため、近畿〜北日本では雲が広がり、雨の所が多いでしょう。雷を伴った激しい雨の所もある予想です(図2)。

図2 予想天気図(10月1日9時の予想)
図2 予想天気図(10月1日9時の予想)

 南西諸島はにわか雨がありますが、その他の地域は概ね晴れるでしょう。

 気温は、全国的に平年並みか高い見込みですが、季節が進み、平年値が低くなっていますので、気温が平年より高くなっても、真夏日は50地点程度(約5パーセント程度)とかなり減ってくる見込みです。

 今年の記録的な暑さも、9月末までで終わりのようです。

台風14号の発生

 9月30日3時に、フィリピンの東で台風14号が発生しました。

 平年値から見ると、9月末までの台風発生数は、18個から19個ですので、令和5年(2023年)の14個というのは、かなり少ない発生数といえます(表)。

表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)
表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)

 特に、9月の台風発生数は2個と、記録的な少なさです。

 台風の統計を開始した昭和26年(1951年)から去年、令和4年(2022年)までの72年間で、9月に発生した台風の平均は4.9個です(図3)。

図3 9月の台風発生数(昭和26年(1951年)~令和4年(2022年))
図3 9月の台風発生数(昭和26年(1951年)~令和4年(2022年))

 平年値は、平成2年(1990年)から令和2年(2020年)までの平均値ですから、近年は若干増えているということもできますが、過去最少発生数は昭和58年(1983年)などの2個です。

 つまり、令和5年(2023年)9月の台風発生数は、統計開始以来の最少記録2個のタイ記録だったわけです。

台風14号の進路予報

 台風14号は、10月1日0時現在、フィリピンの東にあって、時速30キロで西へ進んでいます(図4)。

図4 台風14号の進路予報と海面水温(10月1日0時)
図4 台風14号の進路予報と海面水温(10月1日0時)

 台風が発達する目安の海面水温が27度といわれていますが、台風14号は、これよりも高い30度位の海域を進む予報です。

 このため、台風の中心付近に発達した積乱雲がなく、中心の南東側と東側に雨雲を持つという、あまり発達していない台風ですが、次第に雲がまとまってくる見込みです(タイトル画像)。

 そして、まもなく暴風域を持つようになり、3日には強い台風に、4日には非常に強い台風となって沖縄県先島諸島に接近する予報となっています。

 台風14号が先島諸島に接近する頃、日本列島に秋雨前線が停滞する可能性があり、台風14号の影響で活発化する恐れがあります。

 台風から離れた地方でも、今後の台風情報や気象情報に注意してください。

 9月に台風が少なかったといっても、過去には、大きな災害が発生した10月の台風は少なくありません。

 10月も台風シーズンですので、しばらくは、台風の動向に注意をしてください。

タイトル画像、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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