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東京都心89回目の真夏日と熱中症警戒アラート 9月28日は彼岸明け後の猛暑日のところも

饒村曜気象予報士
予想天気図(9月28日9時の予想)と暖湿気流入

暑さ寒さも彼岸までではなかった

 暦の上では、秋分の前が白露、後が寒露で、ほとんどの年は秋分の日を過ぎると冬の気配が出てきます。

 「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があります。

 厳しい暑さ寒さも彼岸の頃には和らぐという意味ですが、記録的な猛暑となった今年、令和5年(2023年)は、彼岸の入りとなった9月20日でも厳しい暑さが続いていました。

 しかし、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)の頃には最高が30度以上の真夏日や最高気温が25度以上の夏日を観測した地点数は大きく減り、9月22日以降は最高気温が35度以上の猛暑日は観測していません。

 しかし、今年は、「暑さも彼岸の中日まで」とはなりませんでした。

 彼岸明け(9月26日)後に再び厳しい残暑になったからです。

 9月27日に全国で一番高い気温を観測したのは静岡県・天竜の33.6度で、猛暑日を観測したところはありませんでした。

 しかし、真夏日を観測したのは275地点(気温を観測している全国914地点の約30パーセント)、夏日を観測したのは622地点(約68パーセント)もありました(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月27日は実況、9月28~30日は予報)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月27日は実況、9月28~30日は予報)

 9月28日は、日本海で低気圧が発達し、南からの暖かくて湿った空気の流入が強まる見込みです(タイトル画像)。

 このため、東日本の日本海側や北日本では雲が多く、広い範囲で雨が降るでしょう。雷を伴った激しい雨の降るところもある見込みです。

 しかし、西~東日本の太平洋側では概ね晴れて気温が上昇し、山梨県や静岡県では一週間ぶりに猛暑日となるところが出てきそうです(図2)。

図2 予想最高気温の分布(9月28日の予想)
図2 予想最高気温の分布(9月28日の予想)

 また、東京都心でも猛暑日に迫る高温になりそうです。

 ただ、低気圧からの温暖前線がかかる北日本では、平年並みか平年より高い気温ですが、もともとの平年値が高くありませんので、全国の真夏日や夏日の増加にはむすびつきません。

 各地の天気予報をみると、今週は、東日本の太平洋側から西日本では真夏日の予報となっており、真夏日や夏日の観測地点数は増える見込みです(図3)。

図3 各地の天気予報(9月28日~10月4日は気象庁、10月5~7日はウェザーマップの予報で、数字はともに最高気温)
図3 各地の天気予報(9月28日~10月4日は気象庁、10月5~7日はウェザーマップの予報で、数字はともに最高気温)

 ただ、来週になると、最高気温が30度に届かない日が出始め、ようやく暑さが一服しそうです。

東京の暑さの記録

 東京の最高気温は、6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、7月10日に36.5度を観測し、今年初の猛暑日となり、猛暑日を観測したのは22日に及びました(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温の推移(9月28日〜10月4日は気象庁、10月5〜13日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温の推移(9月28日〜10月4日は気象庁、10月5〜13日はウェザーマップの予報)

 これまでの東京の猛暑日の年間日数は、昨年、令和4年(2022年)の16日が最多ですので、これを大幅に更新しました。

 最高気温の予報からみて、これ以上増えないと思われますので、これまでの記録より6日も多い22日という最多記録になりそうです(表1)。

表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は9月27日まで)
表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は9月27日まで)

 また、今年の最高気温は7月26日の37.7度ですが、最高気温が平年値より高い状態は、台風13号が接近して雨となった9月8日に25.2度を観測するまで続きました。

 そして、彼岸の中日(秋分の日)である9月23日も最高気温が24.3度と平年を下回りましたが、その後は再び平年より高くなり、今年の真夏日日数は、9月27日までで89日となり、これまでの記録である平成22年(2010年)の71日を大幅に更新中です。

 そして、最高気温の予報からみて、あと3日程度は増えると思われます。 

 さらに、熱帯夜日数(最低気温が25度以上の日を熱帯夜の日として集計した日数)についても57日となり、最高気温の予報からみて、これ以上増えないと思われますが、これまでの記録である平成22年(2010年)の56日を抜いて記録更新となりました。

 今年の東京は、過去に例がない暑い夏になりました。

今年の熱中症警戒アラート

 熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係していることから、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を、全国58地域(都府県毎、ただし北海道と鹿児島県、沖縄県は細分)に対して発表しています。

 熱中症警戒アラートの発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表されます。

 今年、令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートは、熱中症が問題となった昨年、令和4年(2022年)の889地域を、341地域(約38パーセント)も上回っています(図5)。

図5 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))
図5 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))

 8月5日には全国の41地域(全58地域の約71パーセント)で熱中症警戒アラートが発表となりました。

 ただ、9月に入ると熱中症警戒アラートの累計発表地域数の増え方が鈍ってきており、9月23日以降は熱中症警戒アラートが発表となっていません。

 彼岸後も暑い日が続いていますが、湿度が低くなってきたこともあり、熱中症警戒アラートを発表する危険な暑さではなくなってきたのです。

 今年発表された熱中症警戒アラートを、発表地域別にみると、新潟と長崎が42日と最多で、次いで鹿児島(奄美地方を除く)の41日、熊本の40日と続きます(図6)。

図6 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表日数
図6 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表日数

 各地とも多かったのですが、特に新潟の多さが目立ちます。

 それだけ、今年の新潟は厳しい暑さだったのです。

 なお、東京は26日、大阪は19日でしたので、東京は大阪より危険な暑さだったのです。

 また、発表回数が少なかったのは、北海道と標高の高い栃木・岐阜・奈良、海に囲まれた沖縄県の宮古島地方と大東島地方です。

 ただ、北海道が少ないといっても、もともと北海道は猛暑とは無縁の地方で、1日でもあること自体が異常です(表2)。

表2 熱中症警戒アラートの地域別発表日数
表2 熱中症警戒アラートの地域別発表日数

 8月25日は、北海道のすべての地方で熱中症警戒アラートが発表となりましたが、この日は、全国で一番暑いのが北海道という、考えにくいことがおきていました。

 今年は彼岸の中日(秋分の日)後も残暑が続いていますが、来週は10月になります。

 暦の上では10月8日が寒露で、その次が霜降と、暦の上ではどんどん冬に近づいています。そして、実際の天気も、遅れていた秋がようやく到来しそうです。

タイトル画像の出典:ウィザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5、図6、表2の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

表1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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