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秋雨前線の南下で秋の気配も週半ばは再び残暑 日本の南の海はまだ夏

饒村曜気象予報士
秋雨前線が南下し移動性高気圧に覆われる地上天気図(9月24日9時)

暑さ寒さも彼岸の中日まで

 「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があります。

 厳しい暑さも彼岸の頃には和らぐという意味ですが、記録的な猛暑となった今年、令和5年(2023年)は、彼岸の入りとなった9月20日でも厳しい暑さが続いていました。

 全国の4割以上で最高気温が30度以上の真夏日を、8割以上で最高気温が25度以上の夏日を観測しました(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月24日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月24日)

 しかし、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)までには、真夏日や夏日を観測した地点数は大きく減り、9月22日以降は最高気温が35度以上の猛暑日は観測していません。

 秋雨前線が日本の南海上に南下し、大陸から移動してくる高気圧に広い範囲が覆われ、カラッとした秋らしい気温になりました。

 9月24日に全国で一番高い気温を観測したのは沖縄県・石垣島の33.7度で、真夏日を観測したのは98地点(気温を観測している全国914地点の約11パーセント)、夏日を観測したのは574地点(約63パーセント)でした。

 熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係していることから、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表していますが、発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」である時で、前日17時と当日5時に発表されます。

 この熱中症警戒アラートは、熱中症が問題となった昨年、令和4年(2022年)の889地域を、すでに341地域(約38パーセント)も上回っています(図2)。

図2 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))
図2 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))

 ただ、最近は熱中症警戒アラートの累計発表地域数の増え方が鈍ってきており、9月23日以降は対象地域なしです。

 そろそろ、熱中症警戒アラートを発表する危険な暑さも終わりと思われます。

再び厳しい残暑の1週間

 週明けの9月25日も、大きな移動性高気圧に覆われ、秋晴れでカラッとした暑さの所が多い見通しです。

 しかし、9月26日ごろからは高気圧のふちを回って、南からの暖かい空気が日本付近に流れ込む見込みです(図3)。

図3 予想天気図(9月26日9時の予想)
図3 予想天気図(9月26日9時の予想)

 西日本や東日本では晴れても蒸し暑く、東京都心の最高気温は再び30度以上の真夏日が予想されています(図4)。

図4 各地の天気予報(9月25日~10月1日は気象庁、10月2~4日はウェザーマップの予報で、数字は予想最高気温)
図4 各地の天気予報(9月25日~10月1日は気象庁、10月2~4日はウェザーマップの予報で、数字は予想最高気温)

 前述の図4のように、真夏日や夏日の観測地点数は増える見込みです。

 週後半には、仙台でも連日の真夏日の予報です。

 ただ、来週になると、晴れても最高気温が30度を超えない観測地点が大幅に増え、全国的に絶好の行楽日和、洗濯日和となる見込みです。

東京の暑さの記録

 東京の最高気温は、6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、7月10日に36.5度を観測し、今年初の猛暑日となり、猛暑日を観測したのは22日に及びました(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(9月25日〜10月1日は気象庁、10月2日〜10日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(9月25日〜10月1日は気象庁、10月2日〜10日はウェザーマップの予報)

 これまでの東京の猛暑日の年間日数は、去年、令和4年(2022年)の16日が最多ですので、これを大幅に更新しました。

 最高気温の予報からみて、これ以上増えないと思われますので、これまでの記録より6日も多い22日という最多記録になりそうです(表1)。

表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は9月24日まで)
表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は9月24日まで)

 また、今年の最高気温は7月26日の37.7度ですが、最高気温が平年値より高い状態は、台風13号が接近して雨となった9月8日に25.2度を観測するまで続きました。

 そして、彼岸の中日(秋分の日)である9月23日も最高気温が24.3度と平年を下回りましたが、その後は再び平年より高くなり、今年の真夏日日数は、9月24日までで88日となり、これまでの記録である平成22年(2010年)の71日を大幅に更新中です。

 そして、最高気温の予報からみて、あと4日程度は増えると思われます。 

 さらに、熱帯夜日数(最低気温が25度以上の日を熱帯夜の日として集計した日数)についても57日となり、最高気温の予報からみて、これ以上増えないと思われますが、これまでの記録である平成22年(2010年)の56日を抜いて記録更新となりました。

日本列島は秋の気配でも南の海はまだ夏

 日本列島は秋の気配でも、日本の南の海は、あちこちに積乱雲の塊が生じ、渦を巻いているものもあり、まだ夏の様相です(図6)。

図6 気象衛星から見た南海上の雲の塊(9月24日13時30分)
図6 気象衛星から見た南海上の雲の塊(9月24日13時30分)

 このうち、南シナ海にある雲の渦は、今後、熱帯低気圧に変わる見込みです。台風にまで発達するかどうか現時点ではわかりませんが、仮に台風となっても、日本への直接の影響はないと思われます。

 フィリピンの東海上からマリアナ近海、小笠原諸島近海にある積乱雲の塊があります。

 地上天気図では、前述の図3で示したように、日本の南海上には大きな低圧部(周囲より気圧が低いものの、どこが中心かはっきりしない領域)があります。

 この低圧部のどこかで渦がはっきりしてきたら、その場所で熱帯低気圧が発生します。

 まだ、熱帯低気圧にもなっていない段階ですので、台風になるかどうか不明ですが、この海域で台風が発生した場合は、日本に影響する恐れがあります。

 現在、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなるというエルニーニョ現象が発生しています。

 エルニーニョ現象が発生すると、赤道域で積乱雲の発生場所が変わり、台風の性質などが変わり、地球規模で異常気象が発生するとされています。

 気象庁がまとめたエルニーニョ現象発生時の台風の特徴:

・7〜9月の台風の発生数は平常時より少ない傾向がある

・台風の発生位置が、平常時に比べて南東にずれる傾向がある(夏は南に、秋は南東にずれる傾向がある)

・夏、最も発達した時の台風の中心気圧が平常時よりも低い傾向がある

・秋、台風の発生から消滅までの寿命が長くなる傾向がある

 平年値から見ると、9月末までの台風発生数は、18個から19個ですので、現時点の台風発生数13個は、かなり少ない発生数といえますので、エルニーニョ現象発生時の台風の特徴です(表2)。

表2 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値
表2 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値

 しかし、発生数は少なくなるといっても、最も発達した時の台風の中心気圧が平常時より低くなるとか、台風の発生から消滅までの期間が長くなるという、警戒が必要な台風が多いという傾向もありますので、油断できません。

 日本の南海上の積乱雲の塊の今後の動向に注意が必要です。

タイトル画像、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図3、表2の出典:気象庁ホームページ。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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