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梅雨前線停滞で秋田で記録的大雨 東日本太平洋側から西日本で湿度が高い熱中症になりやすい暑さ

饒村曜気象予報士
予想天気図(7月16日9時の予想)

東北地方の日本海側で大雨

 令和5年(2023年)7月15日は、強まった太平洋高気圧によって梅雨前線が東北北部まで押し上げられ、そこでほぼ停滞しました。

 このため、秋田県秋田市・仁別で24時間降水量が330.5ミリとなるなど、秋田県を中心とした東北地方の日本海側で大雨となりました(図1)。

図1 24時間降水量(7月15日0時~24時)
図1 24時間降水量(7月15日0時~24時)

 梅雨前線は、7月16日も東北北部で停滞する見込みです(タイトル画像)。

 このため、16日に大雨が降った東北地方の日本海側に、さらに100ミリ以上の雨が降ると予想されていますので、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください(図2)。

図2 24時間予想降水量(7月17日0時~24時)
図2 24時間予想降水量(7月17日0時~24時)

 特に秋田県では、すでに氾濫が発生している河川があり、また地盤の緩んでいる所がありますので、少しの雨でも警戒をしてください。

東日本の太平洋側から西日本の猛暑

 一方、太平洋高気圧の強まりとともに、東日本の太平洋側から西日本では晴れて気温が高くなったところが多くなっています。

 最高気温が35度以上の猛暑日は19地点(気温を観測している全国915地点の約2パーセント)、最高気温が30度以上の真夏日は429地点(約47パーセント)、最高気温が25度以上の夏日は642地点(約70パーセント)でした(図3)。

図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月15日)
図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日〜7月15日)

 令和5年(2023年)のこれまで最多の猛暑日は7月7日の62地点(約7パーセント)、最多の真夏日は7月11日の574地点(約63パーセント)、最多の夏日は7月10日の884地点(約97パーセント)です。

 7月15日は、これらを、いずれも超えることはできませんでしたが、これは梅雨前線の北側にあたる北海道と東北北部で気温があがらなかったことによります。

 ただ、東北北部に停滞していた梅雨前線が次第に消え、北海道まで暖かい空気が入り、全国的に晴れて、強い日射で気温がかなり高くなる見込みです(図4)。

図4 予想天気図(7月17日9時の予想)
図4 予想天気図(7月17日9時の予想)

 したがって、これから今年最多の猛暑日、今年最多の真夏日、今年最多の夏日を観測するものと思われます。

湿度の高い暑さ

 熱中症は、気温が高いだけでなく、湿度が高いとより起きやすくなります。

 このため、熱中症対策には気温ではなく、湿度も考慮してある「暑さ指数」がつかわれており、気象庁と環境省は共同して暑さ指数が33以上の極めて危険と予想されるときに熱中症警戒アラートを発表しています(前日17時と当日5時に発表)。

 5月から6月に各地で真夏日が観測されましたが、この時は、湿度が低く、熱中症警戒アラートはほとんど発表されていませんでした。

 しかし、7月に入ると、湿度が高い日が増え始め、熱中症警戒アラートが発表されることも多くなっています(表1)。

表1 令和5年(2023年)の東京都心の真夏日と最小湿度(備考の「警戒アラート」は東京都に「熱中症警戒アラート」が発表された日)
表1 令和5年(2023年)の東京都心の真夏日と最小湿度(備考の「警戒アラート」は東京都に「熱中症警戒アラート」が発表された日)

 全国の暑さ指数は、7月16日、17日と、日ごとに高くなってゆく予想です(図5)。

図5 暑さ指数の日最高値の予測(上段:7月16日、下段:7月17日の予測)
図5 暑さ指数の日最高値の予測(上段:7月16日、下段:7月17日の予測)

 このため、熱中症警戒アラートは、7月16日は前日予報で17地方(1都16県)に発表されていますが、暑さ指数の予報から見て、7月17日はもっと多くの地方で発表となると思われます。

【熱中症警戒アラート(7月16日:前日発表)】

(関東甲信) 埼玉 東京 千葉

(東海) 静岡、愛知

(北陸) 富山、石川、福井

(近畿) 兵庫

(中国・四国) 島根、鳥取、徳島

(九州北部) 大分、長崎、熊本

(九州南部) 宮崎、鹿児島(奄美地方を除く)

梅雨明けはいつ?

 太平洋高気圧が強まり、梅雨前線が東北北部まで北上した場合、多くの年は西日本から東日本の太平洋側で梅雨明けとなります。

 しかし、令和5年(2023年)は、現時点で梅雨明けしたのは沖縄地方と鹿児島県奄美地方だけです(表2)。

表2 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け
表2 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け

 気象庁が梅雨明けを発表しない(長い梅雨の中休みと考えている)のは、来週の20日頃と23日以降に全国的に雨の日が予想されているためですが、この予報が変われば、すぐに梅雨明けを発表するのではないかと思います(図6)。

図6 各地の天気予報(7月16日~22日は気象庁、23日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)
図6 各地の天気予報(7月16日~22日は気象庁、23日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)

 ただ、すでに多くの地方で梅雨明けのような天気となり、晴れて気温が上がっています。

 西日本から東日本の太平洋側では晴れの日が続き、ほとんどの日で最高気温が30度以上の真夏日の予想です。

 梅雨明けする、しないにかかわらず、湿度の高い暑さ、熱中症になりやすい危険な暑さとなりますので、適切にエアコンを使うなど、猛暑対策に努めてください

タイトル画像、図1、図2、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4、表2の出典:気象庁ホームページ。

表1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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