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太平洋高気圧の強まりで梅雨明け直前の豪雨は九州北部から北陸、東北北部へ 関東を中心とした猛暑再び

饒村曜気象予報士
予想天気図(7月15日9時の予想)

梅雨末期の豪雨

 「顕著な大雨に関する情報」は線状降水帯が発生したと確認された場合に発表する情報で、「記録的短時間大雨情報」は1時間に100ミリ前後の数年に一度程度しか起こらないような猛烈な雨が観測された場合や解析された場合に発表される情報です。

 ともに、大雨警報が発表されているときに発表されますので、その時の大雨警報は単なる大雨警報ではなく、危険な大雨警報であることを示す情報です。

 単なる「情報」ではなく、事実上の「スーパー警報」です。

 令和5年(2023年)梅雨末期の7月10日から7月13日にかけては、「顕著な大雨に関する情報」と「記録的短時間大雨情報」とが頻繁に発表となりました。

【顕著な大雨に関する情報】

7月10日3時9分  福岡県   

7月10日4時39分 福岡県、佐賀県

7月10日5時9分  福岡県、大分県、佐賀県 

7月10日8時20分 福岡県、大分県、佐賀県

7月10日8時29分 福岡県、大分県

7月12日21時39分 石川県加賀

7月12日22時9分 富山県西部

7月12日22時39分 富山県東部、富山県西部 

【記録的短時間大雨情報】

7月13日7時10分 鳥取県鳥取市気高付近 約90ミリ(解析)

7月13日13時10分 北海道美幌町付近 約100ミリ(解析)

7月13日13時10分 北海道美幌で93ミリ(観測)

7月13日15時0分 富山県魚津市付近 約110ミリ(解析)

7月13日15時0分 富山県魚津市古鹿熊 104ミリ(観測)

 これは、太平洋高気圧が強まって西に張り出し、この太平洋高気圧の縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が北上してきたためで、7月10日は対馬海峡付近で停滞していた梅雨前線に近い九州北部で線状降水帯が発生して大雨となりました。

 7月12日になると、梅雨前線が太平洋高気圧におされて北陸付近まで北上し、北陸で線状降水帯が発生して大雨となりました(図1)。

図1 石川県と富山県で発生した線状降水帯(7月12日22時20分)
図1 石川県と富山県で発生した線状降水帯(7月12日22時20分)

 7月13日は、北上していた暖かくて湿った空気の上空に寒気が入ってきたため、瀧聞が不安定となり、北海道から山陰地方にかけて記録的短時間大雨情報が発表となるほど、局地的に激しい雨となりました。

 太平洋高気圧は、7月14日には一時的に弱まったことで梅雨前線が少し南下しましたが、7月15日は再び強まって梅雨前線は東北北部まで北上する見込みです(タイトル画像)。

東北の大雨

 7月15日は、梅雨前線が東北に東北北部まで北上し、そこで停滞する見込みです。

 このため、強まってきた太平洋高気圧と梅雨前線との間の等圧線が混んでくるため、太平洋高気圧の縁辺をまわって北上している暖湿気流が強まると考えられます。

 東北北部では48時間に200ミリ以上、場合によっては400ミリくらいという東北地方にとっては記録的な大雨の可能性があります(図2)

図2 48時間予想降水量(7月15日6時~17日6時の48時間予想)
図2 48時間予想降水量(7月15日6時~17日6時の48時間予想)

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までに警報を発表する可能性を、「高」「中」の2段階で示しています。

 大雨に関する早期注意情報によると、7月15日(土)朝~夜遅くでは、東北北部に「高」があり、北海道南部から北陸で「中」があります(図3)。

図3 大雨に関する早期注意情報(上段は7月15日朝~夜遅く、下段は7月16日)
図3 大雨に関する早期注意情報(上段は7月15日朝~夜遅く、下段は7月16日)

 また、7月16日(日)も東北北部で「高」となっており、東北北部の日本海側を中心に大雨の可能性があります。

 海の日を含む三連休(7月15~17日)の東北地方は、梅雨末期の大雨に対して警戒が必要です。

 特に、「顕著な大雨に関する情報」や「記録的短時間大雨情報」が発表となった場合は、命を守る行動をとってください。

令和5年(2023年)の梅雨明け

 太平洋高気圧が強まり、梅雨前線が東北北部まで北上した場合、多くの年は西日本から東日本の太平洋側で梅雨明けとなります。

 しかし、令和5年(2023年)は、現時点で梅雨明けしたのは沖縄地方と鹿児島県奄美地方だけです(表)。

表 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け
表 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け

 気象庁が梅雨明けを発表しない(長い梅雨の中休みと考えている)のは、来週に曇りや雨の日が予想されているためですが、この予報が変われば、すぐに梅雨明けを発表するのではないかと思います(図4)。

図4 各地の天気予報(7月15日~21日は気象庁、24日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)
図4 各地の天気予報(7月15日~21日は気象庁、24日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)

 九州南部では7月15日にでも発表になるかもしれませんが、すでに多くの地方で梅雨明けのような天気となり、晴れて気温が上がっています。

 西日本から東日本の太平洋側では晴れの日が続き、最高気温が30度以上の真夏日の予想ですし、7月17日の東京で38度、名古屋で39度と、めったに見られない40度目前の予報となっています。

 梅雨前線の南側に位置する関東から東海の暑さは、湿度の高い暑さとなりますので、熱中症になりやすい危険な暑さに注意が必要です。

 三連休は、一年で一番暑い、真夏の暑さと思って警戒してください。

 暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときに発表となる熱中症警戒アラートの発表件数は、昨年に比べて、今のところ少ないのですが、7月15日には、熊本県・鹿児島(奄美地方を除く)・奄美地方の3地域に対して発表されています(図5)。

図5 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2023年)と令和5年(2023年))
図5 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2023年)と令和5年(2023年))

 そして、今後は、梅雨明けするしないにかかわらず、気温が非常に高い状態が続き、特に7月17日は暑さ指数33以上の「極めて危険」の地点が多くなる見込みですので、熱中症警戒アラートが発表される地域は急増するとと思われます(図6)。

図6 暑さ指数の日最高値の予想(7月17日)
図6 暑さ指数の日最高値の予想(7月17日)

 熱中症警戒アラートが発表となっている地方はもちろん、発表となっていない地方でも、熱中症警戒レベルが「危険」や「厳重警戒」の地点がかなりありますので、多くの地方で熱中症には最大限の警戒が必要な日が続きます。

タイトル画像、図1、図2、図3、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:環境省のホームページをもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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