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今年一番の暑さで湿度の高い猛暑到来 福岡などでは熱中症警戒アラート発表・東京電力管内は電力逼迫

饒村曜気象予報士
猛暑予報(7月7日の最高気温の予想)

日本海を前線を伴った低気圧が通過

 九州付近~東日本の南海上へと、南東にのびていた梅雨前線によって九州を中心に大雨が降りましたが、今度は、前線を伴った低気圧が日本海を通過する見込みです(図1)。

図1 日本海にある前線を伴った低気圧の雲(7月5日12時)
図1 日本海にある前線を伴った低気圧の雲(7月5日12時)

 7月5日は、西日本では雨が降り雷を伴って非常に激しく降った所もありましたが、6日は、西日本は晴れる所が多い見込みです。ただ、九州南部・奄美では所によりにわか雨や雷雨がありそうです。

 また、低気圧が接近・通過する東日本~東北は朝までは雨が降りますが、次第に天気は回復に向かうでしょう。北海道は雨が降り雷を伴って激しく降る所もある見込みです。

 一方、沖縄は概ね晴れるでしょう。

 そして、全国的に気温が上昇し、今年一番の暑さとなる見込みです。

猛暑日と真夏日・夏日

 7月5日に全国で気温が一番高かったのは鹿児島県奄美大島・名瀬の33.9度で、最高気温が35度以上の猛暑日を観測した地点はありませんでした。

 また、最高気温が30度以上という真夏日は84地点(気温を観測している915地点の約9パーセント)、最高気温が25度以上という夏日は、691地点(約76パーセント)でした(図2)。

図2 夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和5年4月1日~7月5日)
図2 夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和5年4月1日~7月5日)

 令和5年(2023年)は、これまで夏日の観測が多かったのは6月28日の838地点(約92パーセント)でした。

 また、真夏日の観測が多かったのは7月2日の416地点(約45パーセント)、猛暑日の観測が多かったのは7月4日の17地点(約2パーセント)でした。

 しかし、7月6日は、日本海の低気圧に伴う前線は、弱まりながら南下し、天気図上からは消えますので、全国的に晴れる所が多くなる見込みで、強い日射で気温が急上昇する見込みです(図3)。

図3 予想天気図(左は7月6日9時、右は7日9時の予想)
図3 予想天気図(左は7月6日9時、右は7日9時の予想)

 最高気温は、名古屋、岐阜、鳥取では36度という猛暑日が予想されています。

 また、全国の猛暑日は85地点程度、真夏日が560地点程度、夏日が850地点程度になると予想されていますので、予想通りなら、いずれも今年最多となります。

 5月17~18日、6月17~18日、6月27~29日、7月2~4日に次ぐ、5回目の暑さということもできますが、前の3回は湿度が比較的低い時の暑さでした。

 しかし、7月2~4日以降の暑さは、湿度が高いときの暑さですので、熱中症にかかりやすい危険な暑さで、暑さ指数は高くなっています。

熱中症警戒アラート

 熱中症対策に使われているのは、昭和32年(1957年)に米国陸軍での訓練の際の熱中症を予防することを目的として提案された「暑さ指数(WBGT:wet-bulb globe temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 具体的には、次の式で表されます。

屋外:「暑さ指数(WBGT)」=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度(気温)

屋内:「暑さ指数(WBGT)」=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

 ここで、感部を布でおおって湿らせた湿球温度計で求めた温度が湿球温度です。

 空気が乾いていればいるほど蒸発熱を奪われて気温(乾球温度計で求めた温度)との差が大きくなります。

 黒球温度は、輻射熱を測るため、黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度センサーを入れた黒球温度計で測る温度です。

 世界的に気温と湿度が高くなっており、日本も例外ではありません。

 そして、最高気温が35度以上の日数の増加より、最高「暑さ指数」が33以上の日数の増加が目立っています。

 環境省と気象庁は、広く情報を知ってもらい、熱中症で救急搬送される人を減らそうと令和2年(2020年)から関東甲信地方で、令和3年(2021年)から全国で始めたのが、「熱中症警戒アラート」で、暑さ指数が33以上(極めて危険)になると予想されたとき、前日17時と当日5時に発表されます。

 発表回数を、前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計すると、令和3年(2021年)は613回、令和4年(2022年)は889回発表となっており、今年、令和5年(2023年)は7月5日までに14回発表となっています(表)。

表 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラート発表状況(7月5日まで)
表 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラート発表状況(7月5日まで)

 そして、7月6日も、福岡県と沖縄県(沖縄本島地方)、沖縄県(八重山地方)の3地域に熱中症警戒アラートが発表となっています(前日17時発表、図4)。

図4 福岡の暑さ指数の予報(7月6日)
図4 福岡の暑さ指数の予報(7月6日)

【追記(7月6日9時)】

 熱中症警戒アラートは、当日5時発表で、三重県、島根県、鹿児島県(奄美地方)、沖縄県(宮古地方)にも追加発表となりました。

 熱中症警戒アラートが発表になったら、身近な場所での「暑さ指数」を確認し、外出はなるべく避け、室内をエアコン等で涼しい環境にして過ごしてください。

 また、気象庁では、熱中症警戒アラートが発表されたときに、特に気をつけていただきたいこととして、次の3点をあげています。

・高齢者は、温度、湿度に対する感覚が弱くなるために、室内でも夜間でも熱中症になることがあります。

・小児は、体温調節機能が十分発達していないために、特に注意が必要です。

・晴れた日は、地面に近いほど気温が高くなるため、車いすの方、幼児等は、より暑い環境になります。

暑さと電力危機

 暑くなってくると、電力使用量が増え、電力危機が起きるのではないかと懸念されています。

 日本は電力会社が10社あり、それぞれの担当地域が決まっていますが、北海道電力、東北電力、東京電力が標準周波数50ヘルツで、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力が60ヘルツで送電をしています(図5)。

図5 日本の商用電源周波数
図5 日本の商用電源周波数

 地質学上、日本はフォッサマグナによって東西に2分されていますが、フォッサマグナの西端が、電気の周波数の地域差の境とほぼ重なっています。

 これは、電気事業が始まった明治時代、関東ではドイツから50ヘルツの発電機を、関西ではアメリカから60ヘルツの発電機を輸入していたことが原因といわれています。フォッサマグナとは関係がなさそうです。

 それが現代まで根付いて、地域による周波数の違いを生みだしており、いまとなっては、どちらかに統一することは不可能になっています。

 そして、猛暑などで電力需要が急増した時に、各電力会社で電気を融通するという話になった時には、静岡県の佐久間などにある周波数変換所で周波数を変換しないと融通できないという不都合が生じています。

 つまり、東京電力は、東北電力は同じ周波数なので容易に融通できますが、北海道電力からは同じ周波数とはいえ、津軽海峡を挟んでの融通ですので簡単には増強できません。また、中部電力等からは、周波数の変換装置の容量分しか融通できません。

 つまり、東京電力管内は、福島第一原子力発電所の事故以来、原子力発電所を1基も稼働できていないことに加え、電力が逼迫しても、他の電力会社から融通しにくいことから、電力逼迫の可能性が高いのです。

 政府は、7月1日から8月31日まで、東京電力管内に対して、夏の節電要請期間としていますが、猛暑対策のクーラー以外、例えば、空き室の照明を落とすなどで節電をお願いします。

 危険な暑さは、7月7日も続きますが、今度は大雨にも警戒が必要です(タイトル画像)。

今週末は九州を中心とした大雨に警戒

 日本列島から一旦は消えた梅雨前線ですが、今週末にかけて東シナ海から西日本に顕在化してきます。

 このため、九州を中心として、再び大雨となる見込みです。

 気象庁は5日先まで、大雨などの警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で示した早期注意情報を発表しています。

 この大雨に関する早期注意情報によると、7月7日は、長崎県を除いた九州北部と南部で「中」、7月8日と9日は、九州北部が「高」、九州南部が「中」となっています(図6)。

図6 大雨に関する早期注意情報(7月7日~7月10日)
図6 大雨に関する早期注意情報(7月7日~7月10日)

 さらに、九州北部は7月10日も「中」です。

 九州地方は、線状降水帯が発生して大雨が降ってから、一週間もたたないうちに再度の大雨です。まだ土の中には水分が残っており、土砂災害が発生しやすい状態が続いていますので、最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図6、表の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図5の出典:筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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