西行の生涯

　平安時代末期、鳥羽上皇に北面の武士として奉仕していた佐藤義清は、和歌と故実に通じた人物として知られていましたが、23歳で出家して西行と名乗り、しばしば諸国を巡る旅にでており、さくらに関する歌も数多く詠んでいます。

　西行の代表的な和歌に、「願わくは　花の下にて　春死なん　そのきさらぎの　もち月のころ」というのがあります。

　如月（きさらぎ）の満月（もちづき）は、旧暦の2月15日ですが、この日はお釈迦様が入滅した日（涅槃会）でもあります。

　熱心に仏教に取り組んでいた西行は、死ぬなら涅槃会の頃にと考えたのでしょう。

　そして、死ぬなら咲いているさくらの花を見ながらと思ったのでしょうが、実際に亡くなった文治6年2月16日には、さくらが咲いていたのではないかと思います。

　西行が73歳で亡くなった文治6年2月16日は、西暦（グレゴリオ暦）になおすと1190年3月30日と、旧暦と新暦に大きな差があります。

　というのは、前年の文治5年は閏4月があって13か月と長かったためです。

　つまり、如月といっても、新暦では3月末であり、西行が亡くなったとされる大阪府河南町の弘川寺では、さくらが咲いている可能性はかなり高いということができるでしょう。

さくらの開花と見頃

　西行が出家したとされるのが、京都市西京区にある勝持寺（しょうじじ）です。

　勝持寺には西行が出家したときに植えた「西行桜」があり、桜の名所となっています。

　また、西行終えんの地として有名な大阪府河南町の弘川寺には、西行の供養のために植えられた山桜が3月下旬から4月下旬にかけて新葉とともに見事な花をさかしています。

　西行には、さくらにまつわる話が各地に残されています。

　ちなみに、今年の場合、3月6日が旧暦の2月15日ですので、如月の満月の頃は、さくらが咲いていなそうです。

　ただ今年は、閏如月があります。この閏如月の15日は、4月5日ですので、さくらの満開後の見ごろの頃となりそうです（図）。

　その西行がなくなった2か月後の4月11日、文治は建久に改元となります。

　そして、その2年後の建久3年（1192年）に源頼朝に対して征夷大将軍の宣下があり、貴族の時代から武士の時代に変わります。

　ウェザーマップが2月23日14時に更新した桜の開花予報では、3月16日に福岡で一番早く開花し、次いで、3月17日の東京、3月19日の熊谷、横浜、名古屋、岐阜、広島、高知、下関となっています。

　開花の1～2週間で満開です。

　寒い寒いと言っているうちに、「さくらの季節」の到来です。

図の出典：ウェザーマップ提供資料に筆者加筆