Yahoo!ニュース

2月までの寒さが嘘のように、3月はさくらの開花が近づく春の暖かさ到来

饒村曜気象予報士
さくら咲く(写真:イメージマート)

冬型の気圧配置から移動性高気圧

 2月26日(日)は、西高東低の冬型の気圧配置となって寒気が南下したことから日本海側の地方では雪となり、晴れている太平洋側も冷たい北風が強く吹きました。

 しかし、この冬型の気圧配置は長く続かず、27日(月)から28日(火)にかけては高気圧に覆われる見込みです(図1)。

図1 予想天気図(2月27日21時の予想)
図1 予想天気図(2月27日21時の予想)

 雪が降り続いていた北陸や北日本も晴れ間が出て気温が上昇し、28日から3月1日(水)には4月中旬並みの所もありそうです。

図2 最高気温の分布予想(2月28日の予想)
図2 最高気温の分布予想(2月28日の予想)

 ただ、朝は晴れて風が弱いことから放射冷却によって気温が低い見込みです。

 このため、日中と朝との気温差は、内陸部を中心に大きくなり、15度以上になるところもある見込みです。

 大きな気温変化によって、体調を崩さないように注意してください。

今冬の真冬日、冬日

 今冬の特徴として、冬型の気圧配置は強さの割には長続きしないということがあげられます。

 令和5年(2023年)1月13日は北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上して4月並みの気温となり、最高気温が25度以上という夏日を観測したのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)もありました。

 しかし、その後、西高東低の冬型の気圧配置が強まり、今冬一番の強い寒気が南下したため、1月25日には真冬日を観測したのが502地点(55パーセント)と、全国の半数以上の地点で、気温が一日中氷点下という、冷凍庫の中の状態でした。

 また、冬日を観測したのが869地点(95パーセント)と、南西諸島以外は全ての観測地点で冬日でした。

 今冬、真冬日、冬日を観測した地点数が一番多かったのは、現時点まででは1月25日です。

 2月に入ると、強い寒気の南下は北日本どまりで、南岸低気圧が短い周期で通過するようになってきました。

 南岸低気圧が通過するときは、暖気が入りますので、真冬日や冬日を観測した地点数が減少し、その後の寒気南下で増加するという変化をします。

 真冬日や冬日の観測地点数は、減少傾向にあったのですが、バレンタインの頃(2月14日頃)に南下してきたバレンタイン寒波によって大きく増え、その後は、再び減少傾向にあります(図3)。

図3 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年2月26日)
図3 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年2月26日)

 2月25日から26日の寒気南下で、真冬日や冬日の観測地点数は増えましたが、今冬一番の寒波や、バレンタイン寒波などには及びません。

 そして、2月27日以降は、ほぼ全国的に暖気が入ってきますので、真冬日や冬日の観測地点数は大きく減ると思われます。

 東京の最高気温と最低気温の推移をみると、1月26日に氷点下3.4度の最低気温が観測されたあと、寒い日と暖かい日が交互にあらわれていましたが、2月27日以降はともに平年より高い日が続く予報となっています(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温の推移(2月27日~3月5日は気象庁、3月6日~14日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温の推移(2月27日~3月5日は気象庁、3月6日~14日はウェザーマップの予報)

 向こう1か月は暖かい空気に覆われやすく、3月に入ると一気に季節が進んで今年のソメイヨシノは平年より早く開花する所が多い見通しです。

気象庁のさくら開花の観測

 気象庁では、昭和30年(1955年)から平成21年(2009年)まで、沖縄・奄美地方を除く全国でさくらの開花予報を行ってきました。

 しかし、民間気象事業者が実力をつけ、気象庁と同等の情報提供を行うようになったことから、平成22年(2010年)以降は、予報をやめ、観測のみを行っています。

 気象庁でいうさくらは、ほとんどの地方はソメイヨシノですが、ソメイヨシノの少ない沖縄ではヒカンザクラ、北海道の一部ではエゾヤマザクラ等です。

 いずれも、各地方に標本木として指定されたさくらの木があり、5〜6輪以上の花が開いた状態になった日がさくらの開花日です。

 また、80%以上花が開いた状態を満開としています。

 ただ、気象庁では、令和3年(2021年)1月に「生物季節観測指針」を改正し、さくらの開花と満開の定義を変えています。

 開花では、「胴咲きによる開花」については、観測者によって扱いがまちまちでしたが、含めないと全国で統一されました。

 また、満開では「同時に咲いている状態である必要はない(散ったさくらも開花しているものとみなす)」という定義が加わったのは、暖かい地方を中心に満開の観測が難しい事例が相次いだからです。

【さくらの開花】

(新しい基準)標本木に5~6輪の花が咲いた日を開花日とする。なお、胴咲き(枝ではなく幹や根から咲く)による開花は、通常の開花とは異なるプロセスによると考えられることから、5~6輪に含めない。

(古い基準)標本木に5~6輪の花が咲いた日を開花日とする。

【さくらの満開】

(新しい基準)咲き揃ったときの約80%以上が咲いた状態(同時に咲いている状態である必要はない)となった日を満開日として観測する。

(古い基準)咲き揃ったときの約80%以上が咲いた状態となった日を満開日として観測する。

 気象庁の有人官署では、構内に植えられている、あるいは近くの公園等に植えられているさくらのうち、特定の木を標本木として開花や満開を観測しています。

 標本木が年をとるなどで、周囲のさくらとの間で差がでるようになると、次の標本木の候補を決め、比較観測をしばらく行ってから新しい標本木に変えています。

 観測値を継続させるためです。

 そして、同じ条件で長期間継続して観測を行っていることから「昨年より〇〇日早い」「平年より〇〇日早い」「全国的にみると東日本が早い」などの比較情報が発表できるのです。

令和5年(2023年)の一番乗りは?

 さくらの開花は、1月中旬頃に沖縄地方・奄美地方のヒカンザクラの開花で始まります。

 ソメイヨシノの開花は3月下旬に九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、東海地方、関東地方、4月10日頃には北陸地方、東北地方南部に達します。

 その後、東北地方北部を北上し、5月中旬に北海道日本海側北部・太平洋側東部まで達します。

 ただ、これは平年の話であり、年によって様相は異なります。

 このため、関東から西の太平洋側の地方では、全国でトップにさくらが咲くのは何処かということが大きな話題になります。

 全国トップといっても、気象庁の有人官署での観測で、1月中旬から咲く沖縄と奄美大島のヒカンザクラを除いての話ですが、全国的に大きなニュースとして取り上げられます。

 さくらの開花予報は社会的関心が高く、ウェザーマップ、ウェザーニューズ、日本気象協会などの民間気象事業者は、ユーザーに合わせた予報を個々に行っています。

 単純に比較はできないのですが、競争原理によって各地のさくら情報が充実しています。

 例えば、ウェザーマップが2月23日14時に更新したさくらの開花予報では、3月16日に福岡で一番早く開花し、次いで、3月17日の東京、3月19日の熊谷、横浜、名古屋、岐阜、広島、高知、下関となっています(図5)。

図5 さくら開花前線(ウェザーマップの2月23日の予想)
図5 さくら開花前線(ウェザーマップの2月23日の予想)

 さくらの開花レースは、地球温暖化の影響で早まっていますが、特に早くなってトップ争いに加わってきたのが都市化の影響も加わっている東京です。

 さくらの開花日は、平成22年(2010年)までの30年の平均に比べ、令和2年(2020年)までの30年の平均は、1~2日ほど早くなっていますが、東京の早まり方が顕著です(図6)。

図6 ソメイヨシノの開花日の30年平均の推移
図6 ソメイヨシノの開花日の30年平均の推移

 平成29年(2017年)と令和2年(2020年)にトップで開花したのは東京(千代田区の靖国神社)でした。

 過去10年間では東海から西日本にかけて、いろいろな都市がトップとなり、混戦模様です。

全国で一番早い開花と報道された地点

令和4年(2022年)3月17日 福岡

令和3年(2021年)3月11日 広島

令和2年(2020年)3月14日 東京

平成31年(2019年)3月20日 長崎

平成30年(2018年)3月15日 高知

平成29年(2017年)3月21日 東京

平成28年(2016年)3月19日 福岡、名古屋

平成27年(2015年)3月21日 名古屋、熊本、鹿児島

平成26年(2014年)3月18日 高知

平成25年(2013年)3月13日 宮崎、福岡 

 今年は、福岡と東京のトップ争いと思われますが、名古屋等の都市との差が小さいことから、これからのちょっとした天気の経過によって、福岡や東京以外の都市になるかもしれません。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:ウェザーマップ提供をもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供をもとに筆者作成。

図6の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事