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春一番が吹くかもしれない陽気でもコートは仕舞わずに 来週前半は真冬の寒さが戻る予報

饒村曜気象予報士
強い南よりの風の予報(2月19日9時の予報)

土日の春の陽気

 きょう2月18日(土)からあす19日(日)の西日本から東日本では、日本海を東進する低気圧に向かって南よりの強い風が吹く見込みです。

 日本海側から雪や雨の範囲が広がってきますが、北陸や北日本を含めて、全国的に一気に気温が上がるでしょう(図1、タイトル画像参照)。

図1 予想天気図(2月19日9時の予想)
図1 予想天気図(2月19日9時の予想)

 2月19日は、二十四節気の雨水(うすい)です。

 冷たい雪から春の雨に変わり、大地に潤いを与える頃という意味ですが、北陸や東北地方でも暦通りになりそうです。

 今冬の特徴として、冬型の気圧配置は強さの割には長続きしないということがあげられます。

 令和5年(2023年)1月13日は北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上して4月並みの気温となり、最高気温が25度以上という夏日を観測したかのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)もありました。

 しかし、その後、西高東低の冬型の気圧配置が強まり、今冬一番の強い寒気が南下したため、1月25日には真冬日を観測したのが502地点(55パーセント)と、全国の半数以上の地点で、気温が一日中氷点下という、冷凍庫の中の状態でした。

 また、冬日を観測したのが869地点(95パーセント)と、南西諸島以外は全ての観測地点で冬日でした(図2)。

図2 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年2月17日)
図2 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年2月17日)

 今冬、真冬日、冬日を観測した地点数が一番多かったのは1月25日です。

 2月に入ると、強い寒気の南下は北日本どまりで、真冬日や冬日を観測した地点数が減少しています。

 そして、南岸低気圧が短い周期で通過するようになってきました。

 南岸低気圧が通過するときは、暖気が入りますので、真冬日や冬日を観測した地点数が減少します。

 こうして、真冬日や冬日は増減しますが、今週は2月14日のバレンタインの頃に南下してきたバレンタイン寒波で真冬の寒さで始まりました。

 しかし、週末は一気に3月中旬~4月上旬並みの気温まで上がり、東・西日本では、地方によっては「春一番」の発表があるかもしれません。

 雪が多く積もっている所では、なだれや落雪にいっそうの注意が必要です。

【追記(2月19日11時30分)】

 福岡管区気象台は2月19日午前に、九州北部地方(山口県を含む)では昨日(18日)夜から今日(19日)未明にかけて春一番が吹いたと発表しました。

 また、高松地方気象台はきょう19日(日)、太平洋側を中心に10メートルを超える風の吹いた所があるとして「春一番」が吹いたと発表しました。

 どちらの地方においても、昨年は春一番の発表がなく2021年以来2年ぶりの発表となりました。

東京などで「春一番」の可能性

 「春一番」は、春になって最初に吹く強い南よりの風を「春一番」といいます。

 「春一番」の語源については諸説ありますが、「長崎県壱岐郡郷ノ浦町(現・壱岐市)で安政6年(1859年)2月13日に五島近海での海難で53名が死亡したときに言われた」というのが定説になっています。

 気象関係者の間で使われた出したのは、昭和31年(1956)2月7日の日本気象協会の天図日記からと言われています。

 そして、マスコミに取り上げられたのは、昭和37年(1962年)の「春一番」からです。

 昭和37年2月11日の朝日新聞夕刊では「…地方の漁師達は春一番という…」、同日の毎日新聞夕刊では「…俗に春一番と呼び…」と、各紙で取り上げられていますので、このとき、気象庁天気相談所が新聞記者に説明をしていたのかもしれません。

 しかし、「春一番」を一躍有名になったのは、昭和51年(1976年)のアイドルグループ・キャンディーズの9枚目のシングル「春一番」の大ヒットからです。

 「雪がとけて川になって流れ、風が吹いて暖かさを運んできた」とういう歌のイメージは、当初の海難を引き起こす危険なイメージの「春一番」とは別の側面ですが、「春一番」という言葉を浸透させました。

 そして、気象庁には「春一番」の問い合わせが殺到するようになり、気象庁は春一番の定義を決め、昭和26年(1951年)まで遡って春一番が吹いた日を特定し、平年値を作り、「春一番の情報」を発表せざるをえなくなっています。

 というより、春一番という言葉が浸透したことを利用し、防災情報の充実をはかっています。

 ヒット曲が気象庁の業務を変えたのです。

 春一番の基準は地方により異なりますが、立春(今年は2月4日)から春分(今年は3月20日)までの間に南よりの風が強く吹いて気温が上昇することが共通した目安です(表)。

表 各地の春一番の発表基準
表 各地の春一番の発表基準

 また、中国地方と九州南部を除いて、日本海で低気圧が発達するというのも、ほぼ共通した目安です。

 ただ、中国地方で強い南風が吹くときは、目安に入っていなくても、必ず日本海に低気圧がありまので、「低気圧が日本海にある」という目安がないのは九州南部だけです。

 これは、九州南部で強い南よりの風が吹くときは、低気圧が日本海にあるときだけでなく、九州北部にあるときもあるからです。

 このような事例が、今年、令和5年(2023年)の春一番でした。

 2月10日(金)に九州南部・奄美地方で「春一番」が吹きましたが、低気圧は日本海ではなく九州北部を通過しました。今年の全国で初めてで、九州南部・奄美地方で2月上旬までに春一番が吹いたのは平成25年(2013年)以来で10年ぶりでした。

来週前半は真冬の寒さ

 日曜日の夕方以降は、西から冬型の気圧配置に変わる見込みです。

 来週前半の2月20日(月)~21日(火)にかけて、日本の上空に再び強い寒気が流れ込む見通しです。

 2月21日は全国的に厳しい寒さとなり、日本海側は大雪のおそれがあるので注意・警戒が必要です。

 春は寒暖差が大きいのですが、今年は特に大きい傾向がある。天気予報を利用し、服装や体調管理に注意が必要です。

図3 各地の週間天気予報と最高気温(数字)
図3 各地の週間天気予報と最高気温(数字)

 来週前半は再び真冬の寒さが戻る見通しです。

 気温の変化が大きく、春のような陽気でもコートは仕舞わないほうが良さそうです。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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