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これから月末にかけて周期的に非常に強い寒気が南下 寒気先端の気温が高い時の雪は特に警戒

饒村曜気象予報士
サハリン東海上の流氷とオホーツク海の寒気の吹き出しに伴う雲(1月15日12時)

季節外れの暖かさ

 気象予報士の間では、寒さの目安として、上空約1500メートルの気温が使われます。

 上空約1500メートルで氷点下6度は、平均的にみると地上付近の気温が3度位となりますので、上空約1500メートルで氷点下6度は、地上での雪と雨の境目の温度ということになります。

 令和5年(2023年)は年始から寒気が周期的に南下していましたが、1月13日(金)には北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上し、4月並みの気温という季節外れの暖かさになりました。

 上空約1500メートルで氷点下6度以下という領域は、サハリン南部から千島列島南部まで北上しました(図1)。

図1 上空約1500メートルの気温分布(1月13日朝)
図1 上空約1500メートルの気温分布(1月13日朝)

 このため、北海道の平野部で雨が降っています。雪ではなく雨です。

 最高気温が氷点下という真冬日を観測した地点数は0となり、最低気温が氷点下という冬日を観測した地点数も急減しています(図2)。

図2 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月15日)
図2 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月15日)

 それどころか、鹿児島県名瀬市で26.4度を観測するなど、最高気温が25度以上という夏日を観測したのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)ありました。

 しかし、この季節外れの暖かさは長続きせず、今後は周期的に強い寒気が南下する見込みです。

強い寒気が周期的に南下

 令和5年(2023年)1月14日(土)と15日(日)には、大学教育で必要とされる「思考力・判断力・表現力」等を多面的・総合的に評価する試験、つまり、大学入試共通テストが実施されました。

 大学入試共通テスト初日の14日は、全国的に気温が平年より高くなり、2日目の15日は逆に低くなるという大きな気温変化の日でした。

 そして雨が降っている試験会場も多く、受験生は体調管理などに苦労することとなった共通テストとなりました。

 札幌では、13日にこの季節には非常に高い7.6度を昼過ぎに観測したあと、気温がなかなか下がらず、14日未明に5.4度を観測しています(図3)。

図3 札幌の気温変化(1月16日以降は気象庁の予報)
図3 札幌の気温変化(1月16日以降は気象庁の予報)

 そして、気温が一直線に下がっていますが、初日の試験時間は氷点下とならず、平年より高めの気温でした。

 しかし、2日目の試験時間は平年を下回る気温でした。

 1月16日以降は、氷点下5度前後の気温が続く予想ですので、13日から14日の暖かさは特異的なものといえるでしょう。

 東京も1月13日から14日に暖気が北上してきたため、記録的な暖かさとなったのですが、暖気の北上は14日未明まででしたので、初日の受験生は、気温10度に満たない寒い中で試験をうけました(図4)。

図4 東京の気温変化(1月16日以降は気象庁の予報)
図4 東京の気温変化(1月16日以降は気象庁の予報)

 そして、2日目は10度よりも少し上回った、ほぼ平年並みの気温の中での受験となっています。

次々に南下する寒気

 大学入試共通テストの時に南下してきた、上空約1500メートルで氷点下18度以下という非常に強い寒気は、北海道北部を通過し、現在はオホーツク海に南下しています(図5左上)。

図5 次々に南下する上空約1500mの寒気(左上は1月14日夜、右上は16日夜、左下は20日夜、右下は24日夜)
図5 次々に南下する上空約1500mの寒気(左上は1月14日夜、右上は16日夜、左下は20日夜、右下は24日夜)

 これに対応し、強い寒気の南下を示す筋状の雲がオホーツク海にはびっしりと存在しますが、日本海北部にはほとんどなくなっています(タイトル画像参照)。

 しかし、今後、強い寒気が次々に南下してくる予想となっています。

 16日(月)は、上空約1500メートルで氷点下18度という非常に強い寒気が北海道まで南下してきます(図5右上)。

 そして、暦の上で一番寒いとされる大寒の日、20日(金)に南下してくる上空約1500メートルで氷点下18度という非常に強い寒気は、東北北部まで南下してきます(図5左下)。

 さらに、24日(火)には、もっと南下してくるというように、非常に強い寒気がこれまでよりも南下してくる予想です。

南下してくる寒気の先端

 非常に強い寒気の南下に対応し、その先端に当たる上空約1500メートルで氷点下6度という寒気は、16日は関東北部から山陰地方まで、20日は関東南部から九州北部まで、24日の寒気は伊豆諸島から奄美大島までと、どんどん南下してくる予想です(図5参照)。

 上空約1500メートルで氷点下6度という寒気が雪と雨の境目の目安ということは、この時にふる雪は、気温が高い時(0度前後)の雪ということになります。

 同じ降雪量でも、気温が低い時のサラサラした雪より、気温が高い時のベタベタした雪のほうが雪かき等が大変ですし、融けた雪が凍ってアイスバーンになると滑りやすくなって転倒事故や交通事故が急増します。

 また、気温が0度に近いときの雪は、樹木や電線に付着して倒壊や切断を起こし易くなります。

 大雪のときは、降雪量の予報に注目が集まりますが、気温の情報も合わせて考える必要があります。冬の雪は、比較的温かくなった時のほうが危険なのです。

タイトル画像、図1の出典;ウェザーマップ提供。

図2、図5の出典;ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、図4の出典;気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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