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日本列島秋の気配も台風11号発生し西日本接近、ひょっとすると台風12号も

饒村曜気象予報士
台風11号の雲とその南西側にある雲の塊(8月28日15時)

つかの間の晴れ

 令和4年(2022年)8月最後の日曜日である28日は、ほぼ南北にのびる前線に対応する雨雲がかかり、北日本から関東・北陸を中心に雨が降りました。

 しかし、週明けの29日は、大陸の大きな高気圧に覆われ、全国的につかの間の晴れとなる所が多いでしょう(図1)。

図1 地上天気図(8月28日21時)
図1 地上天気図(8月28日21時)

 ただ、関東は雲が広がりやすく、にわか雨となる所もありそうです。

 8月30日以降は、全国的に雲の多い天気となり、8月31日から9月4日にかけては、本州付近に秋雨前線が停滞するため、広い範囲で雨となる見込みです。

 このため、6月末から続いていた暑さも一服しそうです。

暑さの峠

 令和4年(2022年)は、西日本から東北南部まで梅雨明けした6月末から7月の初めは、強まった太平洋高気圧の縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が流入し、晴れて強い日射によって記録的な暑さが続きました。

 夏日(最高気温が25度以上の日)、真夏日(最高気温が30度以上の日)、猛暑日(最高気温が35度以上の日)を観測した地点数が急増しています。

 群馬県の伊勢崎では、6月25日に最高気温が40.2度、6月29日に最高気温が40.0度となり、観測史上初めて6月に40.0度を超しました。

令和7年(2022年)の最初の暑さの波です(図2)。

図2 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)6月~8月)
図2 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)6月~8月)

 しかし、7月に入ると下層に暖湿気が流入し、大気が非常に不安定な状態が続きました。

 ときおり、上空に強い寒気が南下し、局地的に猛烈な雨が降り、「記録的短時間大雨情報」が頻繁に発表となっています。

 7月上旬から中旬の暑さの2波では、真夏日の観測地点が全国の過半数を超えましたが、猛暑日はほとんど観測されていません。

 そして、九州から東北南部は梅雨のような天気(戻り梅雨)となりましたので、夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数は減っています。

 東北北部が「梅雨明け」をし、九州から東北南部が「戻り梅雨明け」をした、7月29日以降、夏日と真夏日、猛暑日の観測が増え、暑さの3波となっています。

 7月31日には夏日と真夏日の観測地点数が今年最多となりました。

 しかし、40度以上という記録的な暑さは観測されず、猛暑日の観測地点数も7月1日を超えませんでした。

 それだけ、6月末から7月最初の猛暑が異常だったのです。

 朝鮮半島で熱帯低気圧に変わった台風8号が持ち込んだ多量の水蒸気が流入した8月3日~4日の東北地方日本海側から北陸地方では、線状降水帯が発生し大雨となっています。

 8月3日19時15分に、山形県置賜地方の6つの市と町(長井市、南陽市、川西町、飯豊町、米沢市、高畠町)に「大雨特別警報(浸水害)」が発表され、その後、大雨特別警報(土砂災害・浸水害)に更新となっています。

 また、8月4日1時56分には新潟県でも岩船地域の、村上市と関川村に対して大雨特別警報(土砂災害・浸水害)が発表となっています。

 この時の大雨によって、夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数が大きく減りましたが、その後、暑さが戻り、4波となっています。

 しかし、季節が秋に向かって進んでいることもあり、4波は3波のような暑さにはならず、8月末にむけて徐々に収まっています。

 秋の気配となっています。

台風11号の発生

 秋の気配が感じられる8月28日15時に南鳥島近海で台風11号が発生しました。

 この台風は、小笠原近海から日本の南海上を北西進し、8月31日には九州にかなり接近しそうです(図3)。

図3 台風11号の進路予報と海面水温(8月29日3時)
図3 台風11号の進路予報と海面水温(8月29日3時)

 台風に関する情報は、最新のものをお使いください

 令和4年(2022年)は、これまで11個の発生でも、平年値の13.6個(1~8月の発生数)より少ない発生数です(表)

表 令和4年(2022年)と平年の台風発生数・接近数・上陸数
表 令和4年(2022年)と平年の台風発生数・接近数・上陸数

 なお、台風の上陸は、台風4号が7月5日6時前に長崎県佐世保市付近、台風8号が8月13日17時半頃に伊豆半島と2個あり、平年並みとなっています。

 そして、この台風11号は、小笠原近海から日本の南海上を西進し、9月1日には南西諸島に接近する見込みで、九州に上陸する可能性もあります。

 統計的には、8月の南鳥島近海の台風は、台風11号の予報のように、西進して南西諸島に接近するものが多くなり、沖縄近海で台風の動きが遅くなるものもあります(図4)。

図4 台風の8月の平均経路図
図4 台風の8月の平均経路図

 なお、図4では、沖縄近海で遅くなる台風を円を描くことで表現しています。

 台風11号は、8月の代表的なコースを進みそうですが、海面水温が30度以上と、台風が発達する目安とされる27度よりかなり高い海域を進む割には、なかなか暴風域を持つまで発達しない予報です。

 台風11号が発達しないのは、台風11号の南西側にある雲の塊が、台風のエネルギー源である暖かい海上の水蒸気が入ってこないためと考えられます。

 つまり、エネルギー源を独り占めできないためです(タイトル画像参照)。

 台風11号の南西側の雲の塊は、今後、周辺部の水蒸気を集めて熱帯低気圧になり、その後、台風12号に発達する可能性があります。

 最悪、西日本では、台風11号に続いて台風12号が接近となります。

 しかも、台風11号(や台風12号)が接近する頃は、本州付近に秋雨前線が停滞している可能性が高く、「前線と台風」という危険な組み合わせになりますので、早めに厳重な警戒が必要です。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

表の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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