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発生したばかりの台風5号が奄美地方にかなり接近、全国的には暖湿気流が流入して蒸し暑さと局地的雷雨

饒村曜気象予報士
日本の南の熱帯低気圧などによる雲の塊(aが台風5号に発達、7月28日15時)

台風5号の発生

 令和4年(2022年)の台風は、4月に2個の台風が発生し、このうち1号が小笠原諸島に接近したあと、2か月ほど熱帯域では雲が少ない状態が続いていたため、台風が発生しませんでした(表)。

表 令和4年(2022年)の台風
表 令和4年(2022年)の台風

 その後、6月30日9時に南シナ海で台風3号が発生し、続けて、7月1日9時に日本の南海上で台風4号が発生しました。

 台風4号は沖縄本島付近を通過し、東シナ海を北上して5日6時前に長崎県佐世保市付近に上陸し、九州横断中の9時に温帯低気圧に変わっています。

 台風4号以降、熱帯域の雲の発生が少なく、台風の発生数も平年より少なく経過しているのですが、7月下旬になると太平洋高気圧の縁辺をまわるように熱帯低気圧が日本の南で発生し、北上するようになってきました。

 そして、7月28日21時に、日本の南で熱帯低気圧が発達して台風5号となりました(図1)。

図1 台風5号の進路予報(7月28日21時)
図1 台風5号の進路予報(7月28日21時)

 台風に関する各種の情報は、最新のものをお使いください

 日本の南の海面水温は、台風が発達する目安とされる27度を大きく上回る約30度です。

 しかし、周囲に積乱雲の塊が多く存在します。

 タイトル画像は、台風5号発生の6時間前の衛星画像で、このうちaの雲域に対応していた熱帯低気圧が台風5号になったのです。

 また、bの雲域に対応して、熱帯低気圧が発生すると考えられています(図2)。

図2 予想天気図(7月29日9時の予想)
図2 予想天気図(7月29日9時の予想)

 このため、台風のエネルギー源である周辺の水蒸気が全て台風5号に集まって暴風域をもつほどには発達しないと考えられています。

 気象庁の進路予報でも、4日後の8月1日21時に海面水温が27度以下となる黄海において熱帯低気圧になるという予報ですが、この間、暴風域がありません(暴風域があるなら暴風警戒域が表示されます)。

 風に関していえば、極端に強い台風ではありませんが、周囲に積乱雲の塊が多く存在していることは、大雨には厳重な警戒が必要な台風であることを示しています。

鹿児島県奄美地方にかなり接近

 台風5号は、今後も北寄りに進み、29日午後から30日午前中にかけて奄美地方にかなり接近し、その後、東シナ海を北上する見込みです(図3)。

図3 雨と風の分布予報(7月29日21時の予想)
図3 雨と風の分布予報(7月29日21時の予想)

 沖縄本島~九州の南東側では降り方が強まり、雨量が多くなるおそれがありますので、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水、強風や高波に注意・警戒してください。

むし暑さと局地的な大雨

 令和4年(2022年)は、7月26日に東北北部が梅雨明けをし、これで梅雨がないとされる北海道を除いて、全国的に梅雨明けとなっています。

 しかし、夏の主役の太平洋高気圧の西への張り出しが弱く、太平洋高気圧の縁辺を回るように、暖かくて湿った空気が西日本から東日本に流入し続けています。

 下層に暖湿気が流入すると、大気が不安定となりますので、局地的に猛烈な雨が降る状態が続いていることになり、気象庁では「記録的短時間大雨情報」を頻繁に発表しています。

 7月26日朝に東海地方に接近した熱帯低気圧も、南側に発達した雲域を伴っており、熱帯低気圧としては消滅したものの、愛知県西尾市付近で約100ミリなど東海地方を中心に大雨をもたらしました。

 今週末も、台風5号や熱帯低気圧に伴って、あるいは、太平洋高気圧の縁辺に沿って暖かく湿った空気が流れ込みます。

 南西諸島や西日本から東海の太平洋側を中心に所々で雨が降りますが、全国的にみれば、晴れ間の広がり、気温が高くなる所が多くなる見込みです。

 全国で気温を観測しているアメダス観測点は914地点あります。

 このうち、7月28日に最高気温が30度以上の真夏日を観測した地点数は、620地点となり、6月29日に観測した613地点を上回り、今年最多となりました(図4)。

図4 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数(平成4年(2022年)6月から7月)
図4 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数(平成4年(2022年)6月から7月)

 ただ、最高気温が35度以上の猛暑日は81地点と、7月1日に観測した235地点の半分以下です。

 西日本から東北南部まで記録的に早い梅雨明けがあった6月末から7月初めに続いた記録的な猛暑に比べれば、猛暑日が少ないというだけで、現在の暑さが、この時期らしい厳しい暑さです。

 日本列島には、暖かくて湿った空気が流入していますので、熱中症になりやすい、蒸し暑い日々が続きます。

 暑さに警戒・注意してください。

 また、下層に暖かくて湿った空気が流入すると、大気が非常に不安定な状態となりますので、局地的な大雨や落雷、突風などにも注意が必要です。

 全国で特に発雷確率が高いのが関東甲信地方の内陸部で、75パーセント以上となっています(図5)。

図5 発雷確率(7月29日昼過ぎ)
図5 発雷確率(7月29日昼過ぎ)

 関東甲信地方は、雲が広がりやすく、午前中から一部で雨の降る所がある見込みですが、午後は局地的に非常に激しい雷雨となる所がありそうです。

 雨が降っていなくても、雨具を持ってお出かけください。

 台風5号が接近する地方で風や雨に警戒が必要ですが、ほぼ全国で熱中症になりやすい蒸し暑さや、落雷や突風などを伴う局地的な雷雨などに注意が必要です。

タイトル画像、図1、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2、表の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:気象庁とウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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