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梅雨明けしたもののいつもと違う暑さの原因 夏の主役の太平洋高気圧はまだ張り出さず

饒村曜気象予報士
予想天気図(7月11日9時の予想)

梅雨明け10日

 令和4年(2022年)の梅雨は、6月29日までに、東北北部を除いて記録的に早い梅雨明けをしています(表)。

表 令和4年(2022年)の梅雨明け
表 令和4年(2022年)の梅雨明け

 太平洋高気圧の勢力が強まり、その上をチベット高気圧が張り出してきたためで、南海上から、暖かくて湿った空気が流入したことと、強い日射が加わって、各地で記録的な高温が続きました。

 そして、群馬県の伊勢崎の最高気温は、6月25日に40.2度、30日に40.0度を観測し、全国初めての6月の40.0度超えを2回も観測しました。

 しかし、台風4号が7月2日に沖縄本島を通過し、5日6時前に長崎県佐世保市付近に上陸したころから太平洋高気圧が弱まり、記録的な高温は一服しました。

 その後、最高気温が25度以上の夏日、最高気温が30度以上の真夏日が増えていますが、太平洋高気圧が張り出しての暑さではありません(図1)。

図1 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~7月)
図1 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~7月)

 最高気温が35度以上の猛暑日がほとんど増えていません。

 「梅雨明け10日」という言葉があるように、梅雨明け後は太平洋高気圧に覆われて晴れの日が10日間くらい続くことが多いのですが、今年は例年とは違います。

 梅雨明け直後に太平洋高気圧が張り出したものの、その後は夏の主役の太平洋高気圧は南に下がったままで、その中での真夏日の暑さです(タイトル画像参照)。

日本付近の動きの遅い2つの低気圧

 令和4年(2022年)の台風4号は、長崎県佐世保市付近に上陸したあと、九州を縦断中に温帯低気圧に変わりましたが、その後は動きが遅くなっています。

 そして、日本海西部で発生した低気圧と相互作用をおこし、関東付近を中

心とした動きで北海道に向かっています(図2)。

図2 台風4号から変わった低気圧の動きと日本海西部で発生した低気圧の動き
図2 台風4号から変わった低気圧の動きと日本海西部で発生した低気圧の動き

 太平洋高気圧は、沖縄の南海上に南下したままです。

 日本付近は、ゆっくり動いている2つの低気圧によって、南から温かくて湿った空気が流れ込み、これに晴れたことによる強い日射によって気温が高くなっています。

 フェーン現象による40度近い気温は、乾燥した暑さです。

 今回は、35度近い気温でも、湿った暑さですので、数字以上に身体に堪える暑さです。

 熱中症になりやすい、厳しい蒸し暑さの状況が続いていますので、引き続き警戒が必要です。

大気不安定

 太平洋高気圧の北への張り出しが弱いと、上空に北から寒気が南下しやすくなります。

 週末から週明けも、上空には強くはありませんが寒気の流入が続いており、地上付近の気温と湿度が高いことによって大気が不安定となる状況は続いています。

 週明けの7月11日の午後は、九州から東北の内陸を中心に積乱雲が発達し、局地的に非常に強い雨が降り、落雷の恐れがあります(図3)。

図3 発雷確率(7月11日夕方)
図3 発雷確率(7月11日夕方)

 また、竜巻などの突風の懸念もあります。

 暑さ対策と、急な激しい雷雨や落雷・突風に対する警戒が、ともに必要な1週間です。

 ウェザーマップの16日先までの天気予報をみると、今週は傘マーク(雨)や黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が続きます(図4)。

図4 東京の16日先までの天気予報
図4 東京の16日先までの天気予報

 降水の有無の信頼度が5段階で一番低いEや、二番目に低いDが混じる予報ですが、来週以降の東京は、お日様マーク(晴れ)と白雲マーク(雨の可能性がほとんどない曇り)の日が続きます。

 そして、最高気温が30度以上の真夏日で、最低気温が24度とほぼ熱帯夜の日が続く予報です。

 来週は、夏の主役の太平洋高気圧が日本付近に張り出してきそうです。

タイトル画像、表の出典:気象庁ホームページ。

図1の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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