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大雨に警戒 沖縄・奄美で「梅雨」、その他の地方も「走り梅雨」

饒村曜気象予報士
土砂災害 避難する人々(提供:イメージマート)

奄美地方の梅雨入り

 令和4年(2022年)5月11日、鹿児島県奄美地方が梅雨入りをしました(図1)。

図1 沖縄に続いて梅雨入りをした奄美地方の雲(5月11日12時)
図1 沖縄に続いて梅雨入りをした奄美地方の雲(5月11日12時)

 沖縄の梅雨入りから7日後、平年より1日早い梅雨入りです(表)。

表 令和4年の梅雨入り
表 令和4年の梅雨入り

 平年値でみると、全国で一番早い梅雨入りは沖縄地方で5月10日、これより2日遅れた12日が鹿児島県奄美地方の梅雨入りです。

 平均すれば沖縄地方は奄美地方より梅雨入りが早いということができますが、年によっては、奄美地方が沖縄地方より早く梅雨入りすることがあります。

 ただ、近年は少し違います。

 20世紀後半(1951年から2000年)の50年間の梅雨入りと、21世紀になってからの奄美地方と沖縄地方の梅雨入りを比べると、興味深い傾向がみられます(図2)。

図2 沖縄での梅雨入り日と奄美での梅雨入り日の差(1951年~2000年と2001年~2022年)
図2 沖縄での梅雨入り日と奄美での梅雨入り日の差(1951年~2000年と2001年~2022年)

 つまり、21世紀は「同じ日に梅雨入り」と「1~4日奄美のほうが早く梅雨入り」という年が増えており、「沖縄が5日以上奄美より早く梅雨入り」という年が減っているのです。

 この理由はよくわかりませんが、沖縄地方の梅雨が変わってきた可能性があります。

 直近の12年間では、同日の梅雨入りが7回、奄美地方が早かったのは3回ですが、沖縄地方が早かったのは、令和2年(2020年)と令和4年(2022年)の2回だけです。

 沖縄・奄美地方を除くと、早い梅雨入りは九州南部で、5月30日です。

 沖縄・奄美地方が梅雨入りしてから約20日後になりますが、今年は様相が少し違います。

走り梅雨

 ウェザーマップの各地の10日間予報を見ると、すでに梅雨入りしている沖縄地方(那覇)と、奄美地方(名瀬)は、傘マーク(雨)と黒雲マーク(雨の可能性があるくもり)の日が、少なくとも来週一杯は続きます(図3)。

図3 各地の10日間予報
図3 各地の10日間予報

 また、それ以外の地方も、今週末までは傘マークと黒雲マークが続きます。

 関東甲信地方(東京)にいたっては、来週半ばまで続きます。

 これは、南西諸島に停滞していた梅雨前線が少し北上して停滞、この前線上を低気圧が次々に通過する見込みだからです(図4)。

図4 予想天気図(5月13日9時の予報)
図4 予想天気図(5月13日9時の予報)

 梅雨のように雨が多い天気が続きますが、来週の半ば以降に太陽マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ないくもり)の日が続きます。

 このため、沖縄・奄美地方以外は「梅雨入り」ではなく、「走り梅雨」になりそうです。

大雨に警戒

 5月12日から14日は、前線や低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となる見込みです。

 西日本から東日本の太平洋側と南西諸島では、雷を伴った非常に激しい雨が降り、大雨となる所があるでしょう。

 土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒・注意し、落雷や竜巻などの激しい突風に注意してください。

 気象庁では、早期注意情報として、5日先までに警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で発表しています。

 これによると、宮崎県と鹿児島県では、大雨警報の可能性が12日と13日で「高」、14日で「中」となっています。

 そして、13日と14日は東日本の太平洋側から西日本の太平洋側の地域まで、広い範囲でも「中」となっています(図5)。

図5 大雨に関する早期注意情報(5月12日~14日)
図5 大雨に関する早期注意情報(5月12日~14日)

 コンピュータの計算では、太平洋側の地方では、総雨量が200ミリ以上の大雨の可能性があります(図6)。

図6 72時間予想降水量(12日0時から14日24時までの72時間予想)
図6 72時間予想降水量(12日0時から14日24時までの72時間予想)

 今年も、大雨に警戒する季節が始まりました。

記録的短時間大雨情報

 気象庁では、大雨警報が発表中に、その防災効果を高めるため、数年に1回程度の大雨を観測した時には「記録的短時間大雨情報」を発表しています。

 この情報の最初の発表は、昭和59年(1984年)5月14日の与那国島でした。

 与那国島では、12時から13時までの1時間で90ミリ(13時10分までの1時間では96ミリ)を観測し、当時の雨量基準である70ミリを超えたことから、記録的短時間大雨情報が発表となりました。

 この日、沖縄気象台では梅雨入りを発表しましたので、最初の記録的短時間大雨情報は、梅雨前線による雨で発表と言うことができます。

 記録的短時間大雨情報は、アメダスの雨量計を用いて始まりましたが、平成6年(1994年)6月1日からは、解析雨量も活用しています。

 解析雨量は、レーダーのきめ細かい観測データを、約17キロメッシュ毎に設置してあるアメダスの雨量計の観測値で補正したものです。

 解析雨量を用いた記録的短時間大雨情報は、アメダス等の雨量計を用いた記録的短時間大雨情報と違い、「付近」という文字が加わり、雨量は10ミリごとで、約がつきます。また、120ミリ以上の場合はすべて「120ミリ以上」という表現になります。

記録的短時間大雨情報の例

解析雨量を用いた場合:

・2時北海道で記録的短時間大雨 猿払村付近で約100ミリ

・20時30分沖縄県で記録的短時間大雨 与那国町付近で120ミリ以上

雨量計を用いた場合:

・1時50分北海道で記録的短時間大雨 猿払村浅茅野で87ミリ

・20時20分沖縄県で記録的短時間大雨 与那国空港で110ミリ

 大雨警報や記録的短時間大雨情報など、最新の気象情報の入手に努め警戒をしてください。

図1、図3、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。

図4、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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