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台風1号が北上中 過去には4月上陸もあるが来週は前線を刺激して大雨の可能性は?

饒村曜気象予報士
台風1号の雲(4月8日15時)

台風1号発生

 令和4年(2022年)4月8日9時、カロリン諸島の熱帯低気圧は、域内の最大風速が17.2メートル以上となったため、台風1号となりました

 台風1号は、台風が発達する目安である海面水温27度以上の温かい海域を北上するため、フィリピンの東海上で最大風速45メートル、最大瞬間風速60メートルの非常に強い台風に発達する見込みです(図1)。

図1 台風1号の進路予報(4月9日3時)
図1 台風1号の進路予報(4月9日3時)

 台風の予報は、最新のものをお使いください

4月の台風

 著者が過去に調べた4月の台風の平均経路は、ほとんどの台風が低緯度を西進してフィリピンの東海上に達しますが、中には今回の令和4年(2022年)の台風1号のように、北上してくるものもあります(図2)。

図2 台風の4月の平均経路
図2 台風の4月の平均経路

 北上してくる台風は、ほとんどは沖縄近海から小笠原諸島近海を東進します。

 ただ、4月に上陸した台風が0というわけではありません。

台風の最も早い上陸

 気象庁では、台風の気圧が一番低い場所が、九州・四国・本州・北海道の上にきたときを「台風上陸」といいます。

 沖縄本島など、島の上の通過や、岬を横切って短時間で再び海に出る場合は上陸ではありません。

 台風の定義が「中心付近の最大風速が17.2m/s以上の熱帯低気圧」と決まった昭和26年(1951年)から台風上陸についての統計がありますが、一番早い上陸は昭和31年の台風3号で、4月25日7時半頃、鹿児島県大隅半島南部に上陸しました(表1)。なお、表1は令和2年(2020年)までのですが、令和3年(2021年)は、この記録を更新していません。

表1 台風の上陸が早い台風(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))
表1 台風の上陸が早い台風(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))

 昭和31年の台風3号は、4月16日15時に発生したあと、フィリピンの東海上で935ヘクトパスカルまで発達しました。

 しかし、フィリピンのルソン島上陸で衰え、さらにバシー海峡付近で転向して北上するにつれてさらに衰え、大隅半島南部に上陸直後の4月25日9時には消滅しています(図3)。

図3 昭和31年の台風3号の経路
図3 昭和31年の台風3号の経路

 このため、台風が消えたと報じられました。

台風三号消える

台風三号は二十五日朝九州の南沖まできて消えた。中央気象台の観測では朝六時、台風の名残とみられる小さな低気圧が宮崎県沖にあるが、陸地では風もなく所によってにわか雨が降っただけ。しかしこのように四月中に台風が日本に近づいたのは、大正六年以来三十九年ぶりという珍しい記録を作った。

引用:昭和31年(1956年)4月25日朝日新聞夕刊

台風の月別上陸数

 台風の統計が作られている昭和26年(1951年)から昨年、令和3年(2021年)までに209個の台風が上陸しています。

 県別には、鹿児島県が一番多く、高知県、和歌山県と続きますが、沖縄県は0です(表2)。

表2 都道府県別台風上陸数
表2 都道府県別台風上陸数

 沖縄県は、沖縄本島等、島の上を通過することは珍しくありませんが、定義からいうと上陸はないことになります。

 台風の月別の上陸数をみると、8月が74個と一番多く、次いで9月の67個になります(図4)。

図4 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))
図4 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年))

 台風というと9月のイメージがあるのですが、これは、9月の台風は秋雨前線を刺激して大雨を降らせることが多いなど、大きな被害を発生させるからです。

 ただ、近年は9月から10月に上陸する台風が増えています。

 平成13年(2001年)以降では、8月と9月がほぼ同じ数だけ上陸していますし、10月に上陸する台風も7月に上陸する台風並みの数となっています。

 台風上陸が、夏から秋に少し移動している感じがします。

台風1号と前線

 来週は、本州付近には前線が発生し、停滞する可能性があります。

 この頃、台風1号が日本の南海上に北上してきます。

 台風と前線の位置関係など、まだ不確実な段階ですが、台風が前線を刺激して大雨となる可能性もあります。

 最新の台風情報の入手に努め、注意してください。

 4月から11月まで台風シーズンです。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図4、表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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