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大型で非常に強い台風21号が小笠原諸島を直撃 過去に12月に小笠原諸島に接近した台風

饒村曜気象予報士
目が見える台風21号の雲(12月3日12時)

台風21号が北上

 台風21号は、11月30日(火)9時にマリアナ諸島で発生したあと、北上しながら向きを次第に変え、海面水温が台風発達の目安とされる27度を上回る29度以上の海域を進んでいます。

 このため、12月3日9時には中心気圧925ヘクトパスカルの大型で非常に強い台風にまで発達しています。

 台風21号は、12月3日の朝の段階でも、海面水温が27度位の海域を進んでおり、台風の目がはっきり見えます(タイトル画像参照)。

 そして、12月3日夜から4日朝にかけて、小笠原諸島に接近する見込みです(図1)。

図1 台風21号の進路予報と海面水温(12月3日15時)
図1 台風21号の進路予報と海面水温(12月3日15時)

 台風21号に関する情報は最新のものをお使いください

 気象庁では、暴風域(最大風速25メートル以上の風が吹いている範囲)に入る確率を、3時間毎に入る確率を発表しています。

 これによると、小笠原諸島では、暴風域に入る確率は、12月3日(金)夜遅くには、3時間に91パーセントと非常に高くなっています(図2)。

図2 小笠原諸島が暴風域に入る確率(12月3日9時の予想)
図2 小笠原諸島が暴風域に入る確率(12月3日9時の予想)

 この頃が台風21号が小笠原諸島への最接近と思われますが、それよりも早い段階から暴風が吹き始めます。

台風の接近

 台風の接近は、台風の中心が気象官署等から300キロ以内に入った場合をさします。

 平成3年(1991年)から令和2年(2020年)の30年間の平均値を平年値といいますが、台風の日本への接近数の平年値は11.7個です。

 月別には、8月と9月が一番多く、次いで7月で、10月は4番目です。

 しかし、伊豆諸島および小笠原諸島に接近した台風数となると、一番多いのは9月の1.5個、次いで、10月の1.3個と、季節が進んでからの接近が多くなります(図3)。

図3 月別の日本への台風接近数と伊豆諸島・小笠原諸島への接近数
図3 月別の日本への台風接近数と伊豆諸島・小笠原諸島への接近数

 令和3年(2021年)も、5月に台風5号が、8月に台風10号が、10月に台風16号と台風20号が接近していますので、12月に台風21号が接近すると5個目となり、これまでの平均と同じ接近数になります(図4)。

図4 伊豆諸島・小笠原諸島への年間台風接近数
図4 伊豆諸島・小笠原諸島への年間台風接近数

 伊豆諸島・小笠原諸島に10年に1回以上接近する月は、4月~11月ですので、伊豆諸島・小笠原諸島の台風シーズンは、他の地方に比べて長くなっています。

 とはいえ、12月にも台風が接近することがあります。

12月の小笠原諸島への台風接近

 過去に12月に小笠原諸島に台風が接近したのは、台風統計が行われている昭和26年(1951年)以降では4回あります(図5)。

図5 昭和26年(1951年)以降、小笠原諸島に接近した12月の台風
図5 昭和26年(1951年)以降、小笠原諸島に接近した12月の台風

 70年間で4回ですから、17.5年に1回です。

昭和26年(1951年)以降に12月に伊豆諸島・小笠原諸島に接近した台風

●昭和30年(1955年)12月3日に接近した台風27号

●昭和35年(1960年)12月5日に接近した台風26号

●平成2年(1990年)12月23日に接近した台風29号

●平成15年(2003年)12月1日に接近した台風21号

 最近の接近は、18年前の平成15年(2003年)の台風21号で、最大瞬間風速36.8メートル(観測史上12月として1位)、最大風速18.0メートル(12月として2位)を観測しました。

 12月に台風が接近することは珍しいことではありますが、令和3年(2021年)の台風21号は、発達している状態での接近ですので、非常に珍しいことです。

 小笠原諸島では4日にかけて、暴風や大雨による土砂災害に警戒してください。

 また、6日(月)にかけて、うねりを伴った高波に注意・警戒してください。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4、図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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