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低気圧に伴う寒冷前線の通過と寒気南下で東~北日本では大荒れの師走入り 小笠原諸島は台風21号接近

饒村曜気象予報士
東シナ海と日本海の筋状の雲と台風21号の雲(12月1日15時00分)

荒れた師走入り

 日本海北部からサハリンに低気圧が発達しながら北東進し、この低気圧から延びる寒冷前線の通過によって、東~北日本は大荒れとなった師走の入りとなりました(図1)。

図1 地上天気図(12月1日21時)
図1 地上天気図(12月1日21時)

 12月1日の降水量は、静岡県の天城山で133ミリなど、東~北日本の太平洋側では50~100ミリの降水ですが、短い時間での降水であり、体感的には非常に強い雨が降りました(図2)。

図2 全国の日降水量(12月1日)
図2 全国の日降水量(12月1日)

 低気圧や前線に向かって暖気が入りましたので、全国的に気温は上昇していますが、寒冷前線の通過後は、西高東低の冬型の気圧配置となり、強い寒気が西日本を中心に南下しています。

 気象衛星画像をみると、黄海や東シナ海、日本海西部には、寒気の南下を示す筋状の雲が出現しています(タイトル画像参照)。

 冬型の気圧配置となると、太平洋側の地方は晴れ、沖縄は曇りという、冬に多い3分割の天気分布となります。

秋から冬への気温変化

 令和3年(2021年)の秋は、残暑が長く、10月中旬までは全国の約半分の地点で最高気温が25度以上の夏日を観測していました。

 10月中旬以降は寒気が南下し、10月17日には稚内、旭川、網走で初雪を平年より10日以上早く観測しています。

 ただ、周期的に南下する寒気は強いものではなく、北日本までの南下でした。

 このため、寒気の南下のたびに最低気温が0度未満という冬日の観測地点が増えましたが、全国の1割くらいで止まっていました。

 しかし、11月15日以降に南下してきた寒気は、それまでとは違い、西日本を中心に寒さをもたらしました。

 冬日を観測した地点は、11月29日には、全国で気温を観測している930地点のうち466地点と、全体の5割を超えました(図3)。

図3 夏日の観測地点数と冬日の観測地点数の推移
図3 夏日の観測地点数と冬日の観測地点数の推移

 低気圧や前線に向かって暖気が入ったことから、12月1日の冬日は大きく減っていますが、その後の寒気の南下で、12月2日は西高東低の冬型の気圧配置となり、冬日は大きく増えると思われます。

 しかし、冬型の気圧配置は長続きしません。

 12月3日には、低気圧が日本海から北日本を通過しますので、暖気が入って冬日は減少すると思われます(図4)。

図4 予想天気図(12月3日9時の予想)
図4 予想天気図(12月3日9時の予想)

 ただ、この低気圧と寒冷前線の通過後は、再び寒気が南下し、西高東低の冬型の気圧配置となって寒くなります。

夏が残っている小笠原諸島

 日本列島は、一気に冬の寒さになるのではなく、一進一退を繰り返しながら冬の寒さになってゆきますが、一方、フィリピンの東海上には台風21号があって北上中です。

 台風21号は、向きを次第に東よりに変え、12月3日には強い勢力で小笠原諸島に接近するおそれがあります(図5)。

図5 台風21号の進路予報と気象衛星画像(12月1日21時)
図5 台風21号の進路予報と気象衛星画像(12月1日21時)

 台風21号に関する情報は最新のものをお使いください

 気象庁では、暴風域(最大風速25メートル以上の風が吹いている範囲)に入る確率を、3時間毎に入る確率と24時間以内に入る確率を発表しています。

 これによると、小笠原諸島では、暴風域に入る確率は、12月3日夜遅くの3時間に28パーセントと一番高くなっています(図6)。

図6 小笠原諸島が暴風域に入る確率(12月1日21時の予想)
図6 小笠原諸島が暴風域に入る確率(12月1日21時の予想)

 この頃、最接近と思われます。

 また、12月4日21時までの24時間以内に暴風域に入る確率と、5日21時までの24時間以内に暴風域に入る確率、6日21時までの24時間以内に暴風域に入る確率は、ともに43パーセントです。

 台風の接近と共に、これらの確率の数値は大きくなることが想定されますので、小笠原諸島では、週末にかけて台風の接近に注意・警戒してください。

日本列島はすっかり冬の様相ですが、日本の南海上では、まだ夏が残っています。

タイトル画像、図2、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図4、図6の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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