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函館さくら開花 年年歳歳人相似のためにも「おうちにいよう」

饒村曜気象予報士
五稜郭タワーと満開の桜(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

函館でさくら開花

 令和2年(2020年)4月26日(日)、北海道の函館でさくらが開花しました。

 気象庁でいうさくらの開花は、「標本木の花が5輪から6輪開いた状態になったとき」ですから、函館の標本木もこの基準をみたしたのです。

 平年より4日早い開花で、さくら開花前線は北海道を北上です(図1)。

図1 さくら開花前線(ウェザーマップ提供)
図1 さくら開花前線(ウェザーマップ提供)

 令和2年は、暖冬により東京で3月14日に記録的に早く開花するなど、東日本から西日本では、平年よりかなり早い開花でした。

 ただ、鹿児島では、あまりの暖冬のために、ほとんどのさくらで起きている休眠打破と呼ばれる、寒い時期を経験したことによる開花の加速がなく、平年より6日も遅い4月1日でした。

 北海道では、4月の気温は低めに経過したため、さくらの開花にブレーキがかかりましたが、それでも、函館では平年より少し早い春の訪れとなりました。

 さくら開花前線は、北海道の南から北へ、西から東へと進みます(表)。

表 北海道のさくらの開花・満開の予報
表 北海道のさくらの開花・満開の予報

 これは、対馬暖流が北海道の西海上を北上、あるいは津軽海峡から太平洋へと流れているからです。

開花から満開までの期間が短い北海道

 北海道のさくら予想から、開花から満開までの期間をみると、令和2年(2020年)は、函館の5日が一番長く、旭川が一番短い1日です。

 今年に限らず、さくらの開花から満開までの期間は、西日本の平年が8~10日、東日本での太平洋側の平年が6~9日に対し、北海道の平年が2~5日です(図2)。

図2 さくらの開花から満開までの期間の平年値
図2 さくらの開花から満開までの期間の平年値

 北海道では、開花から満開までの期間が非常に短いのです。

 過去には、午前中に開花し、午後に満開となった例もあります。

 平成24年(2012年)の北海道・旭川のことです。

桜:午前開花、午後満開 北海道・旭川、全国初の同日

 旭川地方気象台は2日、北海道旭川市のサクラ(エゾヤマザクラ)が観測史上全国で初めて、開花と満開が同日になったと発表した。基準にしている「標本木」は、午前に3割程度で開花が確認され、午後に満開と判断する8分咲きを超えた。

 開花は平年より3日早く、満開は5日早い。通常は開花から満開まで3、4日かかるが、同日の最高気温は7月上旬並みの25.1度で、一気に花が開いた。…。

出典:毎日新聞(平成24年(2012年)5月3日朝刊)

 北海道などの北国は、さくらの開花から満開までの期間が短いだけでなく、いろいろな花が一斉に咲きだします。

 まさに「北国の春」です。

 それが、ゴールデンウィーク期間とほぼ重なります。

 例年であれば行楽にもっとも適した季節といえるのですが、今年は違います。

元気であれば花は逃げない

 今から1400年くらい前の中国の唐詩に「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」というのがあります。

 「白頭を悲しむ翁に代かわりて」という詩の一部です。

 花は毎年のように咲くが、それを見る人は毎年違っているという意味ですが、新型コロナウィルス禍の令和2年(2020年)は、感傷にひたるわけにはゆかないと思います。

 花は逃げないので、さくらの季節は来年もあります。

 しかし、今年の花見の密集によって新型コロナウィルスの感染が広がれば、自分も含めて多くの人が亡くなります。

 花が咲いてもその花を見る人がいなくなります。

 いっしょに見る人が変わる「人不同(ひとおなじからず)」ではなく、だれも見る人がいない「人不在(ひとそんざいしなくなる)」の懸念があります。

 新型コロナウイルス禍を早く終わらせるため、例年であれば行楽に適した季節であっても、今年は、皆で「おうちにいよう」です。

タイトル画像の出典:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート提供

図1、表の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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