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近畿地方で「木枯らし1号」、島嶼部を除く東京都はいつ

饒村曜気象予報士
木枯らし(ペイレスイメージズ/アフロ)

木枯らし

 晩秋から初冬にかけて、木の葉を吹き散らす北よりの冷たい強風を木枯らしと言います。凩とも書きます。

 冬の季節風の先陣であり、木枯らしが吹くときは、冬支度の始めるときと言われます。このため、気象庁では、その年に初めて吹く木枯らしを「木枯らし1号」として、近畿地方と島嶼部を除く東京都(東京地方)だけにお知らせを発表しています。

 問い合わせが多いことから始めたサービスで、「春一番」など防災の要素が強い情報とは少し違うものです。

近畿地方で「木枯らし1号」

 大阪管区気象台気象防災部予報課は、11月23日午前に、「昨日(11月22日)、近畿地方で木枯らし1号が吹きました」と発表しました。

 近畿地方の「木枯らし1号」の発表基準は、次の4点です。

・霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)までの期間。

・西高東低の冬型の気圧配置になっている。

・西北西から北北東の風(北よりの風)で、最大風速が秒速8メートル以上を観測した近畿地方の気象台・特別地域気象観測所が3地点以上(大阪・神戸・彦根・奈良・和歌山・京都・舞鶴の7地点のうち3地点以上)。

・発表時刻は9時から17時の間(従って15時までの観測データを利用)。

 今冬で、この4点を最初に満たしたのが11月22日だったので、平成30年(2018年)の「近畿地方の木枯らし1号」は11月22日です。

 ただ、11月22日の15時までに基準を満たしていたのは神戸だけで、他の6地点の最大風速は毎秒8メートルを越えていませんでしたので、11月22日の「木枯らし1号」の発表はありませんでした。

 その後、風が強まり、日付が変わる前に和歌山と彦根で最大風速が毎秒8メートルを越えて基準を満たしたので、「昨日吹きました」と、11月23日に発表になったのです(表)。

表 「近畿地方の木枯らし1号」の判定(11月22日)
表 「近畿地方の木枯らし1号」の判定(11月22日)

 平成15年(2003年)の「木枯らし1号」は12月19日であるなど、12月の「木枯らし1号」が少なくありませんので、記録的と言うわけではありません。ただ、前年より 23日も遅く、13年ぶりの遅い「木枯らし1号」でした。

基準が全く違う東京地方

 東京地方の「木枯らし1号」は、気象庁予報部予報課の天気相談所がお知らせを発表していますが、平成30年(2018年)は、まだ発表はありません。

 東京地方の発表基準の考え方は、近畿地方の発表基準の考え方とは少し違います。

 西高東低の冬型の気圧配置というのは同じですが、「10月半ばから11月30日までの期間」、「東京(千代田区)で北から西北西の風で毎秒8メートル以上」というのが発表基準です。

 つまり、現時点で東京地方の「木枯らし1号」は発表されていませんが、近畿地方と違って12月になれば、自動的に「今年、平成30年(2018年)は木枯らし1号がなかった」ということになります。

 図は、上空約5500メートルの寒気の予想です。

 北極から南下した上空の大きな寒気の塊の周辺で、少し寒気が南下している場所がいくつかあります。それが周期的に北日本を通過するのですが、大きく寒気が南下するというものではありません(図)。

図 上空約5500メートルの寒気の予想(11月25日朝)
図 上空約5500メートルの寒気の予想(11月25日朝)

 このため、残りの一週間で強い西高東低の冬型の気圧配置となって「東京地方で木枯らし1号」が吹くかどうかは微妙です。

 とはいえ、季節は着実に冬に向かっています。

図の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁資料をもとに、著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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