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シーズン9登板の防御率が今永昇太より低かった投手は、サイ・ヤング賞を受賞しているのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
今永昇太(シカゴ・カブス)May 18, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月18日、今永昇太(シカゴ・カブス)は、7イニングを投げ、ピッツバーグ・パイレーツに得点を許さなかった。

 この試合は、シーズン9登板目。防御率は、0.96から0.84に下がった。53.2イニングで自責点5だ。チームの試合数×1.0イニング以上を投げている79人中、今永の防御率は最も低い。今永に次ぐのは、防御率1.37のレンジャー・スアレス(フィラデルフィア・フィリーズ)なので、0.50以上の差がある。

 MLB.comのサラ・ラングスによると、自責点が両リーグで公式記録となった1913年以降――ナ・リーグは1912年から――シーズン最初の9先発で記録した防御率のトップ7は、2021年に防御率0.62のジェイコブ・デグローム(当時ニューヨーク・メッツ/現テキサス・レンジャーズ)、1966年に防御率0.69のホアン・マリシャル、1914年に防御率0.76のダッチ・レナード、2009年に防御率0.82のザック・グレインキー、1919年に防御率0.82のエディ・シコットに、あと2人は、今シーズンの今永と、1913年に防御率0.84のウォルター・ジョンソンだという。

 7人のうち、レナード、シコット、ジョンソンの3人は、先発9登板の間に、リリーフとしても投げている。ラングスが記載しているのは、リリーフ登板を除いた、先発9登板の防御率だ。また、グレインキーとシコットの防御率0.82は、まったく同じだが、今永とジョンソンの防御率0.84は、わずかながら今永が低い。

 今永以外の6人のシーズン防御率――リリーフ登板も含む――は、デグロームが1.08、マリシャルが2.23、レナードが0.96、グレインキーが2.16、シコットが1.82、ジョンソンは1.14だ。半数の3人、レナード、グレインキー、ジョンソンの防御率は、両リーグで最も低かった。

 一方、そのシーズンにサイ・ヤング賞を受賞したのは、グレインキーしかいない。

 ジョンソン、レナード、シコットが投げていた時代に、サイ・ヤング賞はなかった。ちなみに、シコットは、「ブラックソックス・スキャンダル」により、シューレス・ジョー・ジャクソンらとともに、永久追放となった。

 デグロームは、右前腕を痛め、シーズン後半はマウンドに上がらなかった。防御率1.08は、先発15登板の92.0イニングで記録したものだ。

 マリシャルは、防御率2.23と307.1イニングがナ・リーグ3位、25勝が2位、222奪三振は5位。いずれのトップにも、サンディ・コーファックスがいた。

 なお、新人王とサイ・ヤング賞を同じシーズンに受賞したのは、1981年のフェルナンド・バレンズエラだけだ。前年9月にリリーフとしてメジャーデビューし、このシーズンは、先発25登板で192.1イニングを投げ、防御率2.48を記録した。先発登板はリーグ最多タイ、イニングと180奪三振は最多。11完投と8完封も最も多く、防御率は7位、13勝は2位タイに位置した。9登板目を終えた時点の防御率は、0.91だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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