Yahoo!ニュース

台風15号が宮崎県に上陸 強度予報は進路予報より難しい

饒村曜気象予報士
気象衛星画像と地上天気図(8月14日21時)

 台風15号が宮崎県日向市付近に8月15日3時前に上陸しました。7月28日に台風12号が三重県に上陸したのに次ぐ、今年2個目の上陸台風です。

 しかし、台風15号が発生した8月12日の時点では、14日3時には日本の南海上で熱帯低気圧に衰えるという予報でした。

台風15号の予報

 台風15号は、8月12日0時に小笠原近海で発生しました。

 台風の発生は、天気図を描き、熱帯低気圧の中心付近の最大風速が毎秒17.2メートル以上の風が吹いていると確認をしたときの時刻です。このため、観測資料が多い3時、9時、15時、21時のいずれかであることが多いので、0時に台風発生ということは珍しいことです。

 台風の進路予報は、0時の場合は24時間先までですが、台風発生の3時間後、8月12日3時の予報では、48時間後の14日3時には日本の南海上で中心気圧1000ヘクトパスカルの熱帯低気圧に衰えるとし、72時間以降の予報は行っていません(図1)。

図1 台風15号の8月12日3時の48時間予報
図1 台風15号の8月12日3時の48時間予報

 しかし、熱帯低気圧に衰える時間は遅くなり、8月12日21時の予報では、熱帯低気圧になるのは48時間後の14日21時の東シナ海東部(中心気圧1004ヘクトパスカル)となっています(図2)。

図2 台風15号の8月12日21時の48時間予報
図2 台風15号の8月12日21時の48時間予報

 さらに、8月13日21時の予報では、熱帯低気圧に衰えるのは、15日21時の東シナ海西部です。14日21時には種子島の北約40キロという予報でした(図3)。

図3 台風15号の8月13日21時の48時間予報
図3 台風15号の8月13日21時の48時間予報

 実際には、8月14日の台風15号の位置は、宮崎市の東南東約220キロです。予想より衰えずに北上しています(図4)。

図4 台風15号の8月14日21時の48時間予報
図4 台風15号の8月14日21時の48時間予報

 このように、台風15号の台風予報は誤差が大きなものになっています。これは、台風を動かす上空の風が弱いことに加え、台風の中心気圧や最大風速の予報(強度予報)が難しいためです。

 気象庁では台風の強度予報が難しいことから、台風の進路予報は5日先まで行っていますが、台風の強度予報は、72時間先(3日先)までしか行っていません。

難しい台風の強度予報

 台風は多量の水蒸気を集めて、水蒸気が水に変わる時に放出される熱(潜熱)がエネルギー源となっていますので、海面水温が高い海域で発生・発達します。しかし、上空の風の場や乾燥域の広がりによっては、海面水温が高くても台風は発達しません。

 衰弱の程度の見積に問題があったとはいえ、海面水温が28度以上という海域を進んでいる台風15号が衰弱するという予報がでたのです。

 しかし、今年、平成30年(2018年)6月5日に計算機システムを第10世代に更新しました

 ただ、第10世代のコンピュータが導入になったからといってすぐに精度があがるものではありません。新しいコンピュータを使った技術開発などが必要で、これから続々と数値予報の改善による各種の予報の精度向上が図られることになります。

 まずは、今年6月20日から「きめ細かな降水量予測(降水短時間予報)」の改善が行われました。これまで、6時間先までだったものが15時間先までになりますので、通勤通学で家をでる前に、帰宅時間帯の細かい雨の様子がわかりますし、夕方の段階で夜間の警報級の大雨の可能性を予測できますので、明るいうちに早めの避難が可能になります。

 また、平成31年(2019年)3月までには、「中心気圧や最大風速等の予報(台風の強度予報)」の予報期間を現在の3日先から5日先まで延長する改善を行う計画があります。今年の台風シーズンには間に合いませんが、来年の台風シーズンには十分間に合います。

 降水短時間予報や台風の強度予報といった降水予測情報の改善は、大雨時の早期避難に役立てることができると期待されています。

 そして、平成31年度早期(2019年4月以降の早期)には、集中豪雨や暴風などの災害をもたらす現象の予測に、複数予測の手法をとりいれる「メソアンサンブル予報システム」の運用を開始する計画があります。

危険な台風15号

 気象衛星から見た台風15号の雲は小さいことから、台風が接近してきてもすぐに風や雨が強くなりません。台風がかなり接近してから急に雨や風が強くなります。

 また、日本上空には台風を動かす強い風が吹いていませんので、台風の動きはゆっくりで複雑です。このことは、強い雨や風は長時間にわたることを意味し、災害が発生する可能性が高いといえます。

 九州南部や九州北部地方では暴風やうねりを伴った高波に警戒してください。また、大雨による土砂災害、低地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒し、落雷や竜巻などの激しい突風に注意してください。

 台風15号は予報が難しい台風です。最新の台風情報の入手に努め、その都度警戒態勢を変える必要があります(図5)。

図5 台風の進路予報(8月15日1時の予報)
図5 台風の進路予報(8月15日1時の予報)

 台風予報は、常に最新のものをお使いください。

 台風15号に対する警戒に加え、沖縄県・先島諸島の南海上の熱帯低気圧にも注意が必要です(タイトル画像)。台風並みの風が吹かないとしても、台風並みの雨を降らせる可能性があるからです。

 

タイトル画像、図1、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事