気候を昔の国名で考える 隣の地域の天気予報のほうが当たることもある
天気予報の発表区域
気象庁の発表する天気予報は、気象特性、災害特性及び地理的特性によって各都道府県をいくつかに分けた一次細分区域ごとの発表です(図1)。大阪府のように面積の小さな府県は一次細分はありません。大阪府全体が天気予報の対象です。
これに対し、気象に関する警報や注意報は、市町村毎(東京特別区のみは区毎)の発表です。一部市町村では、横浜市を「横浜市東部」と「横浜市西部」に分割しているように、分割して設定している場合があります。
ただ、テレビ放送などでは、市町村ごとに警報や注意報を伝えようとすると、煩雑になってしまうことから、地域的にまとめることがあります。このときに使うのが、「市町村等をまとめた地域」で、災害特性や都道府県の防災関係機関等の管轄範囲などを考慮し、一次細分地域をいくつかに分割したものです。
例えば、天気予報では「兵庫県南部」を対象に発表ですが、警報や注意報は市町村毎に発表し、「市町村等をまとめた地域」は、「北播丹波」「播磨北西部」「播磨南西部」「播磨南東部」「阪神」「淡路島」の6つに分けています。
また、天気予報では「大阪府」を対象に発表ですが、警報や注意報は市町村毎に発表し、「市町村等をまとめた地域」は、「北大阪」「大阪市」「東部大阪」「泉州」「南河内」の6つに分けています
隣の天気予報のほうが当たる?
自分の住んでいる場所の天気予報より、隣の天気予報のほうが当たるのではと感じたことがありますか。
日本の天気の変化は、大雑把に言えば、西から変わってきますので、予想より早く変化すれば、東の地方の予報が、遅ければ西の地方の予想に近くなることはありえます。これに加えて、気象台では、都道府県を気象現象が似ている区域に細分し、この区域に対して天気予報を発表していることも関係します。
兵庫県南部の天気予報といっても、北は宍栗市から南は南あわじ市まで、西は赤穂市から東は尼崎市までの広い範囲全体の天気予報です。尼崎市は、兵庫県南部の中心より、隣接する大阪府の中心のほうが近いので、兵庫県南部の天気予報を使うより、大阪府の天気予報を使うほうが、より精度が良いということは十分考えられます。
昔の国名では?
昔の国は、大きな山脈や海などによって分けられていましたので、その中では気候は似ています。このため、隣の地域の天気予報を使うほうが良いのかどうかを、考える上で参考になるのが昔の国の境界です。
歴史的経緯から、昔の国が、そのまま現在の都府県になったわけではありませんので、最初から気候が違う地域が一緒になった都府県もあります。
例えば、兵庫県南部は、播磨、丹波、摂津、淡路の4国からなっており、大阪府も摂津、河内、和泉の3国からなっています。堺市に三国ヶ丘という場所がありますが、ここが3国の境界で、「堺市」の語源と言われています(図2)。
堺市は摂津・河内・和泉の3国が含まれていますが、どの国でも現在の大阪府ですので、堺市の天気予報は、大阪府の天気予報をそのまま使ってもほとんど問題がありません。
ただ、大阪府北部と兵庫県の尼崎から神戸市の一部までは摂津です。
兵庫県の尼崎から神戸市の一部は大阪府の天気予報が使えます。兵庫県南部の天気予報より使える場合も少なくありません。
このようなことが、いろいろなところにあります。あなたの住んでいる場所は、昔の国名では何になりますか。これを頭にいれて天気予報を見ると、ひと味違った見方ができると思います。
防災活動は自治体毎
私たちの生活や防災活動は都府県単位に行われていますので、天気予報は都道府県をいくつかに分けた一次細分地域毎、災害をもたらす現象に対する注意報や警報については市町村単位が基本です。
ます。兵庫県南部は、二次細分地域として、市町を「北播丹波」「播磨北西部」「播磨南西部」「播磨南東部」「阪神」「淡路島」の6つに分けて発表しています。大阪府も、市町村を「北大阪」「大阪市」「東部大阪」「泉州」「南河内」の6つに分けて発表しています。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:著者作成。