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日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)がかかっている場所は要警戒

饒村曜気象予報士
雪道と除雪車(ペイレスイメージズ/アフロ)

 日本海北部に上空の寒気を伴う低気圧がありますが、日本付近全体では、西側の気圧が高く東側の気圧が低い「西高東低の気圧配置(冬型の気圧配置)」となっています(図1)。

図1 地上天気図(平成30年(2018年)2月5日12時)
図1 地上天気図(平成30年(2018年)2月5日12時)

余寒とは思えない厳しい寒さ

 北日本の上空約5000メートルには氷点下39度以下の強い寒気が流入しています。このため、全国的に厳しい寒さとなっています。

 立春(今年は2月4日)を過ぎての寒さを「余寒」と言います。

 例年であれば、余寒見舞いとして「春とは名ばかりの寒さが続きますが、いかがお過ごしでしょうか」などと言うのでしょうが、今年は、こんな生易しい寒さではありません。

 特に厳しい寒さは2月7日までですが、その後も、厳しい寒さは続きます。

 冬型の気圧配置となると、シベリアからの寒気が南下し、日本海側の地方では大雪となりますが、現在、大雪や突風をもたらす日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が日本海にできています。

日本海寒帯気団収束帯

 冬の日本海では、強い寒気が南下してくると、日本海から水蒸気の補給をうけ、下層から変質して積雲が発達し、2000から3000メートルの高さの雲が筋状に何十本も平行にならび、これらの雲が日本海側の地方に大雪を降らせます。

 時には、平行ではなく、一定のラインをつくり、このラインが陸地にかかると、そこで大雪や突風、雷などの激しい現象をもたらすことがあります。これが、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)です。

 図2は、2月5日12時の気象衛星可視画像です。朝鮮半島北部沖から福井県にかけて日本海寒帯気団収束帯ができ、福井県では強い雪が降るなど大荒れの天気となりました。

図2 気象衛星可視画像(平成30年(2018年)2月5日12時)
図2 気象衛星可視画像(平成30年(2018年)2月5日12時)

 南下してきた強い寒気が、白頭山など朝鮮半島北部にある2700メートルを超える高い山で強制的に東西に分流させられ、それが日本海西部で再び合流するのが日本海寒帯気団収束帯です。ここでは、積雲が特に発達して積乱雲となり、小さな低気圧が発生して大雪や突風、雷やヒョウなど、激しい現象がおきています。

 日本海寒帯気団収束帯は、朝鮮半島北部沖の日本海からはじまって、山口県から山陰地方、近畿北部、北陸地方西部までの日本海側の地方のどこかに伸びます。どこに伸びるかは気圧配置によって違います。

 日本海寒帯気団収束帯の動向に注視が必要です。

太平洋側の岐阜県から名古屋なども大雪

 寒気が非常に強い時は、日本海寒帯気団収束帯で積乱雲が特に発達して背が高くなりますので、日本海側だけでなく、山脈を乗り越えて太平洋側にも雪を降らせます。

 日本海寒帯気団収束帯が山陰地方に向かった場合は、中国山地は高い山が少ないので、積乱雲が乗り越えやすく、瀬戸内海沿岸にも大雪が降ります。また、若狭湾に向かった場合は、ここも高い山がありませんので、低い場所を乗り越え、太平洋側の岐阜県の関ヶ原付近から名古屋市などに大雪をもたらします。

 強い寒気が南下中で、日本海側では大雪に警戒が必要ですが、岐阜県や愛知県等、脊梁山脈が低い太平洋側の地方でも雪に警戒が必要です。

図3 大雪警報と大雪注意報の発表状況(平成30年(2018年)2月6日3時12分現在)
図3 大雪警報と大雪注意報の発表状況(平成30年(2018年)2月6日3時12分現在)

 現在、日本海側の地方を中心に大雪警報が発表となっていますが、常に最新の気象情報の入手に努め、警戒する必要があります(図3)。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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