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「山の日」と白馬大雪渓大規模崩落

饒村曜気象予報士
北アルプス 白馬岳(ペイレスイメージズ/アフロ)

大気不安定に注意

8月11日は平成28年から「山の日」という祝日です。

「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨としていますが、山に関する特別な出来事などの明確な由来はありません。

山の日の頃は、太平洋高気圧に覆われて晴れることが多いことに加え、夏休みとお盆休が重なり、登山者が多くなっています。

現在、地上天気図では、山陰沖に上空に寒気を伴った前線のない低気圧があります(図1)。

つまり、今年の山の日は、今年は、上空に寒気が入っていますので、大気が不安定で、局地的な雷雨の可能性があります。

気象情報に注意し、安全第一で下山して欲しいと思います。

図1 地上天気図(平成29年8月11日6時)
図1 地上天気図(平成29年8月11日6時)

平成17年の事故

山の日が祝日になる前の出来事ですが、平成17年8月11日に長野県白馬村の北アルプス白馬岳では、大雪渓上部の登山道で、長さ100メートル、幅30~40メートルにわたって大規模な土砂崩落があり、2人が死亡、1人が重傷となっています。

事故当時の天気は曇りでしたが、前日は山頂で32ミリの雨があり、地盤がゆるんでいたための事故と考えられています。

地上天気図を見ると、西日本は太平洋高気圧におおわれ、気温が高い日が続き、北陸地方は、日本海から延びる停滞前線によって活発な対流雲が発生しています(図2)。

図2 平成17年8月11日の地上天気図
図2 平成17年8月11日の地上天気図

白馬岳の大雪渓は、日本三大雪渓の一つで、夏場でも雪が残り、雄大な景色で人気がありますが、大雪渓は山肌が崩れやすく、落石が多い場所でもあります。

白馬岳の大雪渓だけではありません。山には、美しくても危険を孕んでいる場所が多くあります。

山開きを「海の日」に

山開きの行事が、昔の7月1日で行われていたことから、7月1日に行われていますが、多くの年は雨の中の行事となっています。

梅雨末期で大雨の可能性が高い日に山開きとなっています。

しかし、昔の7月1日は、旧暦での話であり、今の暦なら、8月になってから山開きです(平成29年は8月22日です)。

山の日が国民の祝日となる前から、地方自治体で独自の条例などで、「山の日」を設けているとことがあります。

例えば、海のない奈良県では、海の日の7月第3月曜日が「奈良県山の日川の日」です。

これをヒントに、事故のないうちに、祝日で梅雨明け直後の可能性が高い「海の日」に山開きの行事を変更してはどうかということを考えました。

気象情報に注意

登山は安全第一です。

登山前だけでなく、登山中でも気象情報には注意し、少しでも危なくなったら引き返す勇気が必要です。

来年も、再来年も、ずーっと山は登山者を待っています。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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