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台風5号の進路は東シナ海から対馬海峡と定まったわけではない

饒村曜気象予報士
ひまわり赤外画像(平成29年8月3日6時55分)

台風5号の進路予報

 台風5号は、7月21日9時の発生から13日を過ぎようとしており、昭和61年の台風14号の記録(19日6時間)に迫る長寿の台風になりそうです。

 現在、台風5号は大きな眼が崩れかけていますが、非常に強い勢力を保ったまま、自転車並みの速度で北西進んでおり、予報円の大きさは、数日前よりは小さくなったとはいえ、まだまだ大きく、台風進路予報が難しいことを示しています(図1)。

図1 台風進路の5日予報(平成29年8月3日0時)
図1 台風進路の5日予報(平成29年8月3日0時)

過去の類似台風

 過去の台風から、今回の台風5号のように、日本の南海上をゆっくり北西進した台風を捜すと、いろいろなケースがありますが、いずれも8月の台風です(図2)。

図2 台風5号の類似台風
図2 台風5号の類似台風

 予報円の中心を結ぶと、鹿児島県・奄美大島近海からシナ海に入り、その後、対馬海峡に向かっていますが、予報円が大きく、台風の中心を結んだ線だけで考えるわけにはゆきません。

 台風5号が、予報円の北東側を進んだ場合、昭和46年(1971年)の台風23号のように、本州の南岸を東進する可能性があります。

 一方、予報円の南西側を進んだ場合、平成3年(1991年)の台風10号のように、そのまま中国大陸に達する可能性がゼロではありません。

 それだけでなく、昭和39年(1964年)の台風14号のように、一旦南に下がって一回転し、それから九州上陸という可能性まであります。

 今日の台風予報あたりから、予報円が少し小さくなり、台風の進路が絞られてくると思いますが、いずれにしても、最新の台風情報の入手に努める必要があります。

気象庁の台風予報は進路だけではない

 気象庁の台風予報は、3日先までの強度予報(中心気圧や最大風速、最大瞬間風速、暴風警戒域の予報)や、5日先までの進路予報(予想位置と予報円の大きさの予報)だけではありません。

図3 奄美地方北部が暴風に入る確率
図3 奄美地方北部が暴風に入る確率

 「暴風域に入る確率の予報(図3)」は以前から行われてきましたが、今年の出水期から「警報級の可能性の予報(図4)」が始まりました。

 暴風域に入る確率の予報(8月3日3時)では、奄美地方北部が台風5号の暴風に入る確率は、5日0時すぎが一番可能性が高く、50%を越えています。

 警報級の可能性の予報(8月3日5時)では、鹿児島県奄美地方では、3日の朝から波浪警報級の可能性が「中」であり、4日~6日までは「高」が続き、7日になって「中」になる予報です。これに対し、沖縄県本島の中南部では4日になってから波浪警報の可能性が「高」で、大雨警報の可能性はありません。

図4 鹿児島県奄美地方と沖縄県本島中南部の警報級の可能性
図4 鹿児島県奄美地方と沖縄県本島中南部の警報級の可能性

 台風情報は、どんどん充実していますが、その有効活用が課題となっています。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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